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宝塚記念と人生に大事なこと

「余裕」

あなたは、この言葉にどんな印象を持つだろうか。

必要分以上に余りがあること
限度いっぱいまでには余りがあること(デジタル大辞泉より)

前者を見ると、なんだか裕福なように感じられる。
一方、後者の場合はなんだか不十分なような、見方によってはネガティブなイメージを持つこともできる。

また、ゆったりと落ち着いている、という上記とは少し異なる意味合いも持ち合わせている。


人生の武器になる

人生にはいろいろな節目があり、試験勉強や就職活動(転職)、結婚(恋愛)というものは、これを読んでいるあなたも、きっと何かしらの経験があるだろう。

僕は今でこそ自分の納得できる職に就くことができ、幸いなことに結婚相手にも恵まれている。しかし、ここに至るまでには、第1志望の大学に2度落ち、就職活動では社長が私利私欲で経営しているような酷い会社のために、貴重な新卒カードを消費し、これまで好きになった女性には裏切られたり諦められたりこっぴどく振られたりもした。

たかだか28年の人生だが、こうした失敗を経て今思うのは、「余裕」があれば、それを武器にもう少しうまく戦えたのではないか、ということである。

僕は(今は亡き)センター試験世代だが、僕が受験生だった年は、たしか数学の平均点が40点くらいだった(※一応平均点が60点になるように作問されているらしい)。
後から振り返れば、国立大学で数学の論述問題を解くような受験生にとっては、大したことのない問題だったはずだが、あの時は、とにかく厳しい時間制限の中で得点を稼がなければ、という思いが強く、余裕が無かった。

仮に実戦模試でA判定なんか取っていようものなら、センター試験の多少のミスなんか気にならないぐらい、心に余裕を持って臨めていたのだろう。


「童貞はモテない」

これを見た童貞の諸君、本当に申し訳ない。ただ、世の真理から目を背けないで欲しい。

”今の”君たちには、余裕が無い。

童貞の目標は、卒業すること。周りの友人が徐々に卒業していく中で、自分だけが取り残されていく感覚はかなりのストレスであり、焦りを生む。そうした焦り、すなわち余裕の無さは、相手にも伝わるのだ。そんな状況で相手が自分に対して心を開いてくれるはずがない。

「好きなタイプは?」に対する「優しい人」という回答は本当にしょうもないし、そんな女つまらんなあという気持ちではあるが、翻訳するとすれば、「私に気遣ってくれる人」とか「大切にしてくれる人」とかそんな感じだろう。

自分の身なりや振る舞い、童貞か否かというステータスなんかを気にするのではなく、相手の女性に対して気を配る余裕がある人。
そんな人を、女という生き物は求めているのだよ。知らんけど。


宝塚記念の考え方

さて、この時点で1100文字超え。原稿用紙にして3枚弱である。最近いろいろあって、自分の考えをどこかで吐き出したくて仕方ないのだ。そんな僕が、誰よりも余裕が無いのかもしれない。

長い長い前置きを終えて、ようやくお待ちかねの(そうであってくれ)宝塚記念の話だが、このレースは上半期最後のGⅠ。いわゆるグランプリレースである。

では早速だが、いきなり核心を突くようなことを言おう。


誰もここを最大目標にしていない

「GⅠだぞ」「上半期の総決算だぞ」「そんなことを言っているからお前は今年も勝てないんだろ」

そんな言葉が痛いほど聞こえてくるが、これはある程度の確信をもって言える。なぜなら、グランプリレースに出走するような、ファン投票で選ばれるようなスターホース達は、このレースの後、秋に備えて夏休みに入るのである。

1学期の期末試験を終えて、もう少しで夏休みだ!という状況で心身ともにHPが最大のやつがどこにいる?期末試験のために一夜漬けを続けたり、インターハイ予選で負けて全国大会を逃したりという直後に、今が人生のピークだぜ!!!と言っているようなやつはいたか?

