シリーズA【5億円調達】シード〜シリーズAのマーケティング戦略を大公開
こんにちは、不動産・建築VerticalオールインワンSaaS「PICKFORM」を提供するPICKで執行役員CROをしている阿部です。
この度、PICKはシリーズAラウンドにて、累計5億円の資金調達を実施いたしました。
プレスリリースでも触れている通り、今後2年で7つのプロダクト開発を行っていきます。
この記事では、「PICKがシード〜シリーズAまでどのような戦略でやってきたのか」「今後のPICKがなぜ面白いのか」の2軸で記載したいと思います。
簡単な自己紹介
現場監督×marketing×セールスのキャリア
新卒でハウスメーカーの一条工務店に入社し、注文住宅の現場監督を経験後、マーケティングリサーチ会社のマクロミルに転職し、セールスのプレイングマネージャーとして様々なデータを活用したマーケティング戦略の支援に従事してきました。
マクロミルで在籍した8年半の内、FMCG領域※の担当が3年程と長く、某大手アルコールメーカーの新商品開発のサポートや、広告の効果検証などに携わりました。
その後、株式会社プレイドにてCXプラットフォーム「KARTE」のセールスとカスタマーサクセスに従事しました。その後、2022年5月にPICKに参画し、ビジネス部門(マーケ・sales・CS)の管轄をしております。
※Fast Moving Consumer Goodsの略で、消費者向けの製品(日用消費財)のこと
近い業界から見えた不動産業界の課題、異業界で身につけた今に活きるスキル
新卒で建築業界に足を踏み入れ、そのあとまったく別の業界に転職しました。
新卒ではハウスメーカーの現場監督をしていました。小さいころから建築物が好きで、友達の自宅や街の建造物を見ることが好きで、家を建てる仕事につけたことはとても幸せでした。社会人生活の中で、自分の住む家や、投資用不動産の購入をする機会がありましたが、そこで、良い経験をしなかったんです。売り手と買い手の間に生じる圧倒的な情報の非対称性を、実体験として経験をし、そこから不動産業界へ関心を持ち始めました。
その後、マーケティングリサーチ会社であるマクロミルに転職しました。マクロミルでは、大手企業を担当し、クライアントの黒子として新商品やサービスの立ち上げをサポートしてきました。”ユーザーの声をクライアントに届けサービスを良くしていく”仕事をしていたため、「顧客視点」がこの時期に強く身についたのと同時に、マーケティングの本質的な考え方を学びました。私の仕事の基礎になっている部分です。
その後、CXプラットフォーム「KARTE」を提供するプレイドに移り、セールスとカスタマーサクセスに従事しました。IPOをした勢いのあるSaaS企業に身を置けたのは大きく役立っています。また、組織として常に高みを目指す姿勢や、一見非効率的な仕事の中に事業成長の余白を見つけるカルチャーの経験は今の自分に繋がっています。例えば、PICKの採用最終面接は必ず対面で行っていますが、全てをオンラインで完結する企業も多い中、そのような”余白”は今でも大切にしている部分です。
その後、PICKにジョインしました。
※PICKに入社した経緯などはこちらのnoteを参照ください。
PICKは何をやっている会社なのか
成長中の不動産・建築業界に特化したSaaS企業
端的に言うと「不動産・建築業界に特化したSaaS企業」です。
PICKは不動産・建築プラットフォーム「PICKFORM」を開発・運営・提供しています。
いわゆるVertical SaaSと言われるビジネスモデルに分類される企業になるかと思いますが、不動産・建設(建築・土木)は合わせると約100兆円の市場規模になりますので、業界特化といえどもポテンシャルは大きいです。
我々はこの業界のあらゆる業務フローを効率化して、PURPOSEである「住を豊かに」の実現を目指しています。
2024年8月現在で、社員は約20名です。徐々に人数も増えてきており、ビジネスチームでは私含めて7名在籍しております。現在はコンスタントに毎月のように新しい仲間が増えておりジワジワと成長してきています。
ビジネスチームでは、リード獲得からアポイント獲得、商談での受注から、導入後のオンボーディング〜カスタマーサクセス・サポートと幅広い領域を対応しています。
PICKの特徴
圧倒的な現場感覚とテクノロジーの両方を持つ強み
業界の魅力というより、業界を変えていくことに仕事としての魅力があります。確かに不動産テックや建築テック企業は増えていますが、市場が巨大なため、それぞれ得意のセグメントで強みを活かして共に成長している市場になっていると思います。
その中でも、PICKは業界出身者が多いのが強みです。クライアントの課題を正確に抽出し、精度の高い仮説が立てられるのはPICKだからこそかと。
現場感覚があるため商談が進みやすく、そこでエンジニアやデザイナーと相談しながら効果的なアプローチを検討します。
SaaS企業出身のメンバーの仕組みづくりのスキルも生かされてきますね。この過程が驚くほどスピーディで、例えば商談中にクライアントから上がった要望を、私がその場でSlackで開発チームに相談して、商談が終わるころには実装が完了していたこともあります。
社内では「biz×devサイクル」と呼んでいますが、bizチームとdevチームが連携して、価値探索しながらアジャイルで価値提供していくのがPICKのスタイルです。
もちろん業界出身者ではない方も多く在籍しており、それぞれに強みがあって、スキルや知見を持ち寄りながら、同じゴールを目指しています。お互いリスペクトすることで日々シナジーが生まれている、PICKはそんな会社かと思います。
シード期〜シリーズAまでの戦い方
セグメントの領域の整理によりリソースの最適化
不動産・建築といっても前章で上述した通り、セグメントが多数存在します。
セグメントは弊社の中で以下のように分解しており、EnterpriseとSMBの軸も入れると14セグメントで構成されています。
まさにVerticalの中にVerticalがある構造です。
比較的、不動産テック企業では「仲介」の領域をメインに展開している企業が多いですが、PICKでは「不動産と建築は地続きである」と捉えており、切り離して考えてはいけないというスタンスです。
そういう意味では一部のセグメントの業者のみへの提供ではなく、売買仲介・買取再販・注文住宅・賃貸管理・新築直販・販売代理・リフォーム等のほぼ全ての業態に対応しております。(その中で優先度はつけています)
不動産と建築が地続きであることがわかる図
例えば、注文住宅の場合にはイメージしやすいかもしれませんが、不動産屋経由で土地を購入(不動産売買契約)して、そこに建築を依頼するハウスメーカーを選定・相談しながら(請負契約)プランを作り、建築するのが一般的です。
不動産の契約をして、建築の契約をします。中古マンションの購入などでも、物件を購入してリノベーション、もしくは業者がリノベーションして販売するケースも多くあるので同様です。
そうした市場において、以下の図の通り、不動産と建築は益々切り離せなくなり、地続きの産業となります。
限られたリソースを「契約領域」に投下し、ターゲット設定やインサイトの設計をベースにアプローチ
記載の通り、PICKのようなシード〜シリーズAのフェーズの企業は当然ですが、知名度もなければお金もありません。
PICKでは、2022年5月の宅建業法改正により不動産取引でも電子契約が解禁されたこともあり、「電子契約」のサービスから市場に参入しています。
不動産の電子契約においては、国土交通省が発表した全60ページに渡るマニュアルを理解し、適法な電子契約の運用ができなければ、業法違反になってしまう危険性があります。
しかし、この辺りは新しい法律で解釈も難しく、あまり不動産業者・建設業者の方々も詳しい部分までルールを把握している方が少ないのが実態です。
PICKFORMは国内で唯一国土交通大臣より適法である旨の回答を取得しているサービスであり、社内で特別なオペレーションを構築せずとも業法違反にならず”適法に”利用できるのが特徴です。
PICKでは、2024年8月の現時点でプロダクトが合計3つ存在しますが、プロダクト毎にターゲット定義、訴求する価値などをしっかりと設計してからリリースをしています。
途中、仮説検証を繰り返し、多少のターゲットセグメントの優先度を変更しましたが、社内で精度の高い仮説を高速で検証して、サービスを世の中に出していけることは大きな強みです。
センターピンの考え方
まず、ビジネスをしていく上で”「センターピン」は何か”という視点で整理を行います。
元ヤフー社長でBoost Capitalの創業者である小澤隆生氏も、「事業のコア(センターピン)を見極める力」が重要と仰っています。
顧客セグメントによって考え方は変わってきますが、例えば「建売・ビルダー」セグメントの場合にPICKはセンターピンを「売主」と捉えています。
理由としては、「売主」は上記のように多くの物件や土地を保有し、新築物件を建て、付加価値をつけて販売していきます。その際、不動産取引における関係性として、一般的には「その物件が欲しい!」という構造のため、買主や仲介業者よりも売主の方が立場が強くなることが多いです。
そのため、売主が契約の主導権を握ることが一般的には多く、センターピンを「売主」として設定するのは必然の流れでした。特にバイラル効果の見込める物件の保有数の多いEnterprise企業に対してアプローチを始めました。
電子契約におけるマーケティング戦略
前の章で記載の通り、PICKではプロダクト毎にターゲット定義、訴求する価値などをしっかりと設計してからリリースをしています。
フレームワークとしては、主にはSTP分析とクリエイティブブリーフをメインに活用しています。
STP分析
STPとは、Segmentation(セグメンテーション)Targeting(ターゲティング)Positioning(ポジショニング)の頭文字をとったものです。
ちなみにSTPで重要なのは、ポジショニングが決まるなら、セグメンテーションやターゲティングは不要。セグメンテーションは、ターゲティングのための手段。ターゲティングは、ポジショニングのための手段。この前提理解がないとS→T→Pの順番に整理する作業になってしまいます。
PICKの場合は、既に記載の通り、電子契約においてはセンターピンが「売主かつ直販ではない(仲介を挟む)」という部分が明確で、絞り込むことができていたため、Segmentationの軸はシンプルに企業規模で切って整理しました。
上記の図が利用しているフォーマットですが、横軸に「ターゲットセグメント」「サービス決裁者」「サービス利用者」、縦軸に各ターゲットセグメントの「Who」と「What」を整理します。Whoは想定しているターゲットはどんな人なのか、Whatは想定ターゲットの課題が何でそのベネフィットは何なのか、を整理していきます。
Enterpriseになればなるほど「サービス決裁者」と「サービス利用者」が異なるので分けて整理する必要があります。
PICKの場合は、電子契約においては取引で一番バイラル効果があるのはEnterpriseで間違いなかったため、コアターゲットをEnterpriseに設定しました。
クリエイティブブリーフ
続けて、クリエイティブブリーフです。
今回は「PICKFORM 電子契約」のサービスサイトを作成した時を前提にクリエイティブブリーフの一部を紹介します。
https://www.pick-form.com/
クリエイティブブリーフにある項目は大きく以下の8つです。
・クリエイティブ名
・クリエイティブの目的
・ターゲット(Who)
・キーメッセージ
・RTB(Reason To Believe:信じられる理由)
・期待する態度変容(LPに来る前と来た後のパーセプション)
・トンマナ
・コンシューマーインサイト
一つ一つの詳細は割愛しますが、個人的に上記の中で特に大事なのは「ターゲット」「RTB」「期待する態度変容」「コンシューマーインサイト」です。この4つの設定次第で、キーメッセージの質などが大きく変わってきます。
「PICKFORM 電子契約」においては、この4つの項目を以下のように設定しました。
ポイントとしては、「電子契約」というカテゴリで入ってくるユーザーが圧倒的に多いのに対して、「不動産取引においては守らないといけないルールが多く普通の電子契約では業法違反の可能性がありそう」と思ってもらう設計にして、ユーザーの”カテゴリをずらす”ことを意識しました。
これが「期待する態度変容」「コンシューマーインサイト」から来ている狙いです。
また、RTBでは「PICKFORMは国内で唯一国土交通大臣より適法に利用できるサービス」といった強力なRTBがありますのでそこをうまく絡めた設計にしました。
これがキーメッセージの「不動産取引を適法に」に繋がっています。
「不動産取引を適法に」という言葉を目にしたターゲットユーザーに対して、「ん?適法ということは違法になることあるの?」という思考に変換させる狙いがあります。
このメッセージに変えてから、当然サービス資料もそのような設計にして、セールス全員が同じ認識を持って商談を行なっています。
コンペになることは多々ありましたが、正直一部例外を除いては競合とのコンペに負けない状態を作ることができました。
もちろん、最初からうまくいっていた訳ではないですが、徐々にブラッシュアップしながら、RTBを強化していき、今の形に変化していきました。
フェーズごとにやってきたことも変わってきているため、今回のnoteでは詳細は省きますが、記載するとこんな感じでした。
【初期フェーズ】とにかくがむしゃらにアプローチし、顧客の解像度を上げる
【シード調達後】 ターゲットが絞れてきたところで「クリエイティブブリーフ」のブラッシュアップを行いマーケ施策をスピード重視で実施
【シリーズA】電子契約単体での勝ちパターンは確立され、マルチプロダクトで多角的に顧客層を絞ったアプローチを開始
フェーズごとで山の登り方が異なり、今振り返ってもこの2年間は本当にいろんなことを経験したと感じます。
マーケティング戦術について
先ほどの画像のWho→Whatの後にくる「How(どのように)」も、フェーズによって施策の優先度やリソース配分は変えていきましたが、以下のように各施策に優先度をつけながら、どの程度の商談を獲得していくのかの整理をした上で、施策ごとの仮説検証を繰り返していきました。
不動産・建築といったウェットな業界だからこそ、ゴルフ・釣り・バイク・会食・・・なども戦略的にかなり意識をしており、一見すると効率的でないように見えることも「非合理の合理性」と位置付けてアプローチしています。
2024年5月にはPICK初となる40名の業者様をお呼びしてゴルフイベント「PICK CUP」を開催しました。
これからのPICKが面白い理由。創業メンバーのコアメンバーとして組織を創る。
PICKのサービスは急成長しています。開発チームがかなり強化されたことにより、「PICKFORM」シリーズもどんどん新しいサービスを追加しています。電子契約に続き、今年の4月に「PICKFORM 案件管理」、8月に「PICKFORM 顧客管理」を正式リリースしましたが、さらにこの2年間で7つのサービスをリリースしていく予定です。
その分、やらなければならない仕事はたくさんあります。ということは多くのポジションが必要になることを意味しています。
能動的に動けば、自由度高くオーナーシップを持って仕事を進めていけます。新しいサービスを生み出すのもよし、生み出したサービスをグロースさせていくもよし、事業の方向性と個人のやりたいことのピースがうまくはまれば、どんどん経験値を積んで成長できる環境です。
また、PICKは、ルールや仕組みがまだ定まってないことも多いのが現状です。だからこそ、自分たちでこれから作り出して行くことができます。能動的であればあるほど活躍の場が生まれ、やればやるだけ評価されます。努力が目に見えるのはおもしろいし、創業メンバーの一員として強い組織を作っていくことができる環境だと思います。
クライアントと、その先のお客さまにとっていい体験を提供できるBtoBtoCモデル
クライアントの声もモチベーションにつながります。
変化に慎重になっていたクライアントが、例えば印刷代や郵送代が削減されたり、書類などの保管スペースがスタイリッシュになるなど目に見える効果を実感し、喜んでいただけるケースが増えてきました。
PICKのサービスはBtoBのビジネスモデルですが、私はBtoBtoCモデルだと思っています。不動産・建築業者の業務フロー体験を変えることで、エンドユーザーのお客さまに間接的に役に立っている、いい体験をしていただいていると自負しています。自分たちのサービスで世の中が便利になるのを実感できるのも、PICKで働く魅力だと思います。
■採用について
現在、PICKでは各部署にて仲間を募集しており、採用活動を行っております。法律の改正によって生まれた新たな巨大市場において、いよいよ拡大フェーズに入ったPICKのビジネスへご興味ある方は是非ご連絡下さい。記事を読んで少しでも興味を持っていただいた方、ぜひ気軽にお話ししましょう!
■資金調達記念イベントについて
資金調達記念イベントとして、9/19(木)19時〜21時にPICKの目黒オフィスで交流会の場を設けられればと思っております。少しでも「PICKに興味がある方」などいらっしゃればお気軽にお越しください。
軽いトークセッションと軽食・お酒・ソフトドリンクもご用意しております。
申し込みページ:https://pick.connpass.com/event/328899/
【カジュアル面談のお申し込みはこちらから】
少しでも興味持っていただけましたらまずは気軽にお話ししましょう!
ビジネス・コーポレートチーム:https://pitta.me/special/company/m_k-8sjdgcg
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