【コントラクトブリッジ】フォーシングパス成立の条件は?【2023前期日本リーグ1部4日目③】
スプラ3のバンカラマッチの昇格戦でボコボコに負け続けて悲しいKKTです。
日本リーグ最終日のラストラウンドは優勝がかかった大事なラウンドになりました。開始前のVP状況は下。
我々は159.98VPの1位で、対戦相手は3位チーム。2位チームは6位チームとの対戦。そこそこ勝てればチャンスが有りそうです。最終戦のオポーネントはオープン代表クラスのレギュラーペア。
R14 vs たかやま
最初のボードから相手の2Mxで緊張する開幕になりました。
#1 both non vul 3rd
自分の1NTオープンから、ウエストがメジャー1スーターでオーバーコールしてウエストの2Sxになりました。パートナーのオープニングリードはH7。
T1:H7-2-K-4
T2:HA-T-5-8
T3:H6-S2-9-J
T4:CJ-2-3-A
リードは3rd/low、シグナルはUDCAです。ディフェンスの方針はどうしますか?
テーブルで考えたのは、
・スペードかダイヤどちらかを出したい。
・パートナーのC2は偶数枚なので、ディクレアラーのシェイプは6241か6223のどちらかが本命。ディクレアラーが5枚スペードだったらS+mでオーバーコールするか、パスしそう。ディクレアラーが7枚スペードならパートナーはPENせずに4Hへ向かうだろう。
・スペード当たりはパートナーがAJxとかKJxとか持っているとき。ダミーのスペードを無くしてディクレアラーの手に貼りつかせる狙い。ただ、ディクレアラーのスペードが良い内容の場合はスペードを出すとフィネスされてスペードのウィナーが減るかもしれない。また自分の手にダイヤが多すぎるので、スペード出したとしてもいずれスローインされてダイヤも出すことになりそう。
・ダイヤが当たりなのはパートナーにDAもしくはDQがあるとき。スペードが振り込みのときもダイヤが当たり。ダイヤを出しておけばエグジットカードを作れるので、その後失敗することは少なくなる。
結局はDJシフトを選択。今ダイヤ出さなくてもいずれスローインされてダイヤ出すことになりそうだし、ダイヤを出しておけば二回目のスローインにはかかりにくいので。
実際のハンドと展開は、
T1:H7-2-K-4
T2:HA-T-5-8
T3:H6-S2-9-J
T4:CJ-2-3-A
T5:DJ-Q-4-5
T6:DA-8-6-7
T7:D2-HQ-9-T
T8:ST-6-4-5
T9:DK
ダイヤシフトが振り込みになって3ダウンで500取り。1トリック損したものの500取れて一安心という感じでした。
後から考えるとスペードシフトが良かったです。パートナーは3枚スペード、しかもこちらのハートフィットしてそうな状況でペナルティダブルをしたから、AJxとかKJxのような持ち方をしてそうです。スペードを出して損することはほぼ無さそうです。
ただ、ダブルダミーで確認したらCA勝った時点で何出しても4ダウンしないです。NSのエグジットカードを削り過ぎてしまったのでいずれサウスにダイヤでスローインが成立します。4ダウンさせるにはHK、HAの後にスペードシフトが必要なようです。
その次のハンド
自分はサウスでビッドはイーストから、
(2S)-3C-(3S)-3NT///
オープニングリードはスペードでSQ勝ち。トリックを数えると2101。クラブ負けに行くと5個取れるけど1個足りない。DKを出してそれが勝てば9個目、DA取られてスペードをクリアされたとしてもクラブフィネスが効けばメイクという方針でプレーすることにしました。
即DA上がられてスペードクリアされてクラブフィネス抜けて2ダウン。仕方ないですが、こういうの作れないのは流れ悪いなと感じました。裏も同じ展開だったのでプッシュ。
続いて、
テンポを保つプレー
あなたはサウス
#3 they vul 1st
AK432
6
542
J853
2S-(P)-4S///
2S=S+m
タータン2Sオープンして自分の4Sになりました。左のオープニングリードはCK。
Q976
A9832
Q
A76
AK432
6
542
J853
T1:CK-6-2-3
T2:CQ-A-9-5
プレーの方針はどうしますか?