宝塚記念のメンバーだって同じなのだ。
既に今年の春に数戦走って疲弊している者、中間でトラブルがあって順調に調整できていない者、海外かつナイターという慣れない環境で世界の強豪と激闘を繰り広げた者。

状態が万全のものはいないし、宝塚記念にピークを持って来ているなんてことは有り得ない。
「他のレースも頑張ったけど、なんか選ばれたし出ようぜ~」くらいの意気込みで出てくることも珍しくない。

そんなメンバーの中で勝ち抜くためには何が必要か。ここまで読んできたあなたなら分かるはずである。

そう、余裕があること。

誰しもが多かれ少なかれ、余裕が無い状態なのだが、そうした中で”周りに比べれば”余裕がある。そんな人馬を、今年の宝塚記念の本命としたい。


本命

ドウデュース(武豊)

この馬は昨年の有馬記念の覇者であり、今回の宝塚記念はグランプリ連覇の偉業がかかる。
そんな昨年の有馬記念は、スターズオンアースやタイトルホルダーといった名馬たちを破っての勝利だったが、実はこの時は余裕が無い中での勝利だった。

ドウデュースは、言わずと知れた2022年のダービー馬であり、あのイクイノックスを東京2400という王道の舞台で破っている。
そんな名馬だが、ダービーの後は苦しんでいた。凱旋門賞では惨敗、翌年のドバイ遠征では直前でまさかのドクターストップにより回避。復活を期した秋は天皇賞当日に鞍上の武豊騎手が、新馬に蹴られて騎乗できない事態となり、急遽の乗り替わりで呼吸が合わず敗戦。ジャパンカップでも掲示板がやっとだった。

そうした中で迎えた有馬記念だったが、もう一つの不安要素が当日の武豊騎手であった。言わずと知れたレジェンドジョッキーだが、先述のアクシデントにより本人に故障発生。レースに復帰したのは、有馬記念の前週からであり、おそらくレース当日でも完治していたわけではなかった。
妻も「まだ足痛いやろ」と舐め腐っており、かなり軽視していたようだ。

しかし、結果はご存じの通り。

「武豊だああああ!」

という叫びは、実況の青島アナだけでなく、我々の口からも発されていた。
(あの時僕が馬連の相手に入れていなかったら、我が家にルンバは導入されなかったのだから、そこはもっと感謝されてもいいと思う・・・)

そんなドウデュースが、なぜ今年の宝塚記念で余裕があると言えるのか。
それはローテーションにある。

なぜだ、ドバイ帰りで疲弊していると言ったじゃないか。

そう思ったあなたはよく読んでくれている。ありがとう。
たしかにドバイ帰りなのだが、正直ドウデュース自身は戦い抜いていないのである。

昨年、直前に回避したことで、陣営は仕上げ切れていなかった。いわゆる「余裕残し」というやつだ。
そんな状態で出走し、直線では内に包まれてまともに追い出せたのは残り100m地点から。そんなのイクイノックスでも勝てないよ。

海外遠征帰りではあるが、まともに力を出し切れていないので、状態面には十分に余裕がある。余裕が無かったはずの有馬記念で勝利したこの馬が、今回は余裕があるのであれば・・・

そして何より、この馬の今年の最大目標は凱旋門賞である。
そこにピークを持って来なければならないのに、既に限界を超えているようなことがあってはいけないのだ。

この馬は今回の宝塚記念に向けて、必ず余裕がある。
宝塚記念を余裕で勝利し、きっと秋には松島オーナーの夢、ひいては日本の夢を叶えてくれることだろう。

そう、日本という、凱旋門賞童貞の夢を。


対抗

ジャスティンパレス(C.ルメール)

ルメールという男、言わずと知れたトップジョッキーである。
騎乗技術やポジション取り、折り合いスキルなど、この人がトップジョッキーたる所以を挙げ始めたらキリがないが、私が一番すごいと感じるのは、「東京の長い直線を待てること」である。

東京競馬場の525.9メートルという直線の長さは、新潟競馬場に次いで日本で第2位なのだが、やはりレースという競技において勝利を意識すると、どうしても心の余裕を失い、早仕掛けとなってしまう。その結果、一度は先頭に立つものの、最後の最後で脚を溜めていた後方の馬に差されるという光景を、これまで何度も見てきた。思い出すだけでも涙が出る(というか今日も何回かあってタコ負けした)

