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人生ベスト級の物語 - 「天狗の国」シリーズをとにかくオススメするnote



信じられないくらい面白い作品に出会ってしまったので紹介します。

といっても、小説でも漫画でも映画でもアニメでもありません。

「ノベルゲーム」です。


・・・・・・えっ!?
ノベルゲームって、あの「エロゲ」とか「ギャルゲ」とか言われるような、カワイイ女の子とイチャイチャえっちなことをするヘテロ男性向けのゲームでしょ!?

いいえ、たしかにノベルゲームにはそうした傾向の作品も多くありますが、今回紹介するのはエロゲでもギャルゲでもありません

むしろ、そういうものに一切興味がない人にこそやってほしいゲームです。

しかも、紹介するのは商業ゲーム──企業によって制作・販売されるゲームではなく、アマチュアの個人によって制作・販売されている、いわゆる「同人ゲーム」です。


いい加減もったいつけずにさっさと名前を出しましょう。

今回紹介したいのは、同人サークル「スタジオおま〜じゅ」制作のノベルゲーム作品群『天狗の国』シリーズです。
(※正式には『国』シリーズらしいですが、分かりやすさのために『天狗の国』としました。)

↑スタジオおま〜じゅ公式サイト↑


天狗の国シリーズは、2021年9月現在、あわせて6作品が発表されており、なんと、そのうち3作品は無料で遊ぶことができます。

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べつにわたしが1人で「大傑作だ!!!」と騒いでいるわけではなく、『みすずの国』は第10回フリームゲームコンテストノベル部門にて金賞を、『キリンの国』は第10回ふりーむゲームコンテストにて最優秀賞を受賞し、2014年フリーゲーム大賞でも入賞している、実績のあるシリーズです。

同人フリーゲーム界隈ではかなり有名な「国」シリーズですが、わたしは普段ノベルゲームを全くやらない/やったことがない人にこそ薦めたい!やってほしい!!と強く思っているため、このnoteを書いています。書き終えたら親にも布教するつもりです。真面目に、老若男女が読んで楽しめる物語だと思うからです。むしろ年をとればとるほどに良さがわかるようになっていく類の作品かもしれません。


ナンバリングが無くて分かりづらいので、発表順に整理してみました。

1. 『みすずの国』(無料)2014年発表 プレイ時間:約2時間
2.『キリンの国』(無料)2014年発表 約6時間
3.『雪子の国』(2000円) 2017年発表 約10時間
4.『ハルカの国 明治越冬編(第一話)』(無料)2018年 約4時間
5.『ハルカの国 明治決別編(第二話)』(1500円)2020年 約4時間
6.『ハルカの国 大正星霜編(第三話)』(1500円)2020年 約7時間

(発表年とプレイ時間中央値はErogameScapeより引用)

天狗の国シリーズは、「天狗」たちが山奥で暮らす日本を舞台にした現代ファンタジーです。

その世界設定はシリーズで共有されていますが、個々のタイトルは主人公が異なり、それぞれ独立した物語としても楽しめます。バルザックの『人間喜劇』みたいなものです。
(ただし、4作目〜6作目は『ハルカの国 前三部作』として同一の主人公の物語になっています。これらはタイトル通り明治時代〜大正時代が舞台です。)

上で述べた通り、本シリーズは全年齢対象(非18禁)のPCノベルゲーム(ビジュアルノベル)です。

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このように、数行の文章(基本的に台詞)とキャラクターの "立ち絵" が、マウスをクリックするごとに切り替わって進んでいくことで「物語を読む」という形式のゲームです。

選択肢は一切なく、一本道のストーリーなので、ゲームというよりは小説を読んでいる感覚に近いです。
それが「ノベルゲームは全くやったことのないけれど小説(や漫画)は好き!」という人に薦めたい理由の1つです。

windows OSのパソコンさえあれば、誰でも今すぐに無料ダウンロードしてプレイすることができます。



「国」シリーズはまだ完結していません。現在、全6部作を予定している『ハルカの国』の前半3つが出来上がったところで、『ハルカの国』6部作が完結した後も、さらに数個の『〇〇の国』が続いて、ようやく完成するそうです。(作者のブログにて語られています。)