テーブルで考えたのは、
・5102で8個。あと2個増やしたい。
・ダイヤを2回ラフするのが簡単だが、ダイヤを出すとオポーネントにクラブを切られてしまうのが痛い。スペード2巡集めてからダイヤラフするのは、スペード22なら上手くいくが、31だとダイヤ出したときに集められて失敗する。
・ハートエスタブリッシュを狙うプランは、ハート43の5個目とクラブ4巡目ラフで2個増えるのでダイヤラフに頼らなくてもメイクしうる。途中スペード2巡取って22だったらダイヤラフで10個のプランに戻ることもできる。
ハートエスタブリッシュのプランが、ハート43orスペード22で良い感じなのでハートエスタブリッシュを狙うことにした。
ハンドは、
2S-(P)-4S///
2S=S+m
T1:CK-6-2-3
T2:CQ-A-9-5
T3:HA-T-6-7
T4:H2-J-S2-4
T5:SA-5-6-J
T6:S3-8-Q-D8
T7:H3-Q-S4-5
T8:CJ-4-7-D3
T9:D2-K-Q-6
T10:ST-7-D7-K
スペード22はダメだったが、ハート43で良かった。と思っていたら、T7でダミーエントリーが足りないことに気付きました。時すでに遅しで1ダウン。
できそうな4Sを落としたのでショックでしたが、ボード終わった後パートナーは「気にしないで次行きましょう」と声かけてくれました。気遣いをしてくれるのが有難いです。
冷静に考えると、すぐダイヤ負けに行っておくのが良かったです。T3でHAの代わりにダイヤ出すと、左に勝たれてクラブラフを決められたとしてもまだ3つしか負けてなくて、こちらに手番が来たらスペード2巡集めて、切り札31以内で長い方がクラブ切ってればメイクです。
ただ、実際の配置では31ブレークの1枚側に切られるのでダイヤ2回ラフがハートのブレーク次第になってしまいます。なのでスペードを一巡取ってからDQ出すのがもっと良いプレーかもしれません。
これは取られたと思ってたのですが、裏はイーストが1NTで買いきってジャストメイクしたので1IMP取り。助かりました。
次はフォーシングパスについて行き違いがあったハンド
自分はサウス。パートナーの1NTオープンからビッドは下のように展開して6Hxになりました。
1NT-(P)-4D-(4S);
5H-(5S)-P-(P);
6H-(X)///
パートナーが良い手なら4Hのチャンスが有って、バルはメイクしたときにリターンが大きいので少し頑張ってテキサストランスファー。相手に介入されにくいように台を上げる狙いもありました。
そしたら相手の5Sになって自分の番。テーブルではほぼ悩まずにパス。相手の5Sが落ちる自信は無くて、6Hはもちろんダメそうなので。そしたらパートナーは6Hをビッドして、イーストにダブルされて3ダウンで800取られ。パートナーは「5Sへのパスってフォーシングじゃないの?あとテキサストランスファーはオーバービッドですよ。」とコメント。
冷静になると4Dはたしかにオーバービッドでした。2Dでハート示して、あとは3Hまで競り合う程度に抑えるのが冷静なジャッジ。ただ個人的にはフォーシングパスは成立せずで、ノースは最後5Sにパスが良いと考えてます。テキサストランスファーはしっかりとHCPを持つFGだけでなく、シェイプでビッドした手が有り得ます。シェイプでビッドした手は相手に競られたときにノンフォーシングのパスを使いたいからです。もしテキサストランスファーがFGのハイカードバリューを保証する取り決めなら、フォーシングパスになると考えてます。例えば1S-4DとSPLすると10-12程度の点数も示すので、SPLの後はフォーシングパスが良さそうです。
有識者にも意見を聞いてみました。
「私はフォーシングパス成立しないと思います。テキサストランスファーには弱くて長い手が有り得るから、ギブアップのパスをしたいので。ただフォーシングパスにしたい気持ちも分かります。テキサストランスファーからの4NTでRKCBしたかった手も有り得るので。」
「私なら多分テキサスします。弱い手かもだからFPにはならない。」
「私はテキサスします。弱長があるのでフォーシングパスにはならない。6Cはメイク所詮EWハンドですね。6SもCACラフしかダウンしないです。」
「6ハートは無いのでは。5ハートで十分主張したかな。ラフィングバリューないし、トリックないし、ミニマムだし、そんなに良い手ではないのでは」
「このハンドでテキサスは弱すぎます。フォーシングパスについては取り決め次第。」
「テキサスの強さ次第かと。私のパートナーのテキサスはしっかりしてると思うんで、フォーシングパスとして扱います。」