だが、ルメールは、ルメールだけは、万が一飛んでしまえば多くの人生を破滅させてしまうような、圧倒的1番人気の馬に乗っていても、その長い直線でギリギリまで待つことができるのである。
残り200mの標識を超えてから鞭を入れて追い出すと、ルメールの馬は恐ろしいほど伸びてくる。
あー、ルメール飛んだなあと思っていたはずなのに、次の瞬間にはゴール版を通過してガッツポーズしているのである。

インタビューの「おおきに」を次こそは笑って聞きたいと、いつも思うんだよなあ(買えよ)。

そんな常に勝者の余裕を漂わせているバケモン騎手が今回乗るのは、ジャスティンパレス。

昨年の宝塚記念では3着に敗れているのだが、ディープインパクト産駒にとって、阪神の宝塚記念で斤量58キロを背負うのは鬼門であり、過去に馬券が絡んだ馬もほんの数頭。
しかも、昨年は鮫島騎手が直線で鞭を落とすというトラブルがあった。

人馬ともに余裕を失っていたはずだが、そんな状態で、かの有名な名牝ジェラルディーナに競り勝った実力の持ち主である。
※その結果、スルーセブンシーズとジェラルディーナのワイド2000円を持っていた私は、10万円獲得のチャンスを僅差で逃した

そんなこの馬もドウデュース同様にドバイ帰りではあるが、ジャスティンパレスが敗れたドバイシーマクラシックというレースは、とんでもないメンバーで行われていた。

1着 レベルスロマンス → チャンピオンズ&チャターカップ 1着
2着 シャフリヤール → 未出走
3着 リバティアイランド → 未出走
4着 ジャスティンパレス → 宝塚記念 ?着
5着 エミリーアップジョン → コロネーションカップ 4着
6着 ポイントロンズデール → オーモンドステークス 1着
7着 ジュンコ → シャンティ大賞 1着
8着 スターズオンアース → 未出走
9着 シムカミル → 未出走
10着 シスファハン → 未出走
11着 スピリットダンサー → 未出走
12着 オーギュストロダン → タタソールズゴールドカップ 2着、プリンスオブウェールズS 1着

次走以降で重賞やG1を勝つような馬ばかりの超ハイレベルなメンバーだったのだ。
そんな中で、初の海外遠征という慣れない環境の中、ルメールという最高のパートナーも不在の中で4着。ただただ、負けて強しポイントを貯めこんでいると言わざるを得ない。

着順こそドウデュースに劣っているのかもしれないが、今回は天皇賞春を勝った舞台でもある、京都での宝塚記念。

先ほども述べたように、阪神開催だと鬼門だったが、京都での宝塚記念は2006年にディープインパクトが勝利した時以来。そう、父が勝利した舞台である。

これはもう、追い風が吹いているとしか言えない。

ジャスティンパレスよ、翔べ。


前日の見解

と、ここまでは平日のうちにほとんど書いていたのだが、話が変わった。

梅雨だ。

土曜日の夜からめちゃんこ降るらしい。
妻がちょうど京都に帰っているので、実際にどんな天気かは妻が一番よく分かっているのだろうが、怖いので聞くことはできない。
※妻が怖いという意味ではないです、本当です。

道悪になるという想定で、週中は妻が家にいないのをいいことに、信頼している走法予想家のスペースを聞き漁り、言語化の鬼に理解の助けを求めた。

そして一つの結論に達した。

四輪駆動的に前脚を強く使って走るドウデュースは、京都特有の下り坂で雨の影響を受けてスリップし、右手前一本で勝負どころのハイペースを捲り上げるため、直線で「余裕を失う」

残念だが、童貞の夢は捨て置くことにした。

決意の「消 ドウデュース」
※僕は2連系がメイン馬券なので、あって3着という意味での消しです。

フランスで翔べ。今回は飛べ。


予想印(暫定)

◎ジャスティンパレス
○ブローザホーン
▲ローシャムパーク
△7,5,3,13,9

本命は、繰り上がり的ではあるが、ジャスティンパレス。
ドウデュースが苦しむ展開になるのであれば、それはもうこの馬の能力が頭5つくらい抜けている。

確かに道悪経験がないことが懸念されるものの、走法的にブレが大きいタイプではなく、加速力よりもトップスピードを持続する能力を生かして戦うタイプのため、道悪が極端にマイナスに働くとは考えにくい。

