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【リース会計基準】リースの売買処理について説明します

「リースに関する会計基準」が2027年4月1日以降開始する事業年度(2028年3月期)から適用されることになりました。

今回は新リース会計基準における売買処理の概要について説明します。


1.不動産賃貸借取引の会計処理が売買処理に変わる


リース会計基準の改正のメインはオペレーティング・リースの借手の会計処理が売買処理に変更される点です(図表1)。
※オペレーティング・リースの貸手の会計処理は賃貸借処理のままです。

【図表1:リースの借手の会計処理の比較】

オペレーティング・リースである不動産賃貸借取引の借手の会計処理は賃貸借処理から売買処理に変わります。

売買処理になると、会計処理が複雑になります。具体的にどのように変わるかを、現行の賃貸借処理と比較して説明します。

2.不動産賃貸借取引の賃貸借処理


まず、前提を以下の不動産賃貸借契約とします。この契約の会計処理を取り扱います。

【図表2:不動産賃貸借契約の内容】

ここでは、説明を単純にするため賃貸借契約の期間は2年間、賃料は年1回(後払)の支払いとしています。実際の不動産賃貸実務では前払なので、前提が違います。
この賃貸借契約の借手の会計処理(仕訳)を賃貸借処理で行います。


・第1回賃料支払・決算日(X1年12月31日)

(借)支払賃料 1,000万円 (貸)現金預金 1,000万円

・第2回賃料支払・決算日(X2年12月31日)

(借)支払賃料 1,000万円 (貸)現金預金 1,000万円

【解説】
賃貸借処理では、支払った賃料を損益計算書に計上するだけです。
これは、イメージしやすいですね。

2’.不動産賃貸借取引の賃貸借処理(前払い)


念のための補足です。前払いで賃料を支払う場合は、以下のように会計処理します。


・第1回賃料支払(X1年1月1日)

(借)前払費用 1,000万円 (貸)現金預金 1,000万円

・決算日(X1年12月31日)

(借)支払賃料 1,000万円 (貸)前払費用 1,000万円

・第2回賃料支払(X2年1月1日)

(借)前払費用 1,000万円 (貸)現金預金 1,000万円

・決算日(X2年12月31日)

(借)支払賃料 1,000万円 (貸)前払費用 1,000万円

【解説】
賃料は前払いなので、一旦、前払計上した後、使用期間に伴って費用処理します。
ここでは、決算日に一括費用処理しています。

3.不動産賃貸借取引の売買処理


オペレーティング・リース(不動産賃貸借取引)を売買処理する時に必要な会計処理は以下の通りです。

  • リース開始日のリース負債・使用権資産の計上

  • リース料支払い日の利息法による配分

  • 決算日における使用権資産の減価償却

この流れに従って、売買処理による会計処理を説明します。

・リース開始日のリース負債・使用権資産の計上(X1年1月1日)

(借)使用権資産 1,859万円 (貸)リース負債 1,859万円

※リース負債の計上額=1,000万円÷1.05+1,000万円÷1.05^2=1,859万円
使用権資産=リース負債

・第1回賃料支払(X1年12月31日)

(借)リース負債 907万円 (貸)現金預金 1,000万円
   支払利息   93万円

※支払利息=1,859万円×5%=93万円


・X1年の決算日(X1年12月31日)

(借)減価償却費 929.5万円 (貸)減価償却累計額 929.5万円

※減価償却費=1,859万円÷2年=929.5万円

・第2回賃料支払(X2年12月31日)

(借)リース負債 952万円 (貸)現金預金 1,000万円
   支払利息   48万円

※支払利息=952万円×5%=48万円

・X2年の決算日(X2年12月31日)

(借)減価償却費 929.5万円 (貸)減価償却累計額 929.5万円

・リース終了日(X2年12月31日)

(借)減価償却累計額 1,859万円 (貸)使用権資産 1,859万円

【解説】
・リース負債・使用権資産の計上
リース開始日に計上するリース負債は、将来支払するキャッシュ・フロー(賃料)の現在価値です。使用権資産はリース負債に前払費用などを加減算して計算します。

・リース料支払い
リース負債の残高に対して割引率5%で支払利息を計算します。支払った現預金1,000万円と支払利息との差額が、リース負債の充当額です。

・使用権資産の減価償却
リース開始日に計上した使用権資産をリース期間定額法で減価償却します。

3’.不動産賃貸借取引の売買処理(前払い)


念のために、賃料を前払いする場合の会計処理も説明します。

・第1回賃料支払(X1年1月1日)

(借)前払費用 1,000万円 (貸)現金預金 1,000万円

・リース開始日のリース負債・使用権資産の計上(X1年1月1日)

(借)使用権資産 1,952万円 (貸)リース負債  952万円
                  前払費用  1,000万円

※リース負債の計上額=1,000万円÷1.05=1,000万円
使用権資産=リース負債+前払費用=952万円+1,000万円=1,952万円

・X1年の決算日(X1年12月31日)

(借)減価償却費 976万円 (貸)減価償却累計額 976万円

※減価償却費=1,952万円÷2年=976万円

・第2回賃料支払(X2年1月1日)

(借)リース負債 952万円 (貸)現金預金 1,000万円
   支払利息   48万円

※支払利息=952万円×5%=48万円

・X2年の決算日(X2年12月31日)

(借)減価償却費 976万円 (貸)減価償却累計額 976万円

・リース終了日(X2年12月31日)

(借)減価償却累計額 1,952万円 (貸)使用権資産 1,952万円

【解説】
賃料支払のタイミングが期首に発生するため、計上のタイミングが先ほどの会計処理と異なります。
なお、賃料が前払いのため、リース負債の計上額は未払い分(2年目の賃料)のみです。使用権資産の計上額は前払い(1年目の賃料)も含めます。

このように、不動産賃貸借取引が売買処理になると、会計処理が複雑になります。
ということで、今回は新リース会計基準における不動産賃貸借取引の会計処理の概要について説明しました。
細かい点は次回以降に解説します。


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なお、新リース会計基準について詳しく知りたい人はこちらを参考にしてください。


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