しかし「な〜〜んだ、まだ途中のシリーズなら完結してから一気に読みたいから今はいいや」とはゼッタイに思ってほしくないです。

ほとんどの作業工程を作者であるKAZUKI氏が1人で行っている完全個人制作シリーズなので、完結まで何年かかるのかわかりませんし、その制作資金的な意味でも「完結してから」とプレイを躊躇していては、無事シリーズが完結する(or 次回作が出る)可能性を下げることにもなりかねません。(作者さん自身は「何年かかっても絶対に完成させる」と仰っていてたいへん嬉しいですが……)

・・・というか、そういう制作の事情を抜きにして、わたしは「天狗の国シリーズ」を本当に面白い作品だと思っているので、なるべく多くの人にプレイしてほしいのです。
(いちおう断っておきますが、わたしはさっきプレイし終えたばかりの新参ファンであり、作者との繋がりなどは一切ございません。ただ好きな作品を布教したい、紹介したい、というオタクの性質にしたがって行動しているだけです)


ごちゃごちゃと言っていますが、「で、具体的にどこがどう面白いの??」というオススメポイントを語らなければ仕方がありません。

そこで、まず「もしあなたがこういう作品が好きならゼッタイにやったほうがいい」リストを載せておきます。以下のリストのうち、1つでも好きなヤツがあったら『国』シリーズを読んで絶対に後悔しないと保証できます。

【1つでも好きな作品があるアナタは今すぐ国シリーズをやってくれリスト】
・千と千尋の神隠し
・もののけ姫
・ハリーポッター
・リズと青い鳥
・この世界の片隅に
・岬のマヨイガ
・さよならの朝に約束の花をかざろう
・ゴールデンカムイ
・進撃の巨人
・鬼滅の刃
・ザ・ワールド・イズ・マイン
・けものフレンズ
・WHITE ALBUM2
・ウォーリアーズ(児童文学)
・都会のトム&ソーヤ
・大河ドラマ
・近代日本の歴史モノ
・大江健三郎の小説(特に『同時代ゲーム』『M/Tと森のフシギの物語』など)
・海外文学(特に異国の自然・風土描写が魅力的なもの)
・美味しそうな食べ物/料理が登場する作品
・お酒が印象的な作品
・女性同士の強固な関係を描いた作品
・男性同士の強固な関係を描いた作品
・男女のラブコメ作品

・・・いかがでしょうか。逆に苦手な作品が入っていてもスルーしてください。
なお、シリーズ全般というより、特定のタイトルを想定しているものも多いです。例えば『鬼滅の刃』ファンなら大正時代つながりでぜひ『ハルカの国〜大正星霜編〜』をやってほしいし、『リズと青い鳥』などの百合作品やハリポタが好きな人は1作目『みすずの国』を、マチトムやBL好きは2作目『キリンの国』が刺さる可能性が非常に高いです。ホワルバ2好き・ラブコメ好きには3作目『雪子の国』をオススメします。

・・・といっても、推奨プレイ順があるので、なるべく1作目『みすずの国』から発表順に読んでほしいです。世界観が繋がっており、過去作のキャラクターが意外なところで登場したり……といった面でも楽しめるからです。

また、読んだことのない作品を引き合いに出すのは恐縮ですが、なんとなく『十二国記』シリーズや『天冥の標』シリーズってこんな感じなのだろうか?と、「国」シリーズをプレイしていて思いました。骨太な世界設定から繰り出される重厚な大河ドラマ。(「全然ちげえよ!」というお叱りの声もお待ちしているので、とにかくやってみてください)


ではようやく、大きなネタバレにならない程度にオススメのポイントを紹介していきます。


オススメポイント1:描かれる「世界」のリアリティがすごい!

