今あの時に戻ったら。⑥〜甘酸〜
お久しぶりです。
大変長らくお待たせいたしました。
ちらほらいるペスmaのファンから、このシリーズで恋愛編を所望される声が多く届いておりまして、ずっとあたためていたものを、今回ようやく解き放ちます。
恥ずかしく、悔しく、自責の念が強いこの想いを、今回成仏させていこうと思います。
では、第6回お付き合いください。
私は常日頃から妄想をしている。よく妄想するシチュエーションがタイムリープモノであるのだが、詳しいことは第一回に記載しているので参考にしていただきたい。
ルールだけおさらいしておきます。
今回のリープ先は10年前、高校1年の夏の話だ。
まず、リープする前に曲のリンクを貼っておくので、その曲を聴きながら楽しんでいただきたい。
読んでくれているあなたには、全く思い入れのない曲だと思うが、私にとっては青春の曲で、聴けばいつでもあの時に戻れる、そう言った曲なのだ。
さて、本題に戻ろう。
高校受験を終え、私は期待に胸を膨らませて公立校に入学した。
髪染めOK、ピアスOK、制服なし。
そう言った自由が校風の学校だった。
勉強は全くと言っていいほどしなかったが、新しくできた友達とバンドを組んで曲を練習したり、授業中パズドラやったり、学校終わりにサイゼリヤ行ったり、劇的に楽しい高校生活が順調に滑り出していた。
あのままでも本当に楽しかったのだが、
華の高校生活。恋愛事情がないわけない。
私にもあった。そう言ったものすごく楽しい時が。
今では恋愛が何かも忘れ去ってしまったような人間だが、確かにあったのだ。
どこの学校にもあったかと思うが、入学早々から
「誰々があいつに告白したらしい、、、」
「あそこもう付き合ってるらしい!」
そんな噂が流れていた。
高校生活はこれからまだまだあるってのに、まあお盛んですこと!!
そんなふうに当時の私は思っていた。
同じクラスで、今でも仲良くしている高身長のイケメンもそのうちの1人で、当初学年で1番可愛いと言われていた子と付き合っていたのだ。
相手はどんな子か気にはなっていたが、見に行くほどでもない、そのレベルだ。
その子の情報としては、ダンス部に入っている細身な感じ、あと名前もわかっていた。
先述したダンス部は、我が母校では花形の部活で、学校中のいけている連中がこぞって所属する部で、
1年生の中でも結構な人数がまず入部するような感じだった。
そしてある日のことだった。
イケメンと付き合っていたその子が、ダンス部の連絡事項を、私のクラスのダンス部の女の子Aに伝えにきたのだ。
クラスの仲間たちも気になっていたことをAは知っているので、Aは
「あれが〇〇だよ!!」
と謎に意気揚々と教えてくれた。
へーかわいいね!なんて会話が繰り広げられていたと思う。そこに関しては正直覚えていない。
私の目線はもうそこにはなかったから
その子の付き添いで来てた同じダンス部の女の子。イニシャルで称することすらできない可憐な子、まあ今回はXとする。急に数学みたいになったが、Xとする。
Xが一瞬にして私の心臓と脳を破壊したのである。
あの瞬間は今でも鮮明に覚えている。可愛かった。いや、可愛いとかそういう次元ではなかったかもしれない。
兎にも角にも、人生で初めて私は
"一目惚れ"
なるものを経験したのだ。
後にも先にもない。
すかさずAに問うた。
『待って、あの後ろにいる子は誰?、、』
AにXのことを教えてもらった。
名前を教えてもらった。
その瞬間から私の心のガレージの奥にしまってあった青春ダビッドソンがフルスロットルで走り始めたのだ。
それから1.2週間くらいは毎日毎日Xに話しかけたくてたまらない日々で、悶々としていたのを覚えている。
Aが仲介となって取り持ってくれたか覚えてないのだが、ある日放課後Xのいる教室の前でメアドを聞きに行った。
(もしAが仲介してくれてたら今更だが仲介手数料を支払いたい。)
