不動産担保の種類(その2)
不動産は借入の担保として代表的な存在です。第1回に続き、今回も不動産担保の種類について解説します。
3. 譲渡担保
譲渡担保は、担保とするために譲渡します。
簡単に言うと、譲渡担保によって所有権が所有者から担保権者に移ります。不動産で譲渡担保をすると、第三者対抗要件を満たすために所有権移転登記をする必要があるため登録免許税(登記費用)が掛かります。不動産の所有権移転によって不動産取得税が掛り、不動産を保有している期間は固定資産税・都市計画税が掛かります。
つまり、不動産の担保設定を譲渡担保にすると多額の税金が発生するのです。
銀行が融資する際に譲渡担保を設定すると、物件の所有権が銀行に移ります。所有者が銀行になるので、自ら物件の保有や賃貸をしなければいけません。また、管理費、税金など余計な費用も掛かります。場合によっては、銀行のB/Sに計上されるかもしれません。
不動産の担保設定方法として譲渡担保はできるものの、経済的な理由から銀行が利用することはないでしょう。
ただし、不動産業者やノンバンクが融資をする際には、譲渡担保を使うケースがあります。個人的な印象としては、不動産業者向けのノンバンクは譲渡担保をかなり利用していると思います。登録免許税などは借入人に払ってもらえばノンバンクの負担になりません。さらに、デフォルト(債務不履行)の際に不動産の処分がしやすいというメリットがあります。
4. 抵当権
不動産を担保設定する場合、通常、抵当権が用いられます。
抵当権は、不動産を担保としていることを不動産登記簿謄本の乙区に記載することによって、第三者対抗要件を具備します。手続は非常に簡単で、抵当権設定登記の費用は高くありません。なので、不動産担保には抵当権を使用します。
ちなみに、抵当権には、「普通抵当権」と「根抵当権」があります。
「普通抵当権」は特定の債権の担保として用いられる担保設定方式です。『平成XX年X月X日付金銭消費貸借契約に基づく担保』というように、個別債権と紐付けが行われます。個別の貸付契約に紐付けになった担保権ですから、担保設定の対象となった貸付以外の担保とはできません。
「根抵当権」は運転資金融資を行っている場合や手形融資を行っている場合など、融資取引が日常的に発生するようなケースを想定した担保設定方法です。『金額XXまでの金銭消費貸借契約に基づく担保』というような緩い担保設定が特徴です。個別の貸付契約に紐付けではありませんから、担保設定した際に存在しない貸付金の担保にすることも可能です。
「根抵当権」であれば担保不動産と個別貸付金の関係を気にしなくてもいいため、「根抵当権」の方がより楽な担保設定の手段といえるでしょう。
<その1はこちら>
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