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コベナンツ(その2)

不動産投資や企業買収の際にはノンリコースローンを利用することがあります。ノンリコースローンは貸付金の回収原資が限られるため、コベナンツが一般的に設定されます。
2025年4月から有価証券報告書で財務コベナンツの開示がスタートする予定ですから、今後注目されていくと思います。
前回に続いて、今回もコベナンツについて説明します。


3.財務コベナンツの計算方法


財務コベナンツは企業の決算書の数値を利用して計算します。企業によって使用している勘定科目が異なるケースがあり、全ての企業に同じコベナンツの定義が適用されるわけではありません。
簡単に判断できる財務コベナンツは以下のようなものです。

・純資産維持、黒字維持


貸借対照表の純資産、損益計算書の利益(営業利益、経常利益、当期純利益)がプラスであること。
これは、債務者区分に影響があるため財務コベナンツとして利用されます。

不動産ファイナンスで比較的馴染みがあるコベナンツは、①はデット・サービス・カバレッジ・レシオ(DSCR)、②はローン・トゥー・バリュー(LTV)でしょう。
 

・デット・サービス・カバレッジ・レシオ(DSCR)

 
【内容】
元利金返済額(デット・サービス)を賄うだけのキャッシュ・フローを創出しているかを判断するための指標です。デット・サービスの定義は契約によって異なります。支払利息、手数料、約定弁済元本額が含まれます。
不動産のみを対象とするノンリコースローンでは、不動産から発生するキャッシュ・フローから元利金支払を行わなければなりません。なので、物件のキャッシュ・フローから借入金の返済が可能かどうかを判断する必要があります。このため、不動産から発生するキャッシュ・フローが元利金支払額の何倍かを判断する指標としてDSCRが利用されます。
 
【計算式】
デット・サービス・カバレッジ・レシオ(DSCR)=
ネット・キャッシュ・フロー(デット・サービス支払前)÷デット・サービス
ネット・キャッシュ・フロー=賃貸収入―運営費用(減価償却費除く)―CAPEX
デット・サービス=年間返済元金+年間返済利息+手数料
 

・ローン・トゥー・バリュー(LTV)

 
【内容】
不動産の物件価値に対して、どの程度の借入水準となっているのかを判断するための指標です。不動産ノンリコースローンでは、最終的に物件を売却して借入金を返済することになりますので、物件の時価がどの程度であるかというのは重要な判断指標になります。
 
<計算式>
LTV=物件時価評価額÷借入金額
 
 

4.コベナンツの開示


2025年4月から有価証券報告書で財務コベナンツの開示がスタートする予定です。財務コベナンツに抵触すると債務不履行が発生します(厳密には請求喪失事由のため債権者が請求した時点でデフォルトする)。
決算書の業績だけでは企業の倒産リスクが分からないため、利害関係者に財務コベナンツの情報を開示することは重要です。
今後は、企業の借入金、社債にどのような財務コベナンツが設定されているか注目されるようになるでしょう。

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<前回の記事はこちら>

今回は財務コベナンツについて解説しました。もっと詳しく知りたい人は下記の書籍を参考にして下さい。

【金融マンのための不動産ファイナンス講座】

【金融マンのための実践ファイナンス講座】


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