きんモザ好きが高じてイギリスに行った話~その3、2日目(Cirencester&Bibury編)~
前回までのあらすじ
降り立った駅はヨーロッパそのもの。街並みや物価の高さにもヨーロッパを感じる。メンバーで最初の夕食を楽しむが、疲れからかお開き前に寝入ってしまう…。
目が覚めると普段着のまま毛布も被らず布団に突っ伏していた。風呂に入らないまま肌着で寝落ちすることは日常でもままあるが、上着もズボンも履いたまま寝落ちしたのは記憶の限り人生初だ。日本時間でいえば就寝は午前7時。徹夜も同然なので無理もない。
シャワーを浴びて荷物整理をしていると知人も目を覚ましてきた。体調が乱れるので普段、朝食を摂ることはないが、この先どのタイミングで飲食できるか分からなかったので、サンドイッチとミートボールの余りを腹に詰め込む。サンドイッチは具沢山でとても美味だったが、ミートボールは少しパサパサだったこともあり朝から食べるにはなかなかきつかった。
メンバー全員が無事起床し、午前7時ちょうどにホテルを出発する。
2日目はイギリスの聖地のメインであるコッツウォルズ地域を堪能し、アリスの実家のモデルとなったFosse Farmhouse B&Bに宿泊する。2日目にして今回最大の山場だ。
中学生の大宮忍はこのPaddington駅からアリスの家に向かった。アニメでは描かれなかった原作11巻の卒業旅行でも、一行の出発駅として1コマだけ登場する。駅舎は1期放映当時と全く変わらないが、登場車両のインターシティー125(HST)は2019年にパディントン駅を発着する列車から撤退。作品の完全再現は残念ながら出来なくなってしまった。
発車までの約30分間、アニメ&原作と同じ構図の場所を探し、写真に収める。発車10分前にようやく出発番線が表示。目の前の車両だったので余裕をぶっこきながら写真を撮り続ける。が、ここでメンバーがあることに気づく。
「後ろの車両、回送じゃね??」
表示板を確認するとKemble方面に向かう車両は前5両だけらしい。発車時間が迫る中、慌てて車両前方に向かうと1本の編成だと思っていた車両は5両+5両の2編成。連結を切り離し発車の準備をしていた。あっぶねぇ…。
列車はPaddington駅を定刻発車。あまり乗客は乗っておらず、確かに10両は過剰供給にも思えた。
乗車したのはインターシティー125の後継となるClass800。座席は一部が向かい合わせになっていて、大型のテーブルが設置されている。スーツケースを置くには邪魔だが物を置くには十分すぎるほどの大きさだ。日本にもこういった特急車両があってもよいかもしれない。
Swindon(スウィンドン)駅を出てしばらくすると床下から聞き慣れたディーゼル音が聞こえた。あれ、これ電車では…?
調べるとClass800は発電機でモーターに電力を供給することで非電化区間も走行できるらしい。電化区間でも200km/hで飛ばしていたが非電化になっても160km/h以上で飛ばしていた。なんだ君。一体、バケモノか?
Paddington駅から約1時間10分、最初の目的地のKemble(ケンブル)駅に到着。アリス家の最寄り駅のモデルになった場所だが、実際の距離はかなり離れている。
見覚えしかねぇ~~~~~~(感動)
特徴のある柱の赤い装飾にレンガ造りのホーム、駅舎。すべてがアニメに出てきた風景と全く同じで、アニメの当該場面が容易に浮かぶ。この旅まで聖地巡礼はほとんどやったことがなかったが、なるほどこれは感動する。
Kemble駅はGloucester(グロスター)とSwindonを結ぶ本線の他、かつては駅北東のCirencester(サイレンセスター)や南西のTetbury(テットベリ)を結ぶ支線が分かれる交通の要衝だった。両支線とも1964年に廃線となったが、現在もCirencester方面に向かう支線ホームと線路の一部が残っており、保線車両の留置用に使われることもあるようだ。
続いてはアリスと忍が遊びに出かけた町のモデルとなっているCirencesterに向かう。駅からはバスが出ているがなんと1日3本。旅程を立てた知人曰くこのバスの本数の少なさ故、行程に縛りがつき朝早くPaddingtonを出たそうだ。日曜日は運休という話もあり、利用には注意が必要である。
ロンドンの西北西150kmに位置するCirencesterは観光地という感じの街ではなく、聖地巡礼でなければ訪れる機会もなかったかもしれない。しかし町には活気があり、先述の支線の復活運動が起こるのも頷けた。
ここでついに分厚い雲から雨が降り出し、散策中は降ったり止んだりを繰り返した。スーツケースを持ちながら折り畳み傘をさすのはなかなかにしんどく、写真を撮るにも一苦労した。そしてなにより寒い、、、。
Cirencesterの街を1時間強巡った後は、さらに北東にあるBibury(バイベリー)に向かう。ここもアリスと忍の街歩きに登場し、アリス家がある場所のモデルにもなった町だ。先ほどとは別のバスに乗り15分ほど揺られる。
BiburyはCirencesterと異なる「The観光地」という場所で、中国人の団体客や我々以外の日本人も見かけた。イギリスの原風景を残す場所ということで有名とも聞いたが、日本で言えば京都みたいなものだろうか。ただ観光客のほとんどは車で来るようで、道の片側には車がびっしり。我々のようにバスで訪れる観光客はレアなのだろう。
一通り散策すると時間はちょうど12時過ぎ。Biburyにはマスの養殖場があり、そこのカフェで昼食がてら一休みする。おすすめはスモークサーモンなど3種のサーモン料理にパンが付いたbibury trout trio。昼食にしてはなかなかのお値段だが迷わず注文する。
実はこのお店、事前リサーチした際にGoogle評価で星3.5と少々評価が低いことが気になっていた。口コミも「おいしい」「臭いがした」とバラバラで、料理が出てくるまでひやひや。ここはメシマズで有名なイギリス&海鮮系。地雷要素は揃っていて、香港で食べたゴムのような海鮮粥の悪夢がふとよぎる。
料理は注文から10分ほどで出てきた。見た目は問題ない。さて、お味は…
お、美味しい…。身も大きくて食べ応えがあり、塩加減も抜群。約3000円だが、イギリスの物価を考えれば値段以上の価値はある美味しさと量だ。次に訪れた際もリピートしたいほどの満足度だった。
昼食前に聖地はほぼ巡っていたので、1時間ほどゆっくりと昼食を摂った後はまだ見ていない場所を巡りつつバスまでの時間をつぶす。他のメンバーはカフェ向かいのアイスを頼んで原作完全再現(?)をしていたが、自分は体も冷えていてトイレにもあまり行きたくなかったのでパス。でも今振り返ると食べれば良かったなぁ…。
Biburyは小さな町だが絵にかいたようなイギリスの風景がそこかしこに残っており、観光客が多数訪れる理由もなんとなく分かった気がした。冬になりかけの時期で枯草や紅葉も目立ったが、夏は一面の緑に覆われるのだろう。
午後2時20分、Cirencester行きのバスがやってきた。この後はいよいよアリスの実家のモデル、Fosse Farmhouse B&Bに向かう、、、がかなり長くなったので一度ここで分割したい。Fosse Farmhouseで味わう感動が想像以上のものになることを、まだこの時の私は知る由もなかった―。