「キボウノチカラ ~オトナプリキュア'23~」 感想

長年のプリキュアファン、KLPです。

昨年末完結した、「キボウノチカラ ~オトナプリキュア'23~」。「Yes!プリキュア5/5GoGo!」「ふたりはプリキュア Splash☆Star」のメンバーの大人の姿が描かれる作品でした。

ちょっと遅くなってしまいましたが、感想を書いていきます。


大人をロックオンした作品

まず、タイトルにたがわず、完全に大人向けの作品でした。
それも、かつて5やSSを見ていた人に照準を合わせていました。6人の、あるいは2人の関係性やドラマを知っていると、思わずにやりとしてしまう場面ばかりです。
個人的には、美々野くるみが夢原のぞみとココをくっつけようと頑張っているところがおもしろかったです。

子どもでも見やすい時間帯での放送ではありましたが、内容は全く子供向けではありません。
簡単には解決しない日々の問題。両思いになってもなおままならない恋愛事情や、お酒の入った楽しい食事会。
こういう描写が見に沁みるのは大人ならではです。

それでいて、プリキュアたちは決して子どもだった頃の心を忘れたわけではないんですよね。
「もう子どもじゃないし」と言いつつも、最後はそのメンバーらしいに答えに辿り着き、それに反応したかのように子どもの姿に戻って変身する。5やSSを知っているファンなら、本編のエピソードと照らし合わせて感慨深いものがあるのではないでしょうか。

そして最後に現れた初代「ふたりはプリキュア」のメンバー。「ふたり」時代のメンバーと、チーム制に切り替わったときのメンバーが勢ぞろいする光景は圧巻で、グッと来ました。

本編ではできないストーリー

大人をロックオンしているだけあって、女児向けの本編ではできないような設定や展開、セリフもたくさんありました。

まず、プリキュアが子どもの頃に戻った上で変身すること。
本編では見た目の年齢が変わる時は大概年齢が上がる方向だったので、これは驚きました。プリキュアと言うからには、やはり戦闘シーンは出てくるはずだと思っていましたが、放送前にはそれがどういう形になるのか想像もつきませんでした。再びキュアドリームとなって戦うのぞみを目の当たりにした第2話は、感激のあまり言葉が出なかったほどです。

次に、そのプリキュアへの変身が体の負担になる、ということ。

プリキュア本編では、使命感から半ば捨て身で戦うような場面はあるものの、プリキュアとして戦うことそのものに命を捧げるような設定はなかったと思います。
ココから「死なないで」という言葉が出た時には、さすがにドキッとしました。本当に死んでしまったらどうしよう……と、最終話まで気が抜けなかったです。

メッセージ性の強さも良かったと思います。
女児向けアニメとしてのプリキュアにも様々メッセージは込められていますが、オトナプリキュアはもっと分かりやすく、かつ厳しいものでした。
今の生活を続けていると地球環境はどうなってしまうのか……という想定はよく耳にするけれど、結局のところ自分事として考えていないのではないか?と突き付けられたような気がします。
敵であるベルが、世界を壊したり支配したりするのではなく、街を守りたいと思っているところにも、ただ敵を倒しても解決するわけではない、大人向けの深さを感じました。
そして街の人々に対するブンビーさんのお説教?は心に響きました。明確に責任を問われるのも、視聴者を大人と想定してのことでしょう。
なのでラストの、ほんの少し後味の悪い描写も、人任せで終わってはいけないというメッセージとして心に残りました。

あとはやはり恋愛描写ですね。
本編は恋愛描写があっても淡くて微笑ましいレベルなので、「婚約者」とか「結婚」とか具体的な言葉が出てくると、思わず「おっ」と声を上げてしまいます。
一番恋愛描写が分かりやすかったのぞみとココでさえ、本編でははっきり告白し合っていた関係ではないだけに、今回は熱いセリフがたくさん聞けて良かったです。
ラストの結婚は、もちろん望んでいたものだったので感動しました。

ちょっとだけ不満なこと

概ね楽しみながら視聴していて、満足度の高い作品だったのですが、少しだけ不満な点もありました。

まず、SSの恋愛模様に少し戸惑いました。

確かにあの年齢なりのリアルな恋愛事情なのでしょうが、その「リアル」の出し方が何とも複雑です。
5のカップリングは本編のままロマンチックで、特にココとのぞみが障壁を乗り越え文句のないハッピーエンドを迎えたのを見ると、SSばかりがそういう「リアル」を追求されてしまうのも不公平な気がしてしまいます。

ちなみに、5メンバーでナッツとこまちの描写が少ないこともいろいろと言われているようですが、私は2人が自然に会話を交わしているのを見て、ココとのぞみのような行き違いがないまま順調に来ているものと解釈しました。
ただ、シロップとうららはまるごと1話割いてもらっていたので、物足りないと言えば物足りないです。

もう一つは、先程は「グッと来た」と書いた、初代ふたりの登場です。

確かにグッとは来るのですが、登場の仕方、扱われ方はやはり掘り下げが足りないと思います。
5やSSのメンバーが乗り越えてきた、大人としてのあれこれはなく、子どもの姿で変身したところしか出てこない。しかし長年のファンにとって伝説と化している初代だから、存在感は相当に強い……そんなふたりなので、いかにも視聴者サービスで登場し、本来の主役の活躍を多少なりとも削った感があります。
シャイニールミナスに至ってはいよいよ”ついで”という印象が強く、もったいないかったです。

ストーリーのおもしろさよりサービスのために出したように見えてしまうと、初代に対しても失礼です。伝説と化しているからこそ、安易に登場してほしくないのです。

まとめ

5年分のプリキュアが集結して全12話なので、「こうしてほしい」を言い出せばもっと出てくると思います。

ただ、公式サイドはこの作品を、ありえるかもしれない未来の一つとして制作したそうなので、何か不満があればいっそ真に受けないという手もあるでしょう。

なんにしても、かつて応援していたキャラクターたちが素敵な大人になった姿を見られて、私は嬉しいです。
プリキュア作品の全てが、同じように続編を作れるわけではないでしょうが、またこんな企画があったらいいなと思いました。



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