「テキサスはオーバービッドですが、フォーシングパスは成立しません。また、テキサスからRKCBしようとしていた手があるからフォーシングパスが成立するは論理として破綻しています。さらに言えば、特に今回のハンドではNに3枚スペードがあり5Sまで競り合われていることから、通常Sはスペードが短いことが想定され、その場合RKCBをしたいような強いハンドは一旦2Dとビッドしてから3Sとスプリンターするはずです。よってこのハンドでSがRKCBを予定していたハンドを持っている可能性は非常に低いです。」
「テキサスがHCPを保証するわけではないので、5SはNF派。NFと通じるのであれば、プレイもディフェンスもできないノースはパスしそう。」
「テキサスは弱ながの可能性があると思います。バル関係を加味してfpにしたいのが分かりますが、一般的にはfpがないと思います。例えば点数保証するsplならオンの方が良い。」
「私はSouthのハンドで4Dは考えませんが、もしこんなハンドでもありえるというパートナーシップなら、5Sへのパスがフォーシングになるという議論は起きないはずですから、パートナーシップの問題だと思います。ちなみに私がSouthのハンドを持っていたら、2Dでトランスファーして2Hでまわってきたらパスします。もし何らかの介入があったら3Hまで付き合います。従って4Dでトランスファーしたあとの5Sパスはフォーシングと思われてもしょうがないと思います。パートナーがHAKQ持っていたのはアンラッキーと言えますが、パートナーの視点からするとHに1HCPしかないのに4Hへトランスファーしたんだからサイドスーツにバリューを持っていると思われても仕方がないと思います。とは言っても6Hはオーバービッドでしょうが、5Sダブルもメイクしますからリカバリー不能でしたね。」
テキサスはオーバービッドという意見が多かったです。もう少しいいハンドを期待されても仕方ないようです。ただ、それでもウイーク3Hのようなハンドがあり得るのでパスはノンフォーシングの方が使いやすいです。ハイカードでFGバリューあるときにフォーシングパスがオン。基本的にはハイカードを保証するFGレイズ(ジャコ2、インバーテッドマイナー、SPL)の後と、FGを保証する展開の後(2/1、2Cオープン後)にフォーシングパスをオンとするのが使いやすいと考えます。
あとは高い台の特殊な競り合いなどで、自分たちにハイカードが過半数あると確信できるとき。
例えば、下のハンドのような状況。
自分たちだけバルの4番手。(4S)-X-(6S)-?で自分の出番。パートナーのダブルはオプショナル。良いテイクアウトか、ハイカードの多い手。7Hか7mが近そうです。パートナーに期待するカードはHA、HK、CA、あとは役に立つQとJが何枚かあれば7が良いコントラクトです。期待値的には十分ですが、パートナーの手が悪い時にはキーカードが足りなかったり、バリュー不足で切り札のバッドブレークに対応できなくて落ちるかもしれません。
ここでフォーシングパスが活きます。フォーシングパスしてパートナーのダブルはスラムに向かないミニマム、6NTは良い手でグランドスラムチョイス、7Xは5枚以上のNATとすれば、良いグランドを探せます。
でも実際テーブルではダブルしました。取り決めていない展開でパスがフォーシングになる自信が無かったので。
6SxになってパートナーはHAリード。ダミーにHK見えたので7Hルーズが無くなって一安心。HAラフ、ダイヤラフ、HKでクラブ捨て、クロスラフで6Sxが7メイク。まさか作られるとは。7Hxでサクリファイスするのがベストでした。すごいハンドです。
試合に話しを戻します。ここまでの試合を振り返ると、開幕2Sダブルのディフェンスして、ワンフィネスの3NT落ちて、できてる4S落として、6Hダブルで800取られ。開始5ボード激重な展開で疲労感がすごかったです。タフなオポーネントは積極的にプレッシャーをかけてくるから疲れがち。
次は裏の得点を紹介します。
まずは自分たちのテーブルから。自分はサウスでイーストの1Dオープンから。
(1D)-X-(1H)-P;
(1NT)-X-(2H)-2S;
(3H)-4C///
で自分の4Cになってワンダウンでした。1NTに欲張りダブルしましたが、1NTxスタンドしなさそうなので、早めにクラブ示すほうが建設的だったかもしれません。
裏のビッド。
1D-X-1H-P;
1NT-P-2H-P;
P-3H-P-3S;
P-3NT-P-P;
X!-P!!-P-P
裏のサウスは1NTを渋くパスして、2Hで回ってきたところに3Hをビッド。たしかに、1NTがスタンドしてくれれば嬉しいし、2Hが回ってきたら3NTトライでハートストッパーを探しに行くのは理解できます。
でもこういった創造力豊かなビッドはパートナーに伝わりにくいデメリットがあります。実際裏のテーブルのNWスクリーンではオポーネントのNがWに対して「このビッドはどんな手ですか?」と聞いていたらしいです。
