25歳【#2000字のドラマ】
主人公・滝沢陸(25)
何のために生きているか、わからなくなることが増えた。アンパンマンの歌で、そんなような歌詞があるけど、まさにその通りだなと思いつつ、今俺はゴミを集めている。
※ゴミ捨て場
先輩「おい滝沢!何ボーッとしてんだよ、行くぞ!」
滝沢「っはい、、」
恐らくゴミ収集の人は子供からしたら何でその仕事やってるのランキング上位だと思う。
何故俺がこの仕事をしているか、それは就活の時に手当たり次第受けまくった結果、内定を貰えたのがここだけだったから。ただそれだけ。
※休憩室
田崎健吾(35)「滝沢、お前今日も怒られてたな笑」
滝沢「イジるのやめてくださいよ笑」
田崎「あいつ自分は陰でサボってるくせに、人には厳しいだよな」
滝沢「ほんとそうですよね、あーゆう大人にはなりたくないですねー、、。僕昼飯買ってきます」
田崎「あ、ちょっと待て、これ」
滝沢にコンビニのポイントカードを差し出す田崎
滝沢「あ、はい、」
先輩の田崎さんはドが付くほどのケチで有名だった。いつも俺がコンビニに行く時に、自分のポイントカードを渡してくる。
こーゆう大人にはなりたくないなと内心思っていた。
大きな口でおにぎりを食べている田崎
何も考えずお気楽そうに生きている田崎さんに無性に腹がたった。
※夜帰り道
ゴミを集め出してから3年。世間ではよく3年は働けと言われる。その言葉通り3年は働き続け辞める人が多いけど、あれは3年間働いたから辞めるのではなく、特に変わらぬ日常に嫌気がさし辞めたくなるのが、ちょうど3年だからだと思う。
その時すれ違う女性
あかり(25)「陸?!」
滝沢「え?あかり?!」
※居酒屋
あかり「ほんと久しぶりだよね!?私達が別れてから会っていなかったから3年ぶりぐらい?」
滝沢「そーだな〜、もうそんぐらいになるか〜」
あかり「陸彼女とかはいるの?」
笑顔であかりが聞く
滝沢「いないよ笑もう3年もいない笑」
あかり「それって私と別れてから1人もいないってこと!?笑」
滝沢「おん」
あかり「かわいそう〜、まぁでも陸を好きになるような子って相当変わりもんだもんね、3年はむしろ短い方かも」
滝沢「うるせー笑、だったら自分も変わり者だろ笑、そーゆーあかりはどうなの?彼氏いんの?」
あかり「彼氏はいないけど、旦那ならいるよ」
一瞬固まる滝沢
滝沢「そ、そうだったんだ!良かったじゃん、おめでとう」
あかり「ありがとう」
照れ笑いするあかり、動揺している滝沢
※居酒屋外
あかり「いやー久しぶりに会えって楽しかったよ!」
滝沢「お前がそんなにお酒強くなってたなんて、この3年で変わるもんだな」
あかり「そりゃ社会人にもなればお酒を飲まないとやってられないわよ、そしたら酒豪になっちゃった笑」
滝沢「お前も大人になったな」
あかり「陸が変わらなすぎるだけだよ」
少し沈黙する2人
あかり「陸も早く良い人見つけなよ!そんじゃっ」
手を振り別れるあかりと滝沢
※自宅のベッド
滝沢横になっている
この数年でみんな大人になってる。20代にとっては当たり前のことなんだけど、なんだか切なくなった。昔は友達に彼女が出来た時や、就活で内定を貰えた時とか他人の幸せが素直に嬉しかった。でも今は他人の幸せが素直に喜べなくなっていた。他人を思いやる余裕が無くなっているのだと思う。ゴミを回収する自分がゴミみたいになっていくのが辛かった
ため息を吐く滝沢の目は少し潤んでいた
※仕事終わりコンビニ
田崎「お前今日はいつもに増して怒られてたな笑」
滝沢「…」
田崎「あれ?落ち込んじゃってる感じ?まぁあんなに怒鳴られたらそーなるわな」
会計の時、滝沢のコーヒーを奪い取り一緒に会計をする田崎
滝沢「え?」
驚く滝沢
田崎「そんなに驚くなよ笑」
滝沢「だって田崎さん、今までジュース一本だって奢ってくれたことないじゃないですか!
飲みに行っても1円単位で割り勘だし、あのドケチな田崎さんが、、いいんですか?」
田崎「いいに決まってるだろ、可愛い後輩が落ち込んでるんだから」
たかがコーヒー1本だったけど、生きる意味がわからなくなり他人の幸せを喜べなくなっている自分にとって、落ち込んでいる後輩にコーヒーを買ってあげるドケチな田崎さんに少し痺れた。ほんの些細な事だけど今のままじゃダメだと思えた。
田崎「このポイントで払えます?」
店員にポイントカードを差し出す田崎
滝沢「ポイントかい」
微笑む滝沢
#2000字のドラマ #若者の日常
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