「国シリーズ」では、神通力(超能力みたいなもの)を使える天狗が、京都の鞍馬などの山々に特別自治区をおいて日本国から独立して暮らしている、という設定から始まります。これら「天狗の国」の大きな地区は国内に4つ──鞍馬・愛宕(京都)・白峰(四国)・英彦(九州)──あり、4大国といわれています。

超能力とか4つの天狗の国とか、ものすごくファンタジックな設定に思えますが、これらが日本国の"人間"たちとどう政治的・経済的・文化的に交流を持っており、色々と問題を抱えながらいかに共存しているのか──といった設定がめちゃくちゃ練り込まれており、本当に天狗の国があるかのようなリアリティを味わうことができます。

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わたしは門外漢ですが、このシリーズは全体的に民俗学文化人類学の知見に支えられているらしく、「異文化との交流・共生」というテーマをかなり丁寧に扱っていると感じます。
「なんか天狗ってファンタジックでイイよね!ウェ〜イ!!」という軽薄なノリではなく、ガチで重厚な現代ファンタジーをやろうとする気概をビシビシと感じます。

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民族同化政策や植民地主義をここまで丁寧に、かつ鮮烈に描いている物語をわたしは初めて読みました。

上記の「リスト」でいえば、異国との政治問題をエンタメのなかで上手く扱っている点で『進撃の巨人』に似ているところはあると思います。

というか、そもそも「」という単語をシリーズ共通のタイトルに据えている時点で、「国家」や「社会」、「歴史」といった大きなモノを真面目に描こうとしているのがわかるかもしれません。「国」とはなにか、この「国」のなかでわたしはいかに生きていくのか。こうした切実な問いかけが作中で繰り返されます。

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この意味で、わたしは本シリーズを、そこらへんの重厚な文学作品にまったく引けをとらないほど価値のある物語作品だと思っています。一つ一つプレイするたびに、自分がいかに「ノベルゲーム」というジャンルを(無意識にでも)舐めていたかを痛感しました。それほどに打ちのめされ、感動し、衝撃を受けました。


・・・このように書くと、なんだかスッゴク敷居が高そうな作品のように思われるかもしれませんが、そんなことはありません。いくら政治や社会といった「大きなモノ」を描こうとしていても、いくら世界設定が重厚でも、「国シリーズ」はまぎれもなくエンターテイメント作品であり、そして感情を揺さぶられる人間ドラマなのです。
ときに大笑いでき、ときにボロボロに泣け、ときには熱くなり、ときにはどんな言葉でも言い表せないほど透き通った感情を抱くことができます。わたしはそうでした。

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オススメポイント2:登場人物たちがみんな魅力的!

そもそも社会や歴史を描くといったって、物語である以上、主人公などの限られた登場人物によって物語は動いていきます。「個人(人間)を通して社会(世界)を描く」という文学の王道を本シリーズもまたなぞっています。

つまり、物語の面白さは、少なからず登場人物の面白さ・魅力にかかっています。

そして、「傑作」といわれる多くの物語と同様に、「国」シリーズもまた、とにかくキャラクターがどいつもこいつも魅力的なのです。

例えば『雪子の国』に登場する天狗のお姫様、虹子(こうこ)。

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とにかく口が達者なお姫様で、その自己評価の高さから、子供らしいんだか大人っぽいんだか分からない発言を連発します。喋るセリフ全てがめちゃくちゃ面白くて、虹子が出てくるシーンはずっとニコニコ大笑いしながら読んでいました。

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こういう背伸びした聡明な少女キャラ、ほんとすき・・・・・・
オースティン『高慢と偏見』のエリザベスの幼少期感はちょっとある。