その後ノースの3Sをハートのハーフストッパー(Qx)と考えたサウスが3NTをビッド。イーストはそれをダブル。そしてなんとサウスはそれを受けました。パートナーの3Sを信頼したということですが、曖昧なビッド展開からハーフストッパーを信じるのはハートが強いです。
HQリードから3NTx4ダウンは800取り。空中戦を制して13IMP獲得。
次も裏の得点
まずは自分のテーブルから。自分はサウスにいて、イーストのストロング2DオープンからEWのフリーランで
2D-2H;
2NT-3H;
4S-P
2D=①ダイヤのストロング②23-24,BAL
2H=waiting
2NT=23-24,BAL
3H=トランスファー
4S=スーパーアクセプト
ウエストは4Sに長考してパス。「安全だという保証は無いから。動くなら5Hでショートを示そうと思ってました。」とコメントしていました。たしかに配置が悪ければマイナー2つとハート1つ負けて5Sダウンとか、6Sにオーバーランして1ダウンとかも有りそうです。
裏はストロング2CからEWのフリーランで、
2C-2D;
2NT-3H;
3S-3NT;
4C-4D;
4NT-5C;
5D-6S///
という展開で6S。試合後の食事のときにEWにビッドについて聞いてみると、E「スーパーアクセプトしなくても2DでFGかかってるから、一旦3Sで様子を見ることにしました」W「3NTでアドキューを待ったら実際にアドキューが来たのでキュービッドして良い感じに6Sいけました」とコメントしてました。スペースを残して柔軟にビッドすることで、お互いに僅かな余力を伝え合うことが出来て6Sに到達してました。裏のナイスビッド。
5枚の切り札で相手のスラムをダブルするかどうか
あなたはサウス
#12 they vul 4th
JT764
K6
Q842
K3
ビッドは一番手のウエストの1HオープンからEWのフリーランで、
1H-1S;
2C-2D;
2H-2S;
3S-3NT;
4C-4D;
4H-4NT;
5S-5NT;
6S-P-P-?
2S=6枚スペード保証
3S=2枚スペード
3NT=シリアススラムトライ
4NT=RKCB
5NT=K ask
6S=K無し
まるでプレシジョンのリレーのような長いビッドから相手の6Sが流れてきました。アクションはどうしますか?
テーブルで考えたのは、
・6Sをパスしておけば堅いプラスだが、ダブルで勝負する選択も有る。
・6Sは切り札2つ取れそうなのでほぼほぼダウン。また、サイドスーツのHK、DQ、CKもどれか取れるかもしれない。
・相手はシリアス3NTやKアスクをしたので、バリューもしくはトリックソースが有りそうに見える。ダブルしたら6NTに逃げられて、スペード以外でトリックを取られてメイクされるかも。
いろいろ迷って結局はパス。6Sxは2ダウンくらいしそうだが、相手は7トライまでして余力有りそうなので、6NTに逃げられるリスクを負いたくなかった。あとは、ひとつ前のラウンドで裏が6Sに5枚スペードでダブルしたら6NTに逃げられて作られたのを思い出した。流れは信じないようにしているが、あまりに直前過ぎて6NTをビッドされるのが怖い。
実際のハンドは、
1H-1S;
2C-2D;
2H-2S;
3S-3NT;
4C-4D;
4H-4NT;
5S-5NT;
6S-P-P-P
H6リードからS2D1勝って2ダウン。ダミーのWは「普段の行いが悪いんじゃないですか?」とコメントしていました。たしかに行いが良ければ7メイクだったかもしれません。66が2人もいる珍しいハンドでした。
後から考えてみると、ダブルで勝負するのは有りでした。6Sxでスタンドすれば確実に落ちますし、シリアス3NTと5NTのKアスクは余力を示すとはいえ、自分の手にはHK、DQ、CKと6NTのディフェンスでも役立つカードがあるので、コンバートされた6NTを落とすチャンスも有ります。ただ、6Sにリードする人がダブルするのは切り札のバッドブレークが透けてしまうので、より6NTにコンバートされやすいからそっとパスして堅くプラスを取るのも冷静な判断です。
R14は前半で作った借金を、後半頑張って返したけど返し切れなかったという感じで終わりました。しかし試合のスコアを受け取ると13.52VPで勝ってました。これはもしかして、と思って2位チームのスコアを見に行くと15.01VP。R13終了時点で2VP強の差があったので1VP差で逃げ切ってギリギリの優勝でした。日本リーグはいつか勝ちたい試合の一つだったので、今回のチャンスを掴み取ることができて嬉しいです。
試合の前半で失敗しても大荒れせず冷静なプレーできたのが良かったです。失敗すると取り返したい気持ちが前に出て、自滅で傷を深くするっていうのがありがちなパターンだったのですが、今回はぐっとこらえることができました。日本リーグは長い試合だから、自分の成長を実感しやすいのも良いところです。来季も良いブリッジできるように頑張ります。