「木の下に埋めてもらってもかまわないよ!」は愛の告白【キルミー 元ネタ】
『木の下に埋めてもらってもかまわないよ!』って何?
これはキルミーベイベーで最も有名なギャクの1つです。
正式には『絶対〇〇するよ!しなかったら木の下に埋めても~』というセリフです。
ギャグとしての完成度高い一方、やすなとソーニャちゃんの隠されたメッセージが込められています。
【本記事の内容】
・『木の下に埋めてもらってもかまわないよ!』の元ネタ
・どこが愛の告白なのか
今回はこの至高のギャグの元ネタと込められた愛の告白について解説していきます。
『木の下に~』の基礎知識
登場は「キルミーベイベー 5巻」「41~42ページ」
まず、どのような会話なのかを見てみましょう。
『見たら本当に絶対感動するよ!』
『もし感動しなかったら木の下に埋めてもらっても構わないよ』
⇩
「ババーン(木の下にやすなが埋まられた1枚絵)」
ものすごいスピード感です
インパクト・説得力も優れており、その構図には美しささえ感じてしまいます。
『木の下に~』は実はコラ画像
実はこの2コマ落ち、あまり知られていませんがコラ画像なのです。
この2コマは本来は離れています。
1コマ目:41P 右列3コマ目『木の下に~』
2コマ目:42P 左列4コマ目「ババーン」
本来の流れ
実際の話の流れはこちら
①「桜の木で感動してる」と煽るやすな
②『は?』と塩対応のソーニャちゃん
③色々あって、桜の花びらがキレイに落ちてくる
④ソーニャちゃんはそれを穏やかに眺める
⑤「あっ(ソーニャちゃん)感動してる!勝った」とやすなが指さす
⑥埋められる
しっかりと前振りがあったうえで愚かな埋葬をされるわけです。
2コマとしても面白い上に、長尺の話としても成立しており
このギャグの完成度の高さがうかがえます。
木の下に埋める=愛の告白 である
結論から言いますと
「桜の木の下に埋める価値があるほど、お前は美しい」
とメッセージなのです。
「また、深読みおじさんのアレが始まったよ…」と思う方もいらっしゃるでしょうが
・桜の樹の下という場所
・埋葬されても生きてるやすな
という二つの事実がこの説を裏付けているのです。
理由① 桜の樹の下
「桜の木の下には死体が埋まっている」
こんな話を聞いたことある方もいるかと思います。
元ネタは明治時代の小説家・梶井基次郎の
短編小説『櫻の樹の下には』の冒頭の文章です。
以下の一文で始まります。
「桜の樹の下には屍体が埋まっている。」
要約すると、3行に収まります。
・「桜が美しい」には理由がある、と不安すら感じる主人公
・死体という醜いものが樹の下に埋まっていると想像する
・結果、不安から解放される
非常に短く、面白い短編小説で、青空文庫で無料で読むことができます。
是非、「青空文庫 櫻の樹の下」で検索してみてください。
桜の木と死体の伝承
また、「桜の木」と「死体」を結び付けた伝承が別に存在します。
それは染め物。「桜染め」というピンク色に染める手法の1つなのですが…
桜の花びらはもともとは白い
⇩
どうしてピンク色なんだろう?
⇩
もしかして、木の下に死体が埋まっている…?
⇩
死体から血を吸ったから桜の花はピンク色なのに違いない!
という都市伝説が存在します。
「桜染め」は花びらではなく、枝が含むピンクの色素を使って染色をする手法
であるため、中々の説得力のある俗説となっています。
桜と美しさは表裏一体
「桜染め」『櫻の樹の下には』など
人間は美しいものに恐怖を感じ、理由付けをしたくなるのでしょう。
美しさには何か理由がある、たとえば死体のような対極、醜い存在があるのではないかと想像力を働かせてしまうのも少し分かる気がします。
つまり、やすなの「面白くなかったら~」の提案は
「ソーニャちゃんから見て私は、桜の木の下に埋める価値(美しさ)があるかジャッジしてほしい」
というメッセージなのです。これに対し
「桜の木の下に埋める価値があるほど、お前は美しい」
とソーニャちゃんはレスを返したわけです。
まさに2人だけにしか分からない、2人だけのコミュニケーションが繰り広げられていたといたわけなのです。
理由② 埋葬しても、やすなが生きている
もう1つの根拠は、埋められたのにやすなが生きている点です。
墓友という言葉があります。
これは、死んだ後に共同墓地など同じ墓に入ることを前提とした交友関係のことを指します。
ソーニャちゃん本人は否定していますが、大変口下手な女の子です。
同時に殺し屋でもあります。いつ死んでも、墓送りになってもおかしくありません。
そんな折に出会った友人に対して、
もし死んだら一緒に墓に入ってほしい、そんなフレンドシップになりたい
と思ったとは考えられないでしょうか。
ソーニャちゃんは墓友を求めていた
とすれば、それは陳腐な恋愛感情や百合だのレズだの外野が騒ぐ無粋なものではなく、純粋で単純な友人関係の延長でもない複雑な感情があったに違いありません。
その証拠に、ソーニャちゃんはやすなの「左半身だけ」を木の下に埋めています。
つまりこれは
「1つの墓を半分にする。2人で入る」
というメッセージだったのです!
全部埋まってたらギャグ描写として成り立たないなどの理由もあるかもしれませんが、細かいところに意味を持たせてくるあたりキルミーベイベーは考察のしがいのあるコンテンツといえます。
まとめ
「絶対面白いから!」『さて、穴でも掘るかな』
と一見ギャグに見えるやりとりの中に意味をもたせるとは本当に深いマンガですね。
原作/作者でありますカズホ氏の健康を勝手ながらお祈りさせていただき、終わりとさせていただきます。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございました。