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【夏はエロゲ】『水夏』プレイ日記①~第1章~


────夏の気配を感じると、エロゲをやりたくなる。


そういう体質になったのはいつからだろう。

これは比喩でも誇張でもなく、事実の報告です。

じっさい、毎年、5月とか6月の「夏にしては早すぎるけど、どう考えても "夏" でしかない」日になると───あるいは、蝉の鳴き声で目を覚ます朝が来ると───からだの奥底、芯のほうからフツフツと湧き上がってくるのです。「今年も来たな、エロゲの季節が……!」という武者震いが。もっともリアルな衝動が。いまここに自分は生きているんだという実感が。

まぁわたしはエロゲ(ノベルゲーム)をぼちぼちと、気が向いたときに一年を通じて嗜んではいるわけですが、ここでいう「夏といえばエロゲ!」のエロゲとは、平たくいえば「夏の田舎を舞台にしたエロゲ」のことです。

エロゲをいったん脇に置いておいても、わたしは「夏」という概念が大好きですし、「田舎」という概念も大好きです。したがって、現実でも夏にテキトーな地方の路線ですごろく旅(サイコロを振って出た目だけ進んだ駅に降りて散策→神社を見つけて参拝でノルマ達成)をここ3年連続でやっていますし、マジで地域住民しか立ち寄らないようなド田舎の村や田園風景を堪能しては、エモさが極まると「エロゲ~~~~~!!!!」と叫ぶ狂人になっています。

それほどに、わたしのなかでエロゲといえば夏×田舎ゲーであり、逆に夏といえば田舎が舞台のエロゲ、という等式が確立されているのです。


わたしの夏×田舎エロゲへの執着を示す証拠として、数年前に書いた文書(の一部)を載せておきます。

:このリストはまったく網羅的でも正確でもありません

今はこのリストを作った頃よりも少しは☑(プレイ済)率が増えていますが、とはいえわたしはまだまだ初心者も初心者です。いつか網羅したいです




────さて、今年も夏がやってきました。


エロゲの季節です。


ということで、すべてのタスクを後回しにしてでも、この身体から湧き上がる生理的衝動にしたがって、夏の田舎エロゲをはじめました。

このたび選んだのは2001年発売の『水夏 ~SUIKA~』。夏の田舎を舞台にしたエロゲとして少なくとも知名度トップ20には入るであろう有名作です。(エロゲー批評空間の「夏ゲー」POV登録数では20位、「田舎が舞台」POVでは27位でした。)

たしか昨年の夏にパッケージ版を中古で買って、1年間熟成させていました。実際に購入・プレイしたのは2004年のリメイク版『水夏A.S+ ~SUIKA~』です。

この作品は、どうやら全4章構成らしいので、ひとつの章が終わるごとに、プレイ中の感想メモと、章おわりの総評をこのnoteに投稿していこうと思います。ふだんは1作品完走してからエロゲー批評空間に長文の感想(メモ)を投稿していますが、せっかく夏に夏ゲーをやるのなら、リアルタイム感を重視して、細かく分割して公開していこう、という試みです。

こうした、エロゲのプレイ中のメモ・感想を小分けして少しずつnoteに投稿していくという発想は、弓川さんのプレイレポートnoteに大きく影響を受けていることをここに明記しておきます。

ひと通り終わってから「感想文」を書くのではなく、プレイしながら感じたこと・考えたことをメモに書きだしていく臨場感あふれる「プレイレポート」形式(わたしはよく「感想メモ」と呼んでいます)は、エロゲ(ノベルゲーム)に限らずわたしのフィクション鑑賞体験の記録方法として1つの理想形です。

なかでも、目の前の画面に表示されるテキスト・ビジュアル・演出・音楽などで構成された物語を、手元のマウスのクリックで読み進めていくノベルゲームは、この感想メモ形式ともっとも相性が良いジャンルだと思っています。


今回(今日)やったのはプロローグと第1章です。それ以降はまだプレイしていないので、あとから明らかになる伏線の箇所など、理解できていない部分は多いと思われます。

あと、語感重視でnoteタイトルに「プレイ日記」と付けましたが、毎日更新の日記ではなく、あくまで各章が終わるごとに投稿する予定です。

とうぜんネタバレ全開なので注意してください。(今回は第1章の内容まで)

「プレイ中のメモ」は本当に自分用のメモなので、あるていどまとまった感想文だけ読みたい方は、以下の目次から「第1章の感想」に飛んでください。

また、画像(スクショ)の補足文は、プレイ中ではなく、このnoteの投稿前に書き加えたものです。






・プレイ中のメモ


フルスクリーン表示だとアスペクト比の関係から歪んでしまうので、ウィンドウ表示でプレイ&スクショするのが自分のプレイスタイルです。


・プロローグ

2007.7.7

おい!!! メッセージ窓非表示にできないやん!! 背景のスクショが取れない! 終わった……

右クリックしても↑の画面になるだけで、UI完全非表示にはできないっぽい。昔のゲームあるある

【7/19追記】3章プレイ中に気付きましたが、スペースキーでUI非表示いけました・・・ごめんなさい

故郷の村に久しぶりに帰郷する男子主人公。いつもの。
常磐村
主人公:稲葉 宏  妹:稲葉 ちとせ(入院中)
華子(かこ)
旅館"なると"に泊まるのは今夏で6回目
父親が危篤? 主人公の稲葉家はこの村の素封家(金持ち)


全画面テキスト表示(ビジュアルノベル)形式で、謎の「わたし」の視点に切り替わった。夜の神社。TVの野球中継を見る予定?


えっ、もう一章おわり!? 20分ちょいしか経ってないんだけど。第1章じゃなくてプロローグってことか。


・1章

2001.7.20
語り手=彰. プロローグとは変わっている!
常磐村は母の実家の風間家がある。両親の離婚によって彰は村へと引っ越す
今度は常にビジュアルノベル形式だ。

彰は浪人生(一浪目)らしい
天然巫女さん
高身長メガネショートカット女子 千夏

また別視点。小夜(さよ)ちゃんと私のふたり姉妹。両親不仲。茜ちゃんは誰? 飼い犬のベス

7.21
昔は神社の石段に手すりなんて無かった。背景の差分が作中で言及される例だ

連城(れんじょう)彰? 風間じゃなかったのか。……あ、やっぱり連城は父方の姓だった。
巫女さん=水瀬伊月 (みなせ いつき) はセラムン好き。「作監は、誰が好きですか?」とかそっち系のオタクだったかw


伊月と小夜は双子
私立 橘学園1年生に編入した(過去に)
主人公のギャグがずっと滑っている。どうしてエロゲ主人公はいつもこうなんだ。
小夜ちゃん事故死しちゃったのか…… これで都合よく双子の片方とだけよろしくできるな……
現在と過去を行ったり来たりでけっこうややこしい
出会った初日にもう伊月は彰に惚れてるやんけ

7.22
小堺:クラスメイトのいじめっこ女子? 立ち絵がない

7.23
過去(学園時代)の伊月視点で彰の立ち絵が出た! すごいモブ顔
小夜ちゃんかわいいなぁ ファッションも好き

家庭環境が劣悪な子供しかおらんのかこの世界は

7.24
お祖母ちゃんいわく、小夜は事故死じゃなくて、母親に連れられて村から夜逃げした可能性?

7.25
中原中也ノルマ達成

7.26
マンガ貸し&猫モヨ子飼始め

7.27
昔できなかった花火をふたりで取り戻す。スチルのライティング差分で線香花火の輝きを表すの良い

双子姉妹だけど、姉妹愛よりも主人公を巡る三角関係の嫉妬心が全面に出ているシナリオは珍しいかな

主人公のギャグは寒いけど、文章じたいはけっこう上手い。情景描写とか場面描写とか

なめらかに初キス!

7.28
マンガの読み方がわからない伊月。絵と文字があるから、先に字だけを読んでしまった。ビジュアルノベルもマンガと似ている
こっわ…… これ父じゃなくて伊月が殺してたパターンか?

7.29
女の死者の土からの蘇りを描いた巻物 モヨ子は復活した?

7.30
なるほど〜〜 お前の仕業だったか〜〜 雨の中、死体を掘り起こす描写がシンプルにうまい
さすがに小夜の言動は身勝手すぎない? シナリオの都合に踊らされてしまっていてかわいそう

伊月の独白うまいな〜 神社の境内の境界線=鳥居(と、雨に当たる傘の下の境界線)をうまく使って悲劇を演出している

そして初シーン。神聖な領域を侵すこと。生霊の肉体性を確かめる行為
っていうか今更だけど現在の伊月とは境内(鳥居の内側)でしか会っていなかったのか。過去回想では学校や自室のシーンとかあるから巧妙に撹乱してたんだな。神社そのものとしての少女 手すりが設置されたのもこれが原因かーい!

双子の入れ替わりトリックをミスリードに使っている

!?!? 双子の娘の判別がつかない父親。そりゃあ病むわ
ややこしいな…… やはり部分的には双子の入れ替わりだったが、しかし目の前にいるこの少女が伊月であることは変わりなく、霊体であることも変わりなく、ただ生霊と死霊のミスリードがあった、と。

神社と対になる空間としての病院。宗教と科学、古代と近代、ファンタジーとリアル。とすると、病院が「駅の裏側」らしいから、村全体の地理もまた考察の対象となるだろう。地図がほしい。駅・線路こそがその境界線か?

〈これ以降、日付が表示されていない〉 ←解釈を誘う……

うわ〜〜 ここで父娘の関係にまで主人公がしれっと踏み込んでいくのか。中也の回収の仕方が憎いな…… 眠ったきりのもう一人の娘を置いていくのかクソ親父、とは思うが。
巻物の蘇生効果の真偽(非リアリズムか否か)は宙吊りにするのか。それも憎いな〜

ひとりの男に振り回されて破滅する姉妹を描いてきて、最後の最後に、その男=主人公の、ふたりからひとりを選ぶこと(「愛」に優劣をつけること)の残酷さの自覚に焦点を当てる。どちらかが生きているならばもう片方は死んでいることが決定する。排中律。論理の世界(病院)が幻想の世界(神社)を侵食し、彼はまた神社の境内へと還る。

!!! 生者のほうがよほど非現実的な輪郭を帯びる逆光仰角構図のスチル。(≠立ち絵)
かつての彰のひょうきんな言動までをも回収して来やがった!

花輪と押し花。あの頃で記憶が止まっている眠り姫。
ラストは回想。伊月からの手紙。果たされなかった約束と、果たされた約束──




・第1章の感想

おわり!!! いやぁ〜〜〜 よく出来てた話だった……
幽霊ヒロインとか、双子両方に愛されて姉妹仲を破滅させてしまう男主人公ハーレムとか、劣悪な家庭環境(毒親どころではない親)とか、双子入れ替わりギミックとか、各要素はエロゲのテンプレートなんだけど、それらを掛け合わせて、それほど壮大ではない、巧みによくまとまった中小規模シナリオとして完成度が凄かった。


夏の田舎モノだけど、「神社」をここまで主題として扱ったエロゲは初めてだったので、その点でもっとも興奮した。石段・鳥居・境内・社・社の裏の池・森の先の高台──神社のなかでもこれらの要素をちゃんと分解して、それぞれ物語/演出に組み込んでいるのが素晴らしい。幽霊ヒロインというのも、単にそれだけだったら苦手だけど、ここまでしっかり神社を描きこんでくれた上で、その象徴としてデザインされているキャラクターなので認めざるをえない。


常盤村のなかで神社と対になる病院の存在もよかった。双子の姉妹の対比とオーバーラップしている。また、信仰と科学、ファンタジーとリアル、不条理と条理……などの対比をも象徴しており、その意味が、2人のヒロインのうちどちらかしか愛せない、というエロゲ的三角関係における排中律(此岸の論理)にまで到達するのがすごい。主人公・彰は此岸にいる。



そして、最後に眠りから目覚めた "生きている" 小夜の立ち絵を出さずに、あの仰角で逆光の構図の、幻想的な輪郭をつけたスチルでのみ登場させたという生者と死者の逆説演出もめちゃくちゃ気が効いている。ノベルゲームにおける「立ち絵」と「スチル」の関係を、生と死の鏡像=双子ヒロインに割り振ってシナリオを構築するアイデアと手腕よ!

結局、双子から愛されて、仲を壊して物騒なことになってもなんやかんやで両方とHできるように仕組まれた話じゃん!キモ!というのはあるが、しかしラストで彰が小夜に背を向けて石段を下っていったのが、彼なりの決意の現れとして評価できるだろう。

ようするに、死者(幽霊)とエッチして生者とはエッチしない(できない)物語ということで、エロゲのHシーンにおける肉体・肉感のリアリティと、キャラクターの虚構性にかんするかなり批評的なシナリオだと思う。


現在時制と過去時制(何年前なのかはわからない)の話を行ったり来たりして、次第に過去に起きた悲劇と、現在の真相が明らかになり繋がっていく──というシナリオ構成で、ふたつの時制の切り替えはやや唐突であったり不親切であったりする面はあったが、最終的には、この構成で物語る必然性が納得できた。現在の伊月とは実は境内でしか会っていない、という重要事を目立たなくするための過去回想がうまい。

死んで埋葬した猫が謎の巻物によって生き返って土から抜け出している!?と見せかけて普通に人が掘り返していたくだりは、自分好みの「非リアリズムかと思ったらリアリズムだった」展開で興奮したが、結局ヒロインは幽霊だったので非リアリズム要素はガッツリある、という何重ものひっくり返し。幽霊が死霊か生霊か、というところまでバタバタするのは笑ってしまいもするが。

そして、肝心の謎の巻物の真偽に関してはいくつかの匂わせやヒントは提示するものの、決定的な説明を排して宙吊りのままに留める塩梅もおしゃれでいい。これは逃げではなく技だろう。ファンタジーとリアルが、すなわち神社と病院が駅(線路)を隔てた両側に存在してこその「田舎」なのだから。本章のラストシーンは回想内で主人公が「電車でこの村を離れる」場面であったことを見よ──。


双子姉妹に愛される男子主人公の三角関係ハーレムと、姉妹関係(嫉妬しあい憎しみあいながらも愛しあうふたり)、それからヒロインの親子関係(特に父娘関係)という3つの人間関係を扱っていて、ごちゃごちゃしそうになるところを上手く捌き切っている。春日狂想というエロゲ界で使い古された(といってもサクラノ詩より古い作品だが)モチーフを用いて、これらの関係を繋いでいる。このくらい見事な使い方なら許す。


シナリオの質しか褒めてないけど、テキストの質も相当に高い。それほど装飾的ではないし、丸戸のように「上手いこと」を言おうとするのでもない、もう少し正統派な文体で、情景や動作、場面の描写が見事だった。雨中に猫の死骸を掘り返す場面とか、ヒロインの病み気味な心情とか、それから「夏」の「田舎」の情景とかの描写はたしかにこの物語の完成度を根底から支えていた。
男子主人公のいかにもエロゲといったギャグ描写は滑ってんなーと鼻白んでいたが、それさえも最終的には、彼の過去と現在の差異を描くという意義があったことが明らかになる。


全体的に、泣かされるとか感動するとかは特にないし、すげぇ魅力的なキャラクターがいたわけでもないけど、ひたすらに、シナリオと文章の巧みさに感心させられた。およそ4時間30分くらいのボリュームの短編として傑作のシナリオだったんじゃないでしょうか。批評空間基準で点数つけるなら83くらいかな。


ところで、プロローグとは語り手・主人公が異なるけれど、もしかして1章ごとに主人公が入れ替わるオムニバス形式なのか? 黒髪メガネのお姉さんとか、鈴つき帽子の少女とか、黒髪長髪ボロボロ服お姉さんとか、明らかにこの後の章の重要人物が顔見せ的に登場してはいた。

立ち絵とスチルの使い分けについて言及したけど、ADV形式(メッセージウィンドウ形式)と全画面ビジュアルノベル形式の使い分けについても気になるところ。前者はプロローグで、後者は本編第1章(とプロローグの最後の一部)で用いられており、この文章表示形式の違いもまた本作の理解には必須だろう。楽しみだ~~~


~感想メモおわり~



はじめの章から、めちゃくちゃ良質な夏の田舎シナリオでした……… 暫定・マイ・ベスト・神社ゲーです。

久しぶりに腰を据えて真剣にエロゲを "読む" という行為をやったのですが、やっぱすげえ楽しいですね、面白いエロゲを真面目にやるというのは。なにごとにも代えがたい極上の遊び、という感じがします……。わたしのエロゲ筋、まだまだ衰えてなかった!! これからも鍛えていきたいです。


それじゃあ次の章の感想メモでお会いしましょう~~~
めんどくなってふつうに挫折する可能性もあるよ!!!

 → 続きました





「夏はエロゲ」と同じくらい、「夏はサマレコ」でもありますよ、当然。

ここ一ヵ月くらいは通勤時に「少年ブレイブ」「アイラ」「真夏と少年の天ノ川戦争」を鬼リピしてます





【~これまでのエロゲ感想note~】


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