【kdl2】ディテールの暴走
こんにちは。B4のすさです。今回は、東京理科大学の西田研究室にお邪魔させていただきました。西田研究室では、コロナ禍で外でのプロジェクトが難しいため、研究室内の内装をDIYするプロジェクトが行われました。そこで、kdl2のメンバーで西田研究室に訪問し、お話を伺いしてきました。
1.西田研のプロジェクト
西田研のプロジェクトは大きくキッチン、テーブル、天井、棚、傘立てに分かれていてどれも魅力的でおしゃれでした。conceptはあえて決めず、それぞれの家具が、作る過程で他の家具と関係しあって出来上がるというものでした。例えば、天井をはがしそこに使われていた鉄骨を、天井に再利用するだけでなく傘立てに利用したり、キッチンのごみ箱と収納棚を同じ引き出し式で設計したり…。さらに、もともと研究室内にあった机を解体し、それぞれの家具に部分的に用いることで研究室内に一体感が出来ていました。なんだかkdl2のconcept【履歴】と似ています。
西田研究室のプロジェクトについてはこちらから↓
kdl2のconceptについてはこちらから↓
2.ディティールの暴走を許容する
この写真は西田研のキッチンの写真です。とてもお洒落で学生が作ったとは思えないほどです。が、よく見てみると、、、
キッチンのシンク内までモルタルが侵食していました。これは施工の際、キッチンの天板に塗ったモルタルが偶然シンクに流れ込んでしまいできたそうです。これを門脇先生は「ディティールの暴走」と表現されました。
「ディティールの暴走」とはつまり、設計段階で考えていたことが実際に施工してみることで、思ってもみなかった形や色に材料が変化するということです。
西田研では、このディティールの暴走を許容することで、設計者の意図を超えた新しいデザインが生み出されていて、とても魅力的でした。さらにこのディティールの暴走を積極的に許容していくことで、より魅力的で斬新なデザインが生み出されていきそうです。
3.ディティールの暴走を修正する
これに対して、門脇研ではディティールの暴走が起こらないようにその都度設計に修正を加えて施工しています。そのため、「やってみたらデザインが大きく変わってしまった!」といったことはあまりなく、今までの家具はほぼ設計者の意図通りに出来上がっています。
kdl2でも、作る家具に最適なスケールや材料を選定し、さらにそれを一つ一つモックアップするといった作業を悶々と繰り返してきました。そうすることで最適な材料や施工方法を見つけることができ、それに基づいて設計を修正することで、‟空間”や‟履歴として使う材料”に最適な家具作りが行われています。
ディティールの暴走を修正していくことで、門脇研では洗練された、精美な家具デザインが生み出されていてこちらも魅力的です。
4.乾式と湿式
デザインの違いは、他にも湿式か乾式かという点にも表れていました。門脇研では湿式より乾式を好む傾向があり、これは解体時の部材の再利用を考えてのことです。それに対して、西田研ではエポキシ樹脂のテーブルやモルタルのテーブルなど、湿式に対してポジティブな視点を持っていました。
私たちも乾式にこだわりすぎるのではなく、湿式も視野に入れることでより柔軟で精美なデザインを生み出していけるかもしれません。
kdl2ではkitのアップデートで湿式に挑戦していきます。ぜひお楽しみに。
kdl2全体の配置計画やkitについてはこちらから↓
5.まとめ
このように、同じようなconceptを持った研究室のリノベプロジェクトでも読み解いていくとそれぞれの研究室の色が出ていることが分かりました。先生のキャラクターによるものなのか、工期の違いによるものなのか、とても興味深いです。
今回西田研を訪問して学んだことはズバリ!
「手を動かしながら材料と共に考える」。
西田研では湿式にポジティブな姿勢や工期の短さからディティールの暴走を許容せざるを得なかったという実態がありながら、結果としてそれが魅力的な研究室デザインを作り出していました。
建築では、西田研のように「手を動かしながら考え、さらにモノとヒトがコミュニケーションをとることで新たなデザインへと昇華していく」、そういったことも時には必要なのではないでしょうか。