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オンライン参加型合意形成プラットフォームDecidimを活用したまちづくりの実践(2022年2月20日2021年度第2回北近畿創生フューチャーセッション基調講演)

これは何?

京都府福知山市にある福知山公立大学が主催するオンラインイベントでの基調講演です。これまでの日本におけるDecidimの活用状況と京都府北部で活用している与謝野町の取り組みをご紹介しました。

いつものとおりUDトークで文字起こししたものを一部編集しています。
50分程度お話したものと、質疑応答もあります。

講演本体

ご紹介いただきましたCode for Japanの東です。

それでは基調講演ということで、オンライン参加型合意形成プラットフォーム、Decidim(デシディム)と言われているこのシステムそのものの説明をするつもりは実はあまりなくて、そこでどういったことが行われている、あるいは行われようとしているかということに着目いただければと思います。

テーマはまちづくりの実践の内容であります。

シビックテックについて

で、Code for Japanという団体名、もしかしたらご存知かもしれませんが、先ほど杉岡先生のご紹介の中にもありました「ITを活用して地域課題解決を行う活動」、これをシビックテックというんですが、そのお話を通じて、少し私が何をしているかということについてご案内できればと思います。

ともに考え、ともにつくる。

Code for Japanは、一般社団法人ではありますが、いわゆるコミュニティ活動の要素が強い団体であります。我々のテーマは「ともに考え、ともにつくる。」をキャッチコピーにしているコミュニティだとお考えください。

こちら写っているのは、もう2019年なんでちょっと大分前になってしまいましたが、毎年こういう全国各地で、このときは確かアメリカと台湾からもゲストが来てましたけれども、みんなが集まってですね、活動をシェアしたりするサミットを開催しています。いろんなバックグラウンドを持ったメンバーで構成されていることをお示ししています。

シビックテックアプローチ

ともに考え、ともにつくるというその社会を目指すために何が必要かを考えてたときに、私どもが大切にしたいのが「シビックテックアプローチ」であります。

左側にあります通り、「公共モデル」ってちょっと堅苦しいですけれども、今日ご視聴の方は行政の方が多いと思いますが、「行政がやっている仕事のあり方」を「公共モデル」と申し上げれば、ともすれば市民と行政が対面で苦情を言ったり、こうしてほしいと要望をしたりする、そして行政がそれに応じた行政サービスを提供する。これは当たり前の話だと思われるかもしれませんが、言葉はニュートラルに使いますが「依存」関係だとすると、右側のようにいろんな人たちが地域課題を解決するために活動する。そういう視点で言えば、そもそも行政も作られた存在だと思います。

であれば、課題解決は、行政だけがするんじゃなくてですね、今日主催された大学もそうでしょうし、いわゆるまちづくりの活動をいろいろされてる方々もそうであります。

あるいは一個人として参画するまちづくりというのも、あるべきものでありまして、それが共に創る「共創」の社会作りを目指すというものであります。これがシビックテックアプローチです。

そのときに、私どもが得意としているいわゆるテクノロジーであるとか、データを活用する場を作るための団体だとお考えください。

したがいまして、今日も「デジタル」という言葉が、イベントタイトルにもありますけれども、共に創る社会をどうやったら実現できるかということが大切でありまして、その際に、これから申し上げるデジタルというものと相性が良いということを申し上げたい訳であります。

ですので、デジタルとアナログというものが、何か対立するような話、「デジタルデジタルって言うけど、アナログの話はどうなるんだ」って、もしご心配なった方がいらっしゃるんであれば、それは当然考えているということでありますし、デジタルだけでうまくいくものではないということであります。

シビックテックとは

その上で、シビックテックはいわゆる造語でありまして、シビックいわゆる市民と、テック=テクノロジーを掛け合わせた造語であります。その中の要素をいくつか分解すると、市民とテクノロジーを両方に置いた場合に、「市民が活用するテクノロジー」そのものを説明する場合もありますし、「テクノロジーを活用して市民が課題を解決する」、その際に多様な主体が参画する、つまり「ともにつくる」ということでありますが、そういった要素もあります。

また、最近は特にこの傾向が強くなってきていると思いますが、そうしたことを可能にする仕掛けそのもの、例えばこうした活動がもっと推進されるように行政が何かしらの政策を打つでありますとか、我々市民がですね、そういったことをもっと盛り上げていくっていうようなようなことも、このシビックテックの言葉の中には含まれているというものであります。

世界のCode for

こうしたシビックテック、カタカナなので、お気づきのとおり、世界的な活動でありまして、それをCode for Allという言い方で、世界26ヶ国で日本と同じようなコミュニティがあります。

シビックテックの歴史

我が国のシビックテックの始まりは何かといいますと、2011年の東日本大震災であります。そのときにITのエンジニアをはじめとする方々がボランティアの活動がベースになっています。

各地の震災の支援情報、行政とかですね、例えば赤十字の方々とか、いろんな支援情報を提供していたと思います。そのときにあまりにたくさんあってですね、自分に必要な支援情報はどこでわかるんだろうという課題に気付いたエンジニアがですね、情報を整理したわかりやすいポータルサイトを作ったっていうのが最初であります。

その活動をベースにして、それより前に設立されていたCode for America、米国の活動を参考に2013年に日本でもCode for、シビックテック活動が始まったという形になっております。

各地のブリゲード活動

ですので、一定の蓄積というか、十数年たったっていうような流れになっていまして、そうした流れが現在では日本各地においては、数え方いろいろあるんですけれども80あるいは90ぐらい、各地域で活動があります。

福知山にもCode for 活動

ちなみに、Code for は福知山にもあります。

福知山公立大学で情報学部ができるに際して、先生方とか、学生さん、あるいは今日も参加されている福知山市役所の方々が、Code for Fukuchiyamaという活動をされています。

活動として例えば、全国的にもありますけれども、ゴミの収集日を地区別に、市役所が例えば転入されるときにお渡しするとか、自治会で配るみたいなことあると思いますけれども、ご自分のスマートフォンで収集日が簡単にわかるようなアプリを、市役所のデータを活用してつくるでありますとか、あるいは各地域に消火栓、いざ何かあったときにですね、近くにどこにあるんだろうと紙の台帳で探すのではなくて、福知山市のデータを使ってGoogleマップに消火栓マップを作られています。これだと、自分の現在地、スマホのアプリだとすぐ呼び出せるそれと、消火栓がどこにあるかを確かめたり、経路案内もスマホだと簡単にできますので、近くの消火栓からどうやって水を引いてくるかみたいなことを考えるときに便利なアプリを作られているものです。

こういった活動が、皆さんがイメージしやすい、いわゆるシビックテック活動に当たるものだと思いますが、こうしたものが全国各地であるということになります。

わたしから始める、スマートシティ Make our City

Code for Japanでは、そうした地域に役に立つアプリを作ることだけではなくてですね、今日のお話にも共通する話としては、最近Make our City、「わたしから始めるスマートシティ」という言い方をしています。

よく言葉として出てくる「スマートシティ」という言葉がありますが、これはどちらかというとやはり技術にちょっと寄った言葉として、手垢がついている言葉でありまして、スマートシティも必ずしも忘れたわけではありませんが、やはり住民発の、あるいはそこの町に住んでいる、関わってる人たち自身がまちづくりをしていく、これはシビックテック活動に相通ずるところだと思います。これを、Code for Japanなりの言い方をすれば、わたし主体のまちづくりを通じて、ウェルビーイング、あるいはまちの幸福を実現する活動として提唱しています。

今日これからご説明をしますDecidimというツールは、誰もがオープンに参加し、みんなで議論すること、これがわたしから始めるまちづくりには必須だと思っております。それを実現するためのプラットフォームとしてご提供しているものと言えるものです。

参加型合意形成への注目

市民参加の変遷とこれから

そうした中で、今日のタイトルにもあります「参加型合意形成」に注目が集まっています。といっても、これは別に新しいものではない。

「参加型」、つまり「市民参加」ということですが、ここでは30年と一応書きましたが、例えばパブリックコメントですと、20年ですかね、歴史があるものでして、その前には、福知山公立大学の先生方、多分たくさん参加されてると思いますが、役所の審議会的なところでいろいろな人の意見を聞いて政策を作るということが一般的でありました。その際に、そうした有識者と呼ばれてる人ではなくて、市民も委員になる場合もありました。

ここで問題とするのは、本当に意見が反映されたかどうかです。

それは、よく分からないということではないかと思います。何か決まるんだけれども、自分たちが主体的に関わったかどうかという実感はなかったと思います。それがパブリックコメント、あるいは現在も続いている自治会単位で懇談会などもされてると思いますが、ここでいういわゆる「1往復半」つまり、「どう思いますか?」と聞かれて、「こうじゃないですか」と意見を出して、「承った意見についてはこうだと思います」と、理由を提示する、こういう1往復半のやりとりがこうした制度で運用されています。

そこで理由が提示される。しかし、住民から見て、書かれている理由について、「分かった」となるのですが、実はそれ書いていても、その意味がよく分からないということの方が多いんじゃないかなと思います。そして、その言われた理由に対してもう1回意見を言って再考されないのか、ということが問題です。

パブリックコメントですと、意見提出期限後に、役所側としての考え方が公開され、それをみんなが見る。その後は粛々と今までと同じ行政が続いていくということがあるんじゃないかなと思います。そうしたとき、今回テーマとなっているデジタル化の一種のブームみたいなものがあったとき、デジタルがそうした課題解決に何か寄与するみたいなことは考えるべきことでありますが、私が言いたいことは、市民参加のこれまでの流れを踏まえて、そのあり方をもう1回考え直す契機にする必要があるということです。

つまり、デジタルがそれに対する答えではなくて、デジタルでできる事柄を目にしたときに、皆様方がどう考えるかということが大切だということであります。

様々な試み

そうしたときに、デジタルを活用した様々な取り組みが始まっています。簡単に振り返ると、ツイッターなど皆さんもよく使っているSNS、あるいはその前、2000年代の初頭には、そうしたSNSの前身として地域SNS、今も運用されてるものもありますけれども、というものもありました。

地域SNSであれば20年ぐらい、ツイッターとかフェイスブックとか、これらはiPhoneの日本上陸とともに始まったと言われてますので、2008年とかです。10数年ということですが、こうしたものを皆さん目にしている中で、今にわかに、各地で行われるようになってきたものが、オンラインで参加型合意形成を目指す動きです。スライドの右側です。

こちらでご紹介してるのは、国のデジタル庁でありますとか、先日ちょうど立ち上がった千葉県千葉市でありますとか、いろんな自治体でそういった取り組みが行われようとしておりまして、今日ご案内するのもその日のうちの一つのDecidimであります。

Decidimとは

いうことで、Decidimは、2016年にスペインのバルセロナ市で開発された、市民参加のためのデジタルプラットフォームですと言われているものです。

オンラインとオフラインの融合

デジタルプラットホームというのは、何かインターネット上でやりとりすることができるものなのかなとお感じかもしれません。それは半分正解、半分違っていまして、Decidimでなされる説明では、そういったこともするんだけど、

次のイメージでは、ご覧いただく通り、中央にモニターがあって、その中では、別のやりとりがされているところを手前の会場で見るような形になっています。バルセロナでは車座になって皆さん話している光景を目にしますが、デジタルプラットフォームといったときに、オンライン上でこういった議論をする、意見をやりとりすることも当然あるんだけども、オフラインでこれまで通り運用もされます。

ちょうど右側で立ってる女性がスマホを見ていますよね、オンラインで行われている意見を見ながら、目の前にいる人たちとディスカッションすると、そういったオンラインとオフラインの、いわば融合が大切だとに謳われています。

ですので、今日もオンラインの参加型合意形成と言ってますが、そこにはちょっとトリックがありまして、オンライン「も」活用する、というように考えていただければいいなと思います。

さまざまなDecidim

スペイン・バルセロナ市

そこで、各地のDecidimのご紹介でそうした融合のイメージをお話できればと思いますが、最初に始まったスペインでは、都市計画、まちづくりそのものに市民が参加をして意見を提出してまちづくりを進める予算をそのプロセスから作っているというような取り組みがあります。

アメリカ・ニューヨーク市

アメリカのニューヨーク市は、ちょっと特徴的なのでご紹介しますと、スライドにラッピングバスみたいものがありますが、これまでコミュニティバスとして地区を結んでいたバスが老朽化しますと。

捨てるのもありうるんだけど、せっかく馴染んだバス、地区別いろんなバスがあるんですよね。それを自分たちでどうアレンジをして、ここではThe People's Festivalと書いてますが、イベントを開催してバスを出展しようという企画です。バスをそのまま動かすんであれば動かすですし、美術館みたいなことにしようとかですね、移動式の屋台みたいにしたりとかですね、それを地区ごとにアイディアを出し合って、実際にペインティングをみんなでやってみたり、実際に自分たちで考えたアイデアを実現するため、オンラインのDecidimの場でディスカッションをして、実際にバスがその日にそれぞれの地区で展示されたりとか、それでみんなが交流したりするような、オフラインとの融合が図られていたりします。

フィンランド・ヘルシンキ市

フィンランドのヘルシンキ市では、バルセロナでも行われているものですが、12歳以上に投票権を渡します。ヘルシンキ市65万人ぐらいの人口ですが、全市に渡るものもあれば、7地区に分かれているそうですけれども、7地区ごとのまちづくりのアイディアを募って、12歳以上が投票すると、それに対して880万ユーロですから10億円ぐらいですかね、まちづくりの予算を割り当てるというようなことをしています。

何かすごいなと思われるかもしれませんが、出てきた個別の提案を見るとですね、皆さんにもなじみがあるようなものが入っています。

一番票を集めた7044票獲得・5万ユーロが割り当てられる提案は、直訳なのでわかりにくいんですけど「タバコの吸殻を入れるのに十分な数のきちんとしたゴミ箱」とあります。ヘルシンキ市ではタバコを吸ってる人いて、公園でタバコのポイ捨てがすごいので、吸殻入れをとにかくまずは整備しないといかんみたいな話です。そうした課題として思っているということに対して7000票集まるということが重要なんじゃないかなと思います。

他でも、「花の咲く木ーヘルシンキの20のマグノリア」…ちょっと日本語ではよく分からないですが、ヘルシンキ市を花でいっぱいにしたいといったところでしょうか。後ほど出てくる与謝野町さんのアイディアでも今同じテーマを募集されてますが、まちづくりの身近なテーマについて、町の人たちが意見を出し合って、それに予算をつけて執行していくということが行われているわけであります。


合意形成を進めるプロセスとコンポーネント

以上、ご覧いただいた通りDecidimのもともとの発想は、極めてシンプルでありまして、みんなのアイディアを集めてそれをシェアする。意見を出し合って決定した後は、その進捗を公開・確認できる。それを繰り返すというようなプロセスを作り出すサービスだとお考えください。

それをウェブでやりますので、役所の皆さんの日常業務であれば、それを毎回ホームページで作ったりとか、何か文書でみんなに共有したり、結構事務作業があると思うんですが、Decidimでは、それらに応じたテンプレート、ひな型がもともと搭載されていて、それに入力すれば、すぐ使えるページが作れるということであります。

例えば、会議を開くときには、議事録が必要であるとか、会議概要が簡単に作れるひな型「ミーティング」でありますとか、先ほどヘルシンキ市の例であった投票は、「提案」コンポーネントにある機能です。ニーズを聞くためのアンケート、あるいはディスカッションするディベートなどなどそういったテンプレートがあらかじめ用意されていて、Decidimを使う人たちがそうした中から合意形成を進めるためのプロセスを作るというものであります。

日本のDecidimの事例

それでは簡単にですが、日本でのDecidimの事例を概観しましょう。これからいくつか特徴簡単に申し上げますので、ご関心ある方はそれぞれリンクをつけてるところについてはご覧いただければと思います。
(注:スライド上にURLが書かれていても、公開期間が終了しているものにはこのnoteではリンクを掲載していません)

兵庫県加古川市

日本でのDecidimは、2020年の10月からでありまして、最初は兵庫県の加古川市さんでありました。立ち上げ時に、地元の高校生100人弱とスマートシティの構想を考えたというところが特徴です。

高校生が意見を言うことで、同じく参加している大人たちが、意見を出し合うというようなことも発生しました。すなわち、大人だけの議論ではなくて、将来世代の議論がまちの議論を活性化するというような現象が見て取れたわけであります。

内閣府等

同じスマートシティ関係ということで、国もスマートシティのガイドブックを策定する際、2021年の1月から3月というのは、緊急事態宣言が発令されていたときでありました。国の委員会というのは、リアルに関係者が集まって濃密にやりとりをするんですけれども、さすがにそれが無理だったので、完全にオンラインで自治体や事業者が100人規模でオンライン参加してDecidim上に直接書き込んで意見交換を行い、ガイドラインを作っていったということがありました。

兵庫県

加古川市の実施を見て、兵庫県でも取り組まれました。ちょうど今年度、知事選挙もあり新しい県ビジョンを策定するに合わせて、各地域やテーマで議論するためのプラットフォームとして活用されています。現在ちょうど最終案が公表されてると思います。

滋賀県

都道府県でどこか実施すると他の都道府県も、というのはあるあるでして、これは滋賀県らしいなと思いますけれども、CO2ネットゼロ社会、脱炭素の推進計画を作成するときの意見交換の場としても活用されました。テーマに応じた使い方がされる点が特徴だと思います。

よこはま自民党

これまではいわゆる行政による活用というご紹介でしたが、続いては横浜の自民党、政党が活用するケースもあります。政党はいろんな人たちのアイディアを集めて政策を作る、これがまさに政党の役割だと思いますけれども、そうしたことを手がけるケースとしても立ち上げられたことは、結構特徴的だなと思っています。

https://jiminyokohama.decidim.jp/

大学授業での活用

少し切り口を変えて、そもそも何かを決めていくプロセスというのは、どんなコミュニティでもある話です。次にご紹介するのは、私が大学にゲスト参加したときにやったものでありまして、大学の授業でグループワークをする、参加者は40人ぐらいでやってみました。特徴は、やはり20代のデジタルネイティブ世代は、あまり説明しなくてもすぐ使える、かつ結構面白いと感じるようです。

学生4人でグループになって、リアルでワイワイするんですけど、ワイワイしゃべりながらスマホでどんどん入力をして、コメントが集まってくる。それを見てまたみんなで話すみたいなことになっていました。

教授が授業の最後におっしゃっていたのですが、「普段は意見をなかなか言わないのに、何でこれだったらみんな意見をどんどん言うんだろう」という感想がありました。何かこういった議論を活性化する仕掛けがあるんだなということでご紹介するものです。

ルール?展

ちょっとまた違う切り口としては、いわゆる展覧会にも出展する、Decidimというか、Code for Japanがアーティストになった例であります。

参加型展覧会というものがありますよね。展示されたものに見に来た人が何かアクションをすることで展示物が変化する、その変化することそのものをまた鑑賞するといった参加型展覧会ってあると思いますけれども、この展覧会では、テーマが「ルールがどうやってできるんだろう」ということで、それにまつわる様々な展示しているものでして、展覧会場にiPadを置いてDecidim上でコメントを書いてもらうようなことがありました。

第1フェーズから第2フェーズへ

今まで申し上げたのが第1フェーズとして2020年から2021年にかけてあったもので、傾向としてまとめますと、やはりパブコメ、先ほど申し上げた一往復半の形に少しプラスアルファを設けたようなものでした。

そうなる背景として、加古川市さんも、兵庫県さんもおっしゃっていますが、パブコメだけだと意見がなかなか集まらない、特定の意見になりがちなので、それをどう多様化するかという課題に対して、こうしたデジタルプラットフォームが使えるんじゃないかという仮説で使われたというものです

次にご紹介したのは、都市部での事例、展覧会も六本木で行われたものですが、いわゆる都市と言われている場所で発生したものでありますし、多様な意見が集まってほしいと、さきほど申し上げた通り参加者が増えることがある種目標になる話であったと思います。

そうした設置側から見た傾向もあれば、中身として書かれたコメント自体を見ていると、「インターネットでの議論は難しいんじゃないですか」という質問があるんですが、具体的な中身を見ると、インターネット掲示板初期のようないわば牧歌的な使われ方がしています。Twitterでも今でも時々ありますが、「探しものが見つかりました、ありがとうございます」みたいなやりとりということです。

そして、牧歌的と言いましたが、その場のノリみたいなものが、どうやって生まれるのかという点も特徴だと思ってまして、やはり役所が設置してるものが多いので、ややちょっとお堅い感じがあります。その一方で、先ほども加