他にも、

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方言系不良キャラや……


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ぼくっ子お姉さんキャラなど……


老若男女、人間も人間以外も、個性的で魅力的なキャラクターが揃っています。

なぜ本シリーズのキャラが魅力的なのかといえば、それは、記号的でない、生々しく生きている「人間」を描く技術が非常に高いからだと思います。

安易な属性キャラ、プロット上で必要なだけの道具キャラは一人もおらず、メインキャラも、ちょっとしか登場しないキャラもみんな、この作品の「世界」のなかで息づいている……という生活感や、それぞれの人物が辿ってきた人生遍歴が、個々のセリフや仕草から垣間見えるのです。

キャラの「仕草」は文章の他、立ち絵の差分によっても表現されます。

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このように、1人のキャラの立ち絵でも、表情や仕草、服装、手に持っている物などの差分がめちゃくちゃ多く、たった1回しか使われない差分もたくさんあります。

文章だけではなく、こうしたイラストによっても、各キャラ・各シーンの存在感がグッと高められ、「そこに生きている」感が強くなるのです。ノベルゲームが「ビジュアルノベル」ともいわれるゆえんです。

※また、イラストで細かな表情や動作を表現できるぶん、地の文や台詞といった文章で説明しなければいけないことが減り、結果的に文章のテンポが飛躍的に高まり、非常に読みやすくなる、という利点もあります。とにかく文章が読みやすくわかりやすく、それでいて美しいのです。



オススメポイント3:食べ物が超おいしそう

「食べ物が美味しそうな小説は名作」というクリシェがあるように、食べ物が美味しそうに描かれている物語はその時点でかなり信用ができると思っています。海外文学でいえばタブッキ『レクイエム』なんかが有名ですが、「国」シリーズもまた、そうした食べ物がおいしそうな飯テロ作品のひとつです。信頼できます。

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ただ添え物のように「食」があるのではなく、生活のなかで「何かを食べること」「誰かと食べること」、その機微を描いています。美味しそうな料理と「国シリーズ」は切っても切り離せません。

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また、「食べる」だけではなく、「飲む」のも非常に印象的です。お酒を飲みながら読みたいシーンがたくさんあります。

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特に最新作『ハルカの国 大正星霜編』はお酒が好きなひとには絶対にプレイしてほしい、酸いも甘いも飲み干して、ぐでんぐでんに酔っ払いながらなんとか前に進んでいく人々の話です。

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オススメポイント4:自然や風景、季節の描写がすばらしい

「食」の描写がすばらしいことと地続きですが、国シリーズの真骨頂は「風景」の描き方だと思っています。

その土地の風景、その季節の風景、生活の風景、人生の風景。そうしたものを描くために物語が、キャラクターが用意されている。そう思います。

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国シリーズを読むと、わたしは外に出て散歩したくなります。

普段何気なく歩いている道端に植わる木々を眺めたり、空気の匂いをかぎたくなります。

こう書いてしまうとなんだか気取っていてしょうもないことのようですが、それほどに、この物語のなかの風景はわたしに途方もない実在感と魅力をもって迫ってくるのです。いかに自分がふだん、季節を、風を、空を気にせずに生きているか思い知らされるのです。

そのくらい自然と風景の描き方がすばらしいからこそ、個性豊かなキャラクターたちが織りなす美しい物語にすっと入り込めるのだと思います。



・・・・・・

さて、いかがでしたでしょうか。
本シリーズの魅力は無限にあるので到底語りきれませんが、その魅力の一端をわたしなりに伝えられていたら、と思います。

ここからは、いよいよ、「……う〜ん、そんなに言うんだったらちょっとプレイしてやっても良いかな」と思ってくださったあなたへ向けて、具体的に、この物語を読む進めていく流れを書いてみたいと思います。

といっても発表順にやるのが王道かつ最も物語を堪能できる順番だと思います。わたしはこの流れで読みました。

1. 『みすずの国』 (プレイ時間:2時間程度)

