はい、私が大福の子です〜第一子出産記〜
私は、食い意地が張っている。
というか、お腹が空いた時に食べるものがないのが不安なのである。
例えば会議などで部屋にカンヅメになる時、念のためのおやつを色々買ってしまう。
別にたくさん食べたい訳ではなく、もし足りなかったら、その時の気分に合わなかったら…と不安で、あれやこれやと買い込んでは、またやっちゃったなーと思うのである。
一人目を出産する時のこと。
そろそろ入院の準備を始めましょうかという時期に助産師さん言われた。
途中でパワー切れになるといけないから、分娩室に持って入るカバンにチョコとか入れとくといいよ!と。
分娩室。
一度入ったら生まれるまで出られない、というか、買い物なんてとても行けない状態の時に入る場所。
私は大変な不安に駆られた。
チョコだけだと、もし出産が長引いた時に足りないかもしれない。
チョコとは別に、しっかりパワーのつく腹持ちがよいものを入れておきたい。なんだろうなんだろう…と考えながらコンビニをウロウロしていたら目に飛び込んできた。
そう、大福。
お餅で腹持ち、餡子で糖分。最強ではないか!出産に向けてハイになっていた私は、チョコと一緒に大福をカバンに忍ばせた。
いよいよ陣痛がきた。
夜8時頃に病院に向かったけれど、赤ちゃんの向きがイマイチとかで、なかなかすんなり進まない。
助産師さんには、初産だしこんなものよー順調順調!と言われたけど、なんせ痛いし早く終わらせたいと思いつつ(居眠りする夫にイライラしつつ)、時間はどんどん過ぎてゆき、そのまま朝を迎えた。
助産師さんには、よし7時までに産もうがんばろう!と言われたが、陣痛に呻きつつふと時計を見たらもう8時前。どこまでがんばればいいのかもうわからない…そしてお腹も空いてきた…。
さて、ご存知の方が多いかと思うが、陣痛というのは波がある(10分間隔とか言うあれですね)。
痛い時はめっちゃ痛いけど、痛い波が過ぎると割と普通。ふつーうに談笑とかできちゃう感じ(個人差あると思いますが、私の場合はそうでした)。
出産が近づくと、めっちゃ痛い!がめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃめっちゃ痛い!!!!!になり、痛みの間隔が5分ごと、3分ごと…と、どんどん短くなってくる。
朝8時過ぎ、既に私の陣痛は1分間隔くらいだったと思うが、痛みの波が治ると、空腹が気になって仕方ない。このままだと出産の時に力が入りそうにない。
私は助産師さんに声をかけた。
すいません、次の波が過ぎたらチョコ食べたいです、カバンに入ってます、と。
分娩台で足をぱっかーん!と開いたまま、いよいよ生まれるぞ!という状況で何かを食べたがる人は少ないのだろう。
助産師さんはちょっとびっくりした顔で、お!食べられるの?すごいね!と言いながら私のカバンをガサガサと探り、分娩室にいたもう一人の助産師さんと先生に向けて言った。
うわー、分娩室に大福持ってきた人初めて見たー!
は、恥ずかしい…!!!
私は弱々しい声で、おもちだからパワーつくかなっておもって…と言い訳がましく呟き、陣痛の波の合間に高速でチョコを2つ食べたあと、無事に娘を産み落とした。
助産師さん達は、おめでとうよくがんばったね!と言った後、いやー大福にはびっくりしたわ!と大笑いしていた。
後日新生児室に行くと、色んなスタッフさんから「あ、あなたが大福の子??」と聞かれた。
色んな人から言われるので、段々と、あ…と言われたら「はい、私が大福の子です!」と自ら名乗るようになった。
言われるより言うほうが恥ずかしさがマシな気がしたけど、今思えば大した変わりはない。
なお、出産後お腹ペコペコだった私は、病室に移動した後なかなか来ない朝ごはんを待ちながら、夫と母と義母が「どこの喫茶店にモーニング食べに行く??」と和気藹々と相談している横で、もそもそと大福を食べたのであった。
大変、大変おいしかった。
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