超法規的措置と定言命法
政治家や行政が法を無視した越権行為をする背景には、定言命法がある。 彼らは、仮言命法の上位に定言命法が存在していて、仮言命法の効力は定言命法によってキャンセルできると考える。 これが、超法規的措置が横行する理由、キャンセル・カルチャーが跋扈する理由である。
キャンセル・カルチャーは何をキャンセルするのか? キャンセル・カルチャーがキャンセルするのは、仮言命法の効力である。 左翼は、地球上の仮言命法を無効化し、全ての人々は定言命法に従うべきだと思っている。 そして、自分たちには、人々に対して定言命法の命令を発する資格があると思っている。
主権国家による国家主権の行使の本質は、自国民を外国人よりも優先することである。 従って、外国人差別は、主権国家の権利である。 「外国人を差別するな!」は、定言命法による国家主権の侵害である。 主権国家は、定言命法の圧力に屈せず、仮言命法に基づいて、正しく外国人を差別するべきである。
国家主権とはなにか? 国家主権とは、条約によって明示的にか、あるいは他の国家群によって暗黙的に認定・承認されるものである。つまり、国家主権とは、仮言命法である。 左翼は、国家主権はキャンセルできると考えている。共産主義社会を実現するためには、国家主権をキャンセルするべきだと考える。
左翼が叫ぶ、「外国人を差別するな!」は、来るべき共産主義社会の実現に向けて、国家主権をキャンセルしていくための、闘争の方法なのである。 左翼は、国家主権をキャンセルすることによって主権国家を解体、消滅させたいのだ。 「差別反対!」はその為に左翼が使用している手段である。
明らかなのは、20世紀からいまだに続いている、共産主義者が強制収容や大虐殺を引き起こしている根本にあるのは、定言命法の存在なのだ。 これには、カント先生もびっくりするだろう。 「定言命法が存在する」という主張は「神は存在する」と言っているのと等価である。 残虐な神は死んでいないのだ。
定言命法の存在は、証明できない。それは、神の存在が証明できないのと同じなのである。 定言命法によって世界を支配しようとする左翼が、理想に掲げる共産主義社会は、神による専制政治であり、王権神授説の変異体なのである。
(了)