ふりーむとBOOTHのどちらからでも無料ダウンロードできます。プレイ時間は2時間くらいなのですぐに読むことができます。騙されたと思って今すぐやりましょう。

物語は「ハリポタ×リズと青い鳥」みたいな感じで、めちゃくちゃ良質な友情百合(女の子同士の関係性の話)でした。短いフリーゲームだし……と思って軽い気持ちで読み始めたらぶっ刺さりました。

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ハリポタ的な新たな土地での学園生活のワクワクドキドキ感もたまりません。
「天狗の国」の世界設定について馴染むためにも、まず『みすずの国』を読んでおいたほうが良いと思います。

また、本作をプレイ後には、ぜひこちらのスピンオフ短編漫画を読んでほしいです。ノベルゲームだけじゃなくて漫画もすばらしい…………

いくら無料でもゲームをダウンロードして遊ぶのが面倒くさいというものぐさな方は、この漫画を試し読みしてみるのも良いかもしれません。(『みすずの国』を読んでないとキャラや世界観が意味不明でしょうけど……)

『みすずの国』を読んだ次は、傑作フリーノベルゲームとして非常に評価が高い『キリンの国』にいきましょう。

2.『キリンの国』 (プレイ時間:6時間程度)

こちらも上記2サイトのいずれかで無料ダウンロードできます。

『みすずの国』が冬の物語だったのに対して、『キリンの国』は "夏の物語" です。"ひと夏の冒険もの" として最高峰の出来だと思っています。

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また、『みすずの国』が少女2人メインだったのにたいして、『キリンの国』は高校生の男子2人組がメインです。この2人の関係もめっっっっちゃくちゃ良いです。

また、京都の山奥にある養蚕が盛んな里、綾野郷での生活の描写がすばらしいです。まるで自分まで里でひと夏を過ごしたかのような没入感を得られます。
田舎に生きることの、綺麗事だけじゃない生々しい苦労と、その先にある生の実感が克明に描かれています。

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アンさん・・・・・・・・好きです。例の猪のシーンには本当に言葉を失いました。

   ↓

3. 『雪子の国』 (プレイ時間:10時間程度)

さて、『キリンの国』を読み終えた時点で、ほぼ確実にあなたは「国」シリーズの虜になっています。もう夢中になっています。そこで、次回作『雪子の国』がたった2000円で遊べることに驚きを隠せないでしょう。体験版は無料でDLできます。

甲乙付けがたいですが、『雪子の国』はシリーズ中でも最も力が入った最高傑作であるように思えます。本当に、終盤は読み進めながらずっとボロ泣きし、言葉を失い、何度も天を仰ぎました。なぜこんな作品がこの世に存在しているのか信じられないほどに心を揺さぶられました。

前2作で同性ペアを主軸にしていたのとは打って変わって、『雪子の国』は男女の青春ハートフルラブコメディと銘打たれています。

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美少女雪子ちゃん・・・・・・・・・・好きです。。。。。 最高のヒロイン

主人公のハルタもまた……終盤の展開には本当に何度も泣かされました。

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主人公の立ち絵が普通に出てくるノベルゲームは信頼できる

ヘテロ恋愛ものか〜〜〜と気を落としているそこのアナタも安心してください。本作にも、めっっっちゃ良い男-男の関係があります。

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アスノヨゾラ哨戒班ファン歓喜

この猪飼という男が本当に……………抱きしめたくなるキャラです。中盤はほとんど『猪飼の国』になっています。お婆ちゃんっ子の不良って、イイよね!