当時はメアドだった。
LINEもあったが、まだメインの連絡手段はメールだった。
同じクラスの高校時代の親友Kも隣のクラスの子に恋を患っており、同じ日にメールアドレスをもらいに行ったっけ。
私の母校は1〜4組、5〜8組が渡り廊下を挟んで分かれている。Xは1組で私は6組だったので、あまり通ることない渡り廊下を歩いていた時、ものすごく緊張した。
1組はいつもHRが長いので随分待った。
しかし終わって出てきたのはXではなく、動けるお調子者デブのNだった。
「お!?なんだよなんだよー!」
と絡んできたがお前じゃあない。
とは言わず事情を話すとXを呼んできてくれた。
よくやった。
Nは空気を読んで退き、Xと初めて対面し理科室だか家庭科室だか忘れたがとにかくサブの教室の前で2人きりになった。
まじで可愛かった、、、
タジタジになりながらも自己紹介してなんとかメアドを頂戴した次第だ。
教室へ戻る道中、高揚感で初めてスキップしちゃってたかもしれない、まあとにかくものすごく楽しかったなぁあの時は。
ここまで書いているが、プロローグが長すぎる。
まだ本筋に至っていない。申し訳ない。
しかし、全てをここに記しておきたい。よろしくお願いします。
それから1ヶ月くらいか、、毎日のように連絡を取り合い、仲を深め、一緒に帰ったり、放課後学校の近くにあったグラッツェというそこでしか見たことないファミレスで一緒に勉強したりしてた。
次第に私の気持ちは抑えられなくなって、ついに告白したのだ。
忘れもしない、七夕の日、雨の日、公園の木の下で。
記念日とかって結構忘れてしまうもんだけど、この日だけはなぜか覚えているなぁ。
彦星だの織姫だのイジられたが、別に七夕を狙ったわけじゃあない。
ただ想いの天の川が氾濫してしまっただけである。(うるせえ)
公園から駅まで送る時、その日の朝に家に出没したゴキブリの話とかしてた。
何でそんなことまで覚えてんだろうなぁ。
綺麗すぎる。綺麗な滑り出しを決めすぎた。
総合的にみて高校時代の私のベストの時期は実はここでないのだが、最高の風速を記録してたのはこの時期だったかもしれない。
でも、付き合ってみたら意外と上手くいかなかった。
沢山ではないが、いろんなところに行った。
学校終わりに池袋でデートしたり、品川の水族館に行ったり、私の地元の花火大会に誘ったりした。
楽しかった思い出も沢山あるが、それ以上に、彼女にしてあげられることが山ほどあった。
付き合っていたのに、口数が少なかった。全体的に。好きすぎて、大事に思いすぎて、全然行動に移せていなかったなぁ。
品川水族館に行った日、一つすごい悔しい思いをした。
品川水族館にはイルカのショーがある。
ただ、休みの日で大変混雑しており、席を取れなかった。立ち見でも良かったが、人だかりがすごくすぎて覗くことすらできなかった。
私はそれなりに身長があるがそれでも無理だった。20cmくらい低い彼女が見れるはずもなく、渋々断念した。
悔しくて情けない。
何で行く場所を徹底的にリサーチしていかねえんだよ。ショーの時間、館内の地図、全部頭に叩き込んで行きやがれって!!!
楽しみに来てくれてたんだ。
イルカのショーが見れないと分かった時の彼女のあの気をつかうような笑み。あんな顔させるなよ...
シーフードレストランに入って、飯食ったあとお揃いのイルカのキーホルダーみたいなの買って、後日友達に自慢げに話してた時、本当は情けないと思ってたろう?馬鹿野郎が。
赤羽の高台から彼女に見せたい夕日があって誘った時もそうだ。
時期が違かったのか全然思うような夕焼けが来なくて、彼女を公園のベンチで待たせて、蚊に刺されまくってんの、何を思って見てやがったてめえは。
しかもそのあと、駅まで送らずに帰ったよな。
何やってんだクソ野郎。
ジェントルマンのなんたるかを親に習わなかった?
自分のことばかり考えやがって。
なんで、彼女のことを思えなかった?
全てを投げ出してでも一番大切なひとだったろう?
あの時のおれを、手加減なしで怒鳴りつけてやりたいよ。
これ以上に1番後悔している、いや本当にクソだったことがある。
高校一年の文化祭。
私の母校は文化祭に力が入っていて、各部活、各団体、各クラス、活気がすごいのだ。
私も初めてバンドのライブに出て、クラスの劇に出演して、舞い上がっていた。
彼女もダンス部のライブがあり、1年生ということもあり、ライブにも出るけど先輩のサポートをしたりと忙しそうにしてたし、本当に大変だったと思う。
高校3年間を駆け抜けた今のおれならわかるが、調子に乗っている一年坊やには分からねえんだろうな。
二日間ライブが終わったあと、彼女が過呼吸になったとの報せを受けた。
本当はすぐにでも駆けつけるべきだった。
べきというか当たり前だ。
でも私は人前で彼女といたりするのが当時得意ではなく、ましてや話したことのない同級生やイケてる先輩が沢山いるところまで行って、彼氏登場!をするのが嫌だったのだ。
本当に情けなくて言葉がない。
後に、ダンス部の女友達のMが私に言い放った。
"何で来なかったの?苦しそうだったよ...?"
当時この言葉を受けて、見苦しい言い訳を並べた自分を力一杯殴ってやりたい。
今でもこの瞬間を思い出すと、下を向いてしまう。
もうこの時、俺の命運は尽きていた。
圧倒的、ぐうの音も出ないほど自分のせいだった。
ふられる直前彼女の誕生日があったが、プレゼントもあげなかったと思う。
本当のクソ野郎だった。
おれはガキすぎて、自分に甘すぎて、
彼女を失望させてしまったんだ。
近かったけど、彼女は遥か遠くにいるようだった。
その後も彼女と同じクラスになったりしたけど、卒業式の日まで一言も喋らなかった。たったの一言もだ。
卒業式の日、ずっと話したかったと、一緒に写真を撮ってくれた。
あんなにクソだった俺と一緒に写真に映ってくれて、すごく嬉しかった。
この優しさと健気さが、俺の後悔をまた何十倍にも膨れ上げさせた。
しっかりと謝ったっけ、いや、しっかり謝った記憶がないからここに書き綴っているんだろうな。
その後大学に入ってX含め何回か複数人で飲む機会があったが、それっきりだ。
思い出を美化し続け、彼女に何もしてあげられなかった、情けない自分を隠し続けて今まできた。
Xと別れてから何人かとお付き合いをして沢山学んだ。
あの時の俺を叱れるくらいには少し大人になった。
でも、叱れたとしても、あの時犯した過ちは消えることはないんだ。
彼女は今も元気でいるだろうか。
大切な人はいますか。
仕事は順調ですか。
品川水族館を隅々までリサーチしてデートに臨みたい。
赤羽の高台の夕日の時期をしっかり把握しておきたい。彼女の状況をしっかり捉えておきたい。
駅まで、彼女が見えなくなるまで送りたい。
過呼吸の報せを聞いた時、何もかもを捨てて一目散に会いに行け。
誰の目も気にせず、何にも振り返らず。
大丈夫か、その一言だけでも携えて。
年に一度の彼女が生まれた日を目一杯祝ってやれ。心を込めて。
何もできてなくてごめんなさい。
ただ一つだけ、地元の花火大会に彼女を誘って、俺の自転車に2ケツで行ったことだけ、綺麗に光り輝くいい思い出だ。
毎年地元の仲間たちと場所をとってどんちゃん騒ぎをするあの花火大会。
橋から2人で見たあの花火は、いつもより綺麗に見れたっけなぁ。
あの時、君を抱きしめていたかった。
力強く抱きしめてあげよう。
かけがえのない愛しい人を。
まあ、
あの時に戻れたら、
の話だけどね。
それではまた次回。
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