見出し画像

株式非公開化とMBO(マネジメント・バイアウト)

株式市場では非公開化が頻繁に発生します。
親子上場(親会社と子会社が両方とも上場している状態)の問題が指摘されており、親会社が子会社を株式公開買付けによって非公開化するケースは多いです。それとは別に、株価が低迷する上場会社においてMBOによる非公開化は一般的に行われています。
今回は、上場会社の非公開化で利用されているMBOについて説明します。
 


1.MBOとは

 
MBOとはManagement Buy-Out(マネジメント・バイアウト)の略で経営者(Management)が自社を買収するスキームの一つです。買収者に経営者が含まれない場合はLBO(Leveraged Buy-Out)といいます。
 
株価が低迷する上場会社においてMBOによる非公開化は一般的に行われています。市場株価を元にした時価総額よりも理論的な株式価値の方が高く、株式上場しているよりも非上場の方が良いと経営者が判断するからです。
 
MBOするには株式買付資金が必要です。経営者には上場会社の株式100%を買付けるだけの資金がないことが多いため、MBOを実施する際には投資ファンドの資金を頼ります。
上場企業の買収資金のうち、それぞれの拠出額は、経営者:投資ファンド=5~10:90~95くらいでしょう。投資ファンドが株式の90%以上を保有しているから、客観的に見れば経営者が買収したとは言えないかもしれません。
買収金額の大小を問わず、買収者に経営陣が含まれる場合を一般的にMBOといいます。

2.MBOのスキーム


MBOの一般的なスキームは図表1~2です。

買収用の会社(SPC)を設立して銀行から資金調達し、対象会社を買収します(図表1)。対象会社を買収した後、SPCと対象会社を合併させます(図表2)。

【図表1:MBOのスキーム<合併まで>】

<説明>
①A社を買収する投資家(経営者+ファンド)が、買収用会社(SPC)を設立する。
②株式買取資金を金融機関から調達する。
③A社の既存株主から、株式を100%買取る。
④概ね100%購入後、SPCとA社を合併させる。

【図表2:MBOのスキーム<合併後>】

<説明>
⑤合併後A社の資産・収益等から金融機関からの融資を返済する。

3.MBOが実施される理由


上記の①~⑤がMBOの一連の流れです。なぜ、MBOが一般的に利用されるのでしょうか?
下記の3つが理由です。

a)投資家は買収対象会社(A社)の資産・キャッシュフローを担保に金融機関から買収資金の調達ができる。

b)仮にA社が倒産した場合でも株式価値がゼロになるだけで、融資の返済が投資家(経営陣+ファンド)に遡及されることがない(ノンリコース・ローン)。

c)金庫株を活用した場合に生じる債務超過の問題をクリアできる。

aは買収用の会社(SPC)には事業(信用)がないため銀行が融資できません。MBOであれば買収対象会社のA社の事業(信用)を利用して資金調達できます。
別の言い方をすれば、SPCで調達した借入をA社に押し付けるスキームがMBOといえます。

bは借入人がSPCまたは買収対象会社(A社)であるため、投資家(株主)には借入金の返済義務はありません。つまり、投資家にとっては出資額が損失の上限額です。

cは会計上のテクニカルな論点です。SPCとA社が合併せず、A社からの配当金の支払いを借入金の返済原資にするとA社は債務超過になります。SPCとA社が合併すれば、その問題を回避できます。新A社が直接の債務者になるからです。

このような理由から非公開化においてMBOが利用されているのです。
ちなみに、MBOの対象として適しているのは、余剰資産が潤沢にある企業、キャッシュフローが安定的に出る企業です。

***

今回は株式非公開化に利用されるMBOについて解説しました。もっと詳しく知りたい人は下記を参考にして下さい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?