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また、猪飼だけでなく、超絶モテ男の先輩キャラ、トシさんも超好きです。ぽっと出のモブかと思っていたら、まさかこんなに刺さるキャラだとは…………。めちゃくちゃ格好いいんですよ、ほんとうに。色気がすごい。そしてやっぱり抱きしめたくなります。

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4. 『ハルカの国 前三部作』

『雪子の国』までの3部作で、いったん現代編が終わります。
次作『ハルカの国』では、時系列が明治初期まで巻き戻り、一転して、ユキカゼとハルカという、2人の「獣」の物語が語られます。

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この2人の関係が・・・・・・・・・・・・もう、""最高"" です。いや、こんな安っぽい単語には到底押し込められないほどにとてつもないペアなんです。

姉妹のような、師弟のような、親子のような、親友のような、ライバルのような……それでいて、そのどれでもない、「ユキカゼとハルカ」としか言いようのない関係の2人が……あぁ、思い描くだけで涙が出てくる。

作者のKAZUKI氏がこのように仰っていますが、たしかにこの2人の関係の特別性は、そのジェンダーレス感にある気もしています。そもそも2人は人間ではなく、いちおう女性(というか雌)なのですが、作中を通して女性だと感じることはほとんどありません。ユキカゼなんか、気を抜くと男子だと認識してしまうくらいです。めちゃくちゃかわいい男の子、というイメージ。

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かわいい

『大正星霜編』までやると、この2人のことを思うだけで、ユキカゼのことを思うだけで、「ああ・・・・・・ユキカゼ・・・・・・・・・・・」と言葉を失います。意味不明でしょうが、やればわかります。あなたも必ずこうなります。

わたしは基本的に歴史モノが苦手で、現代モノしか普段は触れないのですが、『ハルカの国』に関してはそんなこと言ってる場合ではないレベルに達しています。えげつないです。

現在完成している3作は『ハルカの国 前三部作』としてDLsiteでまとめて購入することが出来ます。

第1話である『明治越冬編』は無料配信しています。4時間程度で終わります。

越冬編は、ボリュームこそ『雪子の国』に劣りますが、1つの作品としての構成の隙のなさと物語性でいえば、「国シリーズ」でもっとも完成度の高い話だと思っています。たった数時間のノベルゲームであんなに感動させられ、茫然自失させられるとは思ってもいませんでした。

題の通り「冬」の物語です。これは、作中の季節が冬だという次元を越えて、もはや作品が "冬" という季節、"冬" という概念そのものを体現しているといってもいいくらい究極の冬ゲーです。「冬」が真の主人公なのです。

どうせフィクションで、ゲームで描かれる冬なんて大したことないでしょww と思っていたわたしが馬鹿でした。降参します。・・・本作を終えて、心からそう思いました。

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また『ハルカの国』では時代考証が徹底されている点も見逃せません。立ち絵の着物の柄ひとつ取ってみても、その時代のその土地に暮らす人々の息づかいを感じさせるがごとく、手が抜かれていません。

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『越冬編』では、明治初期、東北地方の農民の生のことばが描かれます。彼らの "語り" が物語そのものへと回帰していく構成には、文学作品でもなかなか味わえない深い感動を覚えました。

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続く第二話『明治決別編』では、「耐え忍ぶ」物語だった越冬編とは打って変わって、ド迫力のバトルアクションが中心になります。ノベルゲームならではの、イラストをふんだんに使った躍動的な演出がすばらしく燃えます。プレイ時間は4~5時間程度、1500円で購入することができます。

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新井英樹『ザ・ワールド・イズ・マイン』が好きな人はぜひ読んでほしいです。
時代に合わせた、絵巻物のような絵柄もすごくいいです。

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このめちゃくちゃ渋いおっさん(30代既婚)が主軸の物語なので、めちゃくちゃ渋いおっさんが好きな全人類が読んだほうがいいと思います。渋いです。
また、このおっさんとハルカ・ユキカゼの3人の空間がすごく良いんですよね……2人でいるときとは違った趣があります。


そして2021年現在の最新作が『大正星霜編』です。1500円、プレイ時間は7〜10時間程度です。

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大正時代になってはじめて「明治ってあぁいう時代だったんだな……」という感慨が沸き起こります。本作は「時代のうねり」をこれ以上なく見事に描ききり、時代の荒波に、人生という荒波に翻弄される市井の人々の暮らしをひたすらに眼差した大傑作だと思います。『この世界の片隅に』などが好きな人は確実に刺さるでしょう。

大正星霜編の公式のキャッチコピーが「老いてゆく私へ」なのが本当に好きなんですよね・・・・・・読み終えた今、本当にそう思うし、胸が苦しくなる…………

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キャラクターの魅力も過去最高といってよく、クリも、おトラも、大好きです。愛おしいです。

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特におトラは……反則級のキャラだと思います。過去作のキャラのこういう使い方には本当に驚きました。天才。なんでこんなに魅力的なキャラを生み出せるのかと恐いくらいです。

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「さんにん」なんだよな・・・・・・・・・嗚呼、人生・・・・・・・・・


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江戸っ子気質がのこる義理と人情の町、東京 神田の当時の風俗の描写も素晴らしく、大正時代にまったく興味がなかったわたしも深く思い入れを抱いてしまうほどでした。第一次世界大戦直後の幻のような好景気のなかで生きている人々の風景が鮮烈に印象に残ります。

必死に生きる「今」が、懐かしく思い出される「あの頃」へと移り変わっていく──そうした私的な記憶と、世界情勢のスケールで転がっていく歴史/時代のうねり。それらを1つの作品のなかに同居させ、かつ、"化け" であるユキカゼたちと人間の対比のなかで、すべてを、自分でさえも相対化しながら、「本物」を追い求めてのたうち回り、諦め、老い、前に進んでいく。

ここにはたしかに本物がある。そう信じさせてくれる物語でした。



・・・・・・・・・

2021年10月現在に完成している「国」シリーズは以上です。

言ったように『ハルカの国』はまだ完結ではなく、これから大正〜昭和編の後半三部作が作られるようです。楽しみで仕方がありません。


発表順に読んでいくことを推奨しましたが、作中の時系列に沿って『ハルカの国』から読んでいっても、また違った楽しみがあるかと思います。(さすがに後半三部作を待たずに『みすずの国』『キリンの国』『雪子の国』へ移ってほしいですが)

また、以上の紹介で、どうしても今すぐにこれだけはやってみたい! という衝動が沸き起こってしまった方は、その作品からプレイしてもギリギリセーフだと思います。物語としては個々で起承転結になっているので。


さて、ここまで1万字も長々と書いてきましたが、今のわたしのなかで「国」シリーズが大きな存在になりすぎて、正直、自分にこんなnoteを書く資格はあるのか。下手に紹介して作品の価値を下げることにはならないか……という不安を抱えながら書きました。コンパクトにまとめるのが苦手だし、あまりにも本シリーズを神格化しすぎて客観性が著しく欠けているかもしれません。

それでも、もし少しでも興味を持っていただけたら、お時間のあるときにぜひ遊んでみてくれたら、このシリーズの1ファンとしてこれ以上嬉しいことはありません。今のわたしは、大真面目に、「国」シリーズは歴史に残る物語作品だと思っています。もっと多くの人に届いてほしい、それだけの魅力が詰まったシリーズだと信じています。

何回も言いますが、1作目『みすずの国』は1-2時間で終わるから!ぜひ!!!



P.S.

「国」シリーズとは別なので言及していませんでしたが、スタジオ・おま〜じゅの他の作品として「むこうがわの礼節」シリーズの2作品もあります。

こちらは民俗学を前面に出した短編となっており、それぞれ30分程度で読み終えることが出来ます。重厚な「国」シリーズとは違った、些細だけど奥深い日常の謎にせまるミステリー形式の連作です。第2話「知ることの礼節」は特にめちゃくちゃ面白かったです。

「国」シリーズに手を出すことに躊躇っている方は、すぐに終わるこっちから遊んでみるのもいいかもしれません。








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