映画『皮膚を売った男』公開記念オンライントークイベント
『皮膚を売った男』11/12(金)公開
第93回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート!
恋人に会うため、自分自身がアート作品となった男の数奇な運命…
公開を記念し11/9(火)に銀座 蔦屋書店にてトークイベントが開催されました。
登壇者:現代美術作家・加賀美健、アーティスト・平山昌尚、実業家・遠山正道、MC・奥浜レイラ
(イベントレポート)
―本作の感想について。(予告編鑑賞後)
平山昌尚(以下平山)「意外にギリギリまでトレーラーで見せていますよね。でも核心は隠している。」
加賀美健(以下加賀美)「予告編よりもポスターが核心をついていますね。迫っていますよね。」
遠山正道(以下遠山)「非常に面白い。見ている間、主人公がダメな奴だなと思っていましたが、最後に行くにつれて印象も変わりますよね。アート側の視点から見ると、今日本はアートバブルでマーケットが盛り上がっていますが、コロナの前は芸術祭がブームだった。同じアートでもマーケットは売ることで価値を付ける、という違いがある。この主人公の背中はインスタレーションのようなものなのにビジネスにも結び付いてしまう、表現と仕組みが結びつく戦略。そういう意味でも面白かった。」
―本編内に登場する主人公サムの背中にタトゥーを彫るアーティスト・ジェフリーの手法について
遠山「村上隆さんのようにグローバルサーキットで勝ち抜いていくことと、美術館に展示される道というのは同じことですが、日本ではなかなかそこまでリーチしていかない。」
加賀美「日本の流行は二極化していて、プチマネーゲーム的なにおいがします。ジェフリーのモデルとなったヴィム・デルボアのインタビューを読んだのですが、監督とやりたいことが合致している気がした。この映画はアート業界へのアンチテーゼですよね。ヴィムが言っていたのは、排泄物をつくる装置が自分の代表作だがこれじゃ売ることができない。今は家に飾る画をコレクターが買って鑑賞することが主流だと。その通りでペインティングのほうが売れる。コンセプチュアルなものが売れたほうが面白いと思うけど、買う側もお金を出すので、正にこの作品の背中のようにコンセプチュアルなものだと手元に残らないこともある。考え方にお金を出すような、買う側も頭を使うような多様性が出てくるといいですよね。本来なら、オークションでピカソのような本物の絵が登場した時に盛り上がるべきなのに、値段が
高騰した時にしか盛り上がらない現実がある。それも面白いけど。」
―ヴィム・デルボアについて(※映画のもとになった背中にアートを彫った作品「Tim」作者)
加賀美「シニカルな人だと思います。彼のインタビューで、アートは普遍的であるべきだと言っていた。作品が時代にコミットしすぎると後世に残っていかないのでそういった作品は作らないと。時代を見て、コンセプトを考えることも大切だと思いますが考え方が今の教育方針と逆ですよね。」
―主人公サムが求めた”自由”というキーワードについて
平山「サムは確かに自由を手に入れたけど、その自由と同等の制限をされていると思います。」
加賀美「サムは芸能人になっちゃったみたいですよね。お金を手に入れたけど、『あなたはアート作品だから』と言われて、美術館に見学に来た子供と写真を撮ろうとしたら『撮っちゃダメ』って言われていたし。自由になったのかな?僕は逆に不自由になっちゃったんだと思ってた。」
―本作のように、自身の作品をアイデアとして映画を作りたいと言われたら?
遠山「現実では絶対に出来ない、映画でしか出来ないところが面白いですよね。」
平山「一作品何十億円もする絵画をいとも簡単に殴って壊しちゃったり出来るのも映画でしかできないですよね(笑)」
加賀美は「それが面白いですよね。ひやひやする感じが。面白いから僕は全然作品壊されてもいいと思います。」
―印象に残ったシーン・共感したシーンについて
加賀美「全体的にシニカルな映画でいいですよね。アートを全く知らない人が見たらどう思うのか気になりました。」
遠山「アートの道を目指している人はどう思うんだろうね。結構この作品はアート業界の嫌な部分を描いているから、アート業界を嫌だなと思うのか、逆に一獲千金を狙いに行くのかな。」
平山「アート業界を目指している若い人達の親御さんが『あなた背中売ってきなさい!』とかなるかもしれませんね。」
―今回のトークについて
平山「忘れないように箇条書きにメモしてきて良かったです。楽しかったです。」
加賀美「結構前に作品を観たので忘れてしまった部分も多かったので、もう一回みようと思いました。アート界のタブーに切り込んでいくような暴露映画を観てみたいですね。」
遠山「映画の映像もきれいです。アート好きもそうではない方も楽しめる作品です。最後びっくりしますよ。」
それぞれ思い思いの感想を語りイベントは終了しまた。
『皮膚を売った男』
STORY
主人公サムは、当局の監視下にあり国外へ出られなくなってしまう。海外で離れ離れになってしまった恋人に会うためなんとかして出国したいと考えていた彼は偶然出会った芸術家からある提案を受ける。それは、背中にタトゥーをし、彼自身が”アート作品”となることだった…。芸術品となれば大金を得ることができ、展覧会の度に海外にも行ける。恋人に会うためオファーを受けたサムだったが、次第に精神的に追い詰められてゆく。高額で取引されるサムを待ち受ける運命とは…。
第93回アカデミー賞国際長編映画賞ノミネート!
第77回ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門 男優賞受賞
第26回リュミエール賞合作賞受賞 / 第31回ストックホルム国際映画祭脚本賞受賞
第33回東京国際映画祭正式出品
監督:カウテール・ベン・ハニア(「Beauty and the Dogs(Aala Kaf Ifrit)」(17)第91回アカデミー賞国際長編映画賞チュニジア代表)
キャスト:ヤヤ・マヘイニ、ディア・リアン、ケーン・デ・ボーウ、モニカ・ベルッチ、ヴィム・デルボア
2020年/104分/チュニジア・フランス・ベルギー・スウェーデン・ドイツ・カタール・サウジアラビア/アラビア語、英語、フランス語
The Man Who Sold His Skin(英題) L'Homme Qui Avait Vendu Sa Peau(仏題) hifu-movie.com
第77回ヴェネツィア国際映画祭のオリゾンティ部門でプレミア上映が行われ、主演のヤヤ・マヘイニが男優賞を受賞。他にも第26回リュミエール賞合作賞の受賞や第31回ストックホルム国際映画祭脚本賞の受賞など、賞レースを席巻した話題作。日本でも東京国際映画祭で上映されるや「大傑作」「監督は天才か?」「最大級の驚き」「予想もつかない結末」と評判を呼び、多くの劇場公開を望む声が挙がった。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では、92%フレッシュという高評価を得ている。(6月30日時点)
本作の演技が高く評価されたヤヤ・マヘイニが出演する他、『007 スペクター』『オン・ザ・ミルキー・ロード』のモニカ・ベルッチ、『Uボート:235 潜水艦強奪作戦』のケーン・デ・ボーウなど、豪華キャストが脇を固める。監督を務めるのは、過去にも「Beauty and the Dogs」(17)でカンヌ国際映画祭「ある視点」音響賞を受賞し、アカデミー国際長編映画賞のチュニジア代表に選ばれたことがある実力派、カウテール・ベン・ハニア。
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