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不動産の取得方法によるメリット・デメリット

不動産投資をする場合、必ずしも現物の不動産を取得する必要はありません。
信託受益権を取得しても良いですし、不動産を保有している会社を買収しても良いわけです。
 
今回は、実際に活用するどうかはともかく、不動産の取得方法とそのメリット・デメリットについて考えてみようと思います。


1.不動産の取得方法の比較


不動産を取得する場合、不動産の現物をそのまま取得することが一般的です。ただし、相続などを考えた場合、必ずしも不動産の現物を取得することが得策ではない場合もあります。
ここでは、不動産の取得方法として、①現物の取得、②債権の取得、③株式の取得、④信託受益権の取得を比較したものが図表1です。
 
【図表1:不動産の取得方法の比較】

まず、①不動産を現物で取得する場合は、軽減税率を無視して建物を取得すると不動産価格の6%の不動産流通税(登録免許税、不動産取得税)が掛かります。
10億円の不動産を取得する場合は6千万円の不動産流通税が掛かるわけです。さらに、宅建業者の手数料も掛かります。宅建手数料を3%とすると3,000万円ですから、不動産流通税と合わせて約1億円近い費用が購入時に発生します。
不動産を取得する際には、物件の取得価額以外に9~10%の費用が必要です。

これに対して、②債権を取得する場合、③株式を取得する場合は、不動産流通税は掛かりません。④信託受益権を取得する場合も、登録免許税がほとんど発生しません。
つまり、現物で不動産を取得しなければ、6千万円のコストが削減できるのです(10億円の不動産を取得する場合)。

不動産の登記に拘る人もいますが、登記簿謄本の甲区に名前が載らなくても不動産は取得できます。コストを考えて取得方法を柔軟に検討した方が良いでしょう。

当然のことながら、不動産仲介業者は、①不動産現物を紹介してきます。他の取得方法(②~④)だと、宅建業に基づく仲介手数料が取れないからです。

2.それぞれのメリットとデメリット


現物以外の不動産の取得(図表1の②~④)は取得費用が安くできます。これがメリットです。
ただ、当然のことながらデメリットもあります。ここでは、取得方法によるデメリットについて説明します。

まず、②債権の取得は、不動産を取得するわけではありません。
不動産担保付ローンを取得します。所有者(債務者)から元利金の支払いを受けるため、借入人(債務者)の信用リスクに影響されます。

次に、③株式の取得は会社のM&Aです。
会社には、不動産以外の資産・負債があります。例えば、不動産10億円と借入金10億円のみの会社は0円で買収します。会社の純資産が0円だからです。不動産を保有している会社を安く購入できるのがメリットです。
ただし、気を付けないといけないのが簿外債務(会社に隠れた債務)です。買収後に想定しない事態が発生する場合があるので留意しましょう。

④信託受益権を取得する場合も、不動産流通税はほとんど掛かりません。また、信託受益権とは、信託銀行などが不動産を預かっているため、③株式を取得する場合のように簿外債務はありません。
ただし、不動産の管理を信託銀行などに委託しているため管理費用が掛かってきます。これがデメリットです。
取得費用が安くてリスクが少ないものの、管理費用が掛かります。トータルでどちらが割安かを判断する必要があるでしょう。

不動産の取得方法によるメリット・デメリットを比較したのが図表2です。

【図表2:取得方法によるメリット・デメリット】


今回は不動産の取得方法によるメリット・デメリットを説明しました。
不動産取得スキームについて詳しく知りたい人は、こちらを参照して下さい。


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