ルメール騎乗時は4戦4勝と、完全にこの馬を手中に収めており、どういう騎乗をするのがこの馬にとって、またこの馬場に対して良いのかということは熟知しているだろうから、まったく嫌う要素なく、本命としたい。

単勝4倍は付きそうなので、そこから相手を絞っていく。


対抗は、道悪で急浮上のブローザホーン。
危うく本記事のタイトルを見失いそうになったが、ちゃんと「余裕がある」といえるのか、以下検討する。

まずは、菅原明良騎手。
たしかに若手のホープであり、美浦所属なのに京都外回りの成績がいいので、そこの不安はない。ただ、まだG1を勝っていない。

誰しも初めは童貞であるように、あの武豊だってG1を勝っていない時期というのは当然あった。とはいえ、菅原騎手に今回G1初制覇を期待するのはまだ時期尚早に思う。今日の東京11Rデコラシオンのクソ騎乗を見せられて、騎手買いできるわけないだろ

続いて、ローテーション。
今年は、日経新春杯に始まり、阪神大賞典→天皇賞春→宝塚記念と、メンバー2番目に多い4戦目である(最多だと思って調べたら、カラテがいた…)。

しかも、長距離2戦を使ってのここ。テーオーロイヤルが天皇賞春で不安視されていたやつの、さらに1戦多いパターンである。ちなみにテーオーロイヤルは勝利したものの、骨折が判明した。過酷だ。

天皇賞春で素晴らしい仕上がりだっただけに、今回「余裕」が残っているかは疑問が残る。

最後に、道悪適性について。
これがこの馬の一番の買い要素である。
よく「道悪巧者」という言葉が使われるが、そんな馬はいない。誰だって道悪は走りづらい。

あくまで、みんなが走りづらい道悪でも、”比較的”パフォーマンスが落ちない、というだけである。
そういった視点で、この馬が「道悪巧者」と言われる所以のレース、烏丸Sを見て欲しい。

最後の直線、他の馬たちは全然進まない中、1頭だけ水かきでもついているのかというくらい、普段通り走っている。
この走り方が今回もできるか、そこが鍵を握っている。

個人的にはそれだけでG1が取れたら苦労しないとも思っているが、馬券圏内に入ってくる可能性という意味では、一番高いのかもしれないね。
あとはオッズとの相談ですが、馬単ならそこそこ付きそうなので買ってもいいかなと。。。

問題は僕の財布に余裕が無いことなんですが、定額減税のおかげで手取りが増えたというのは事実です(なお土曜日の収支)。


終わりに

ここまで、人生における「余裕」の大切さについて書いてきたんですが、最近、結婚式の準備とかしていて思うんですよね。

キャパって大事だなって。

人それぞれキャパの大きさは違ってて、タスクがいくらあってもこなせる人もいれば、一つのことをやるのに精いっぱいの人もいる。
後者が必ずしも悪いと言いたいわけではないけれど、それで失うものはたくさんあるよなと。

自分はどちらかというとキャパが広い側の人だと思うんだけど、それでも何かに悩んでいた時は友人に会うのが億劫なこともあったし、他人のハッピーオーラ溢れるインスタの投稿を陰でコソコソ言っていることなんか、今でもある。

ただ、もしそれが一時の感情だけなんだったら、そんなことで大切な人を失うのはもったいないなと思う。
自分が一番かわいいのは当たり前で、自分よりも大事なものなんて無いんだけど、それで蔑ろにされる側は、それまでの時間も全て否定されたかのように傷付けられる。

自分がどんなに不幸続きの毎日だったとしても、大切な人のめでたいことは全力で祝える人でありたい。

自分がどんなにタコ負けしていても、特大馬券を当てた人を、素直に祝福できる人でありたい。


とはいえ、今年の宝塚記念は、ジャスティンパレスとともに、祝福されるのは僕だ。レース後は、余裕な顔して世界につぶやくね。


おおきに。