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「ナチス親衛隊」と「プーチン親衛隊」

「余にはボディガードが必要だ。極く限られた人数でよい。ただし、100万人といえども我行かん、自分の兄弟に対しても向かってゆくという気概を持った男でなければならない。20人でひとつの都市を相手にするーただし絶対に余のみに忠誠を誓う人間であることー男たちは、“得体のしれない大人数”よりもずっとよい」
アドルフ・ヒトラーのこの言葉によって、ナチス親衛隊(SS)は生まれた。

これはゲリー・S・グレーバー著「ナチス親衛隊」からの抜き出しである。

占領という言葉は「他国による自国の強制的管理」の意味で使われるが、ドイツの場合はナチスが権力を握ると、それに続く時代は警察国家装置が存在し、それが社会にだんだんくいこんでいき、ナチスによるドイツ占領となっていく。当初からナチスが一番強力な支持基盤を得たのは大学であった。支持基盤がないところには味方の教授を投入した。選挙民へのアピールには300名を超える大学教授がヒトラー支持に名を連ねた。アドルフ・ヒトラーの天才的な洗脳戦略だ。

アドルフ・ヒトラーの忠実なる僕のハインリッヒ・ヒムラーは親衛隊長としてドイツ国内に「SS帝国」を築き上げていく。まずSSのえじきとなった犠牲者たちは普通のドイツ国民だった。国家の敵として目をつけられた者たちは次々に逮捕されていく。裁判などはなく強制収容所送りだ。そして戦時中のジェノサイドが始まる。背筋が凍るような殺戮がこの本(「ナチス親衛隊」)には綴られている。

ヒトラーは、ユダヤ人の世界陰謀という神話にのめりこみ、狂気の世界に入り込んでいった。これに異を唱える者はSSの手によって粛清されるから、誰一人としてヒトラーの前に立つ者はいなかったであろう。

ロシアのプーチン大統領はウクライナに存在するネオナチから国民を守るための闘いだという。その一方でウクライナ戦争の実態を誰一人プーチンには知らせぬままにいるともいう。しかしそんなことがあるんだろうか。俄かには信じられない。

2016年、プーチン大統領に直属する治安組織「国家親衛隊」は、ロシア軍を配下に置くこともできる、という大統領令に署名した。国内の治安維持を目的とする旧内務省軍などを母体に編成され、すでに陸軍を超える36〜38万人を擁していたが、そこに軍をも従属させられるとしたプーチン大統領の真意はどこにあったのだろう。

当時の大統領令発令のなかに、ウクライナ侵攻のシナリオも描かれていたとしたらこの戦争はジェノサイドまでつながるかもしれない。考えただけで身の毛がよだつ。

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