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不動産を買うよりもM&Aの方がいい?

上の画像は本文とは全然関係ありません。
先日、伊香保温泉に行ってきました。喫煙所にこんな看板が設置されていました。

SMOKING EREA……AREAの間違いですね。
よく見るとこの看板は印刷されています。1つだけ作ったのではないでしょうから、数十個の間違った看板が付近には設置されているのでしょう。
印刷した担当者、怒られただろうな……

さて、今回はM&Aで不動産を取得することに関するものです。
ご興味のある人はご覧下さい。



不動産投資は現物を取得する必要はありません。
信託受益権を取得してもいいですし、不動産を保有している会社を買収しても同じ効果は得られます。
今回は、現物で不動産を取得する場合とM&Aによって不動産を保有している法人を買収する場合を比較して解説しましょう。


1.  M&Aとは


M&Aは一般用語なので改まって説明する必要はありませんね。
 
一応説明すると、M&Aとは、『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。
2つ以上の会社が一つになる合併、会社が他の会社を買う買収が合わさった用語です。M&Aは合併と買収といいながら、合併する場合はほぼありません。
 
さて、M&Aの対象は製造業や小売業など様々な会社です。M&Aが行われるのは、会社が成長するために同業の会社を買収する場合(ロールアップ)、新規事業を開始するための他社買収が多いでしょう。
 
M&Aのメリットは時間です。新規事業を開始する場合、事業部を作って人を配置し、営業、製造を一からスタートします。一からビジネスを立ち上げて事業を軌道に乗せるのは非常に時間が掛かります。他社を買収すれば、買収した時点から新規事業をスタートすることができます。
 
不動産賃貸業の買収も同じです。
安定的な収益を生む賃貸用不動産を探し出し、不動産を取得するために金融機関から融資を受けて物件を購入します。物件購入後はテナントを募集し、賃貸管理する人間を雇う必要があります。

1物件だけ取得するのであればそこまで時間が掛かる訳ではありません。
しかし、10件、20件取得する場合は、M&Aを利用した方が時間が削減できるでしょう。
このように、不動産賃貸業の会社を買収すれば、不動産の現物を購入するよりも時間が短縮できるのです。

2.  M&Aによる物件取得のメリット


M&Aで不動産賃貸業を買収する方が、現物不動産を購入するよりも時間的なメリットがあります。
不動産保有会社をM&Aするメリットはそれだけではありません。
 
まずは、不動産流通税です。不動産の現物を取得する場合(ケース1)、会社を買収する場合(ケース2)の費用を比較したものが図表1です。
 
【図表1:不動産の取得方法による費用の比較】

軽減税率を無視して建物を取得した場合として表示

不動産を現物で取得する場合、不動産価格の6%の不動産流通税(登録免許税、不動産取得税)が掛かります(軽減税率を無視して建物を取得した場合)。
10億円の建物を取得する場合、6千万円(10億円×6%)の不動産流通税が掛かります。さらに、宅建業者の手数料が3%掛かると3千万円(10億円×3%)必要です。
つまり、10億円の建物を取得する場合、不動産流通税6千万円と宅建手数料3千万円、9千万が購入時に掛かります。
不動産の現物を取得する際には物件の売買代金以外に多額の費用が必要です。
 
一方、株式を取得する場合は不動産の所有権移転が必要ありません。
所有権移転登記が不要なので登録免許税が掛かりませんし、不動産を新規取得しているわけではないので不動産取得税が掛かりません。つまり、不動産流通税は不要です。
不動産保有会社を買収する際にM&Aの仲介業者から紹介を受けたら手数料を支払います。
宅建業者の仲介手数料のように法律上上限額が定められていないものの、一般的にM&Aの仲介会社に払う手数料はレーマン方式(図表2)で計算します。
 
【図表2:レーマン方式による手数料率】

大雑把に言うと、M&Aの仲介手数料は宅建業者の仲介手数料と同じくらいです。
会社を買収した方が不動産流通税が掛からないため、売買費用を抑えることができます。
 
次に、不動産保有会社を買収する方が現物不動産よりも取得価額が小さくなります。
不動産保有会社を買収する場合、時価純資産で株式を買い取ります。
会社には不動産以外の資産・負債があります。
会社の保有資産・負債が不動産10億円と借入金9億円の会社は純資産が1億円です。時価純資産額で株式を購入すると、買手は1億円で不動産保有会社を買収することができます。

不動産を現物で取得するケースと会社を買収するケースを比較したのが図表3です。一般的に会社の方が取得価額が小さいです。
 
【図表3:現物と会社の取得価額】


3.  M&Aによる物件取得のデメリット


M&Aの場合は会社を購入します。つまり、会社の過去の遺産を受け継ぎます。
M&Aで不動産保有会社を買収した後に、買収時には発見されなかった未払費用があかもしれません。また、訴訟によって損害賠償を求められるかもしれません。
少しでも高く会社を売りたい売主は、価格にマイナスに作用する事項(負債)を買主に隠そうとしますよね。
すなわち、会社を買収する場合は、簿外債務(隠れた債務)に気を付ける必要があります。
そういう意味では、売主がどれくらい信用できるかがポイントになるでしょう。
 
ここまで、M&Aによって不動産(不動産保有会社)を取得するメリット・デメリットを説明しました。
取得方法によるメリット・デメリットを比較したのが図表4です。
 
【図表4:取得方法によるメリット・デメリット】

繰り返しますが、不動産は必ずしも現物を取得する必要がありません。
不動産保有会社を買収する方法もありますから、M&Aを検討してはどうでしょうか?

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今回は不動産投資をM&Aに絡めて解説しました。
不動産ファイナンスについて詳しく知りたい人は下記の書籍を参考にしてください。

【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

【金融マンのための実践ファイナンス講座】


【図解 不動産ファイナンスのしくみ】

 



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