絶対に目を開けてはいけない
マロリーは、眼の前にいる二人の子どもたちに「絶対に目隠しを取らないように」ときつく言い聞かせ、そして共々ボートで川下りを始めた。5年前に世界中で起きた「集団自殺現象」。その「原因」に囚われないよう、そして生き延びるため。
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三幕構成
実際の作品長は2:04:00。各幕の目安時間は
* プロットポイント1 / 37:30
* ピンチポイント1 / 50:40
* ミッドポイント / 1:05:30
* ピンチポイント2 / 1:20:00
* プロットポイント2 / 1:38:30
【第1幕】:紹介フェーズ
マロリーが置かれている状況の説明、そしてマロリーという女性の性格の提示。川下り前のキツイ発声からの、直後の「人を愛することを拒む性格」を示すエピソードで、マロリーと子供たちとの間の距離を勘違いさせている。
他にも、様々な登場人物とその性格が、事件への対応の様子から、説明されている。
プロットポイント1:物語の始まり
食料がなくなる。ただ、安全なところにいればいいのではなく、外に出て、食料を探す必要がでてきてしまった。
この物語は、「なにか」と戦うのが目的ではなく、その「なにか」のせいで生じる諸問題に対して、どう対応をとっていくか、というものになる。
【第2幕前半】:事件に振り回されるフェーズ
スーパーマーケットに関するやりとりの話。今までは漠然と「外を見たら死ぬ」と思われていたが、車の衝突防止センサーが「なにか」に反応することで「幻覚や伝染病とかではない」ことが明確になる。そして、川下りのカットででてきた「自殺しない人間」がどういう人間なのかがわかる。
ピンチポイント1:主人公が危険にさらされる
チャーリーの死。「なにか」を見ても自殺を選ばない人間の存在と、それが「精神的に問題がある人」であることがわかる。そして「おかしい人」が発症すると(「なにか」を見せようとすると)、近くの鳥が暴れだすこともわかる。
ミッドポイント:物語が転じ、主人公が逃げられなくなる
ゲイリー登場。これ自体は、主人公に気づきや新しい選択させないのだけど、状況が再び一転する。スキンヘッドのダグラスを拘束(監禁)する選択肢をとったところが、主人公にとっての転機になっている?
「主人公が逃げられなくなる」という意味では、破水、出産のところがミッドポイントであるようにも感じるが、妊婦の状態でも逃げられないことに変わりはないし、多分違うだろうな。
【第2幕後半】:反転攻勢
食糧問題以外で、基本安定していた生活が、一転、生きるための行動に出る必要がでてくる。新入りの承認、出産、そして壊滅。子どもたちには、生き残るための方法を教えなければいけなくなる。
ピンチポイント2:主人公が危険にさらされる
ミッドポイントあたりで新しく登場した男性ゲイリーが、共同生活をしている人たちに、外を見せようとする。ガールの母親はまっさきにその被害を受け、他の生き残りたちも順番に自殺に追い込まれる。
プロットポイント2:主人公の主張が負ける
二人の子供の「父親」となっていた男性トムの死。マロリーは、生きるため、川下りを決意する。
【第3幕】:生還のための葛藤フェーズ
川下りの最難関を越えようとする。
カタルシス
無事に「生きられる場所」にたどり着く。
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所感
Facebookのタイムラインに「面白くない」と言われてたので、逆に興味が出て観てみたのだが、俺の評価としては、結構面白いなぁ、という感じ。
ただ、ストーリー自体はあまり大きく動いているようには見えにくい。ミッドポイントあたりから、「なにか」と戦い始めればわかりやすいが、その手法は取らない。あくまで「なにか」に脅かされ続ける。川下りの様子を第3幕にまとめず、ところどころで提示したのは、マロリーたちがなぜ川下りをしているのかに興味をもたせることで、ストーリーへの関心を強めるためだろう。また、この事件の原因や解決策が終わってもその正体はわからないまま。発生源も。続編を持たない作品でこの終わり方は人によっては評価しにくい点かもしれない。
突っ込みどころが多い、というのはまぁ事実なのだけれども、思っていたほどではないな、と。え、なんでこんな設定にしたん? って思うところがままでてくるが、もちろん第3幕のため。たとえば、妊婦が二人も同じ場所にいるなんておかしいでしょ。でも、だからこそ、激流でのカットが作れる。んで、あのカットがなんで必要なのかというと、第1幕で「他人を愛せない」マロリーが、「血の繋がっていないガールを含めて、その生命を守る選択をする」という、キャラクターアークを描いているから。他にも、なんで目隠しで川下れるんや、とか、いろいろあるのは事実だけど、映画見てそこに突っ込み入れるのむしろどうなの。
この作品のテーマは愛を嫌うものが愛に目覚める話か。葛藤は生存だけど、もう一つ、出産を控えて「人を愛することへの恐怖」に対する葛藤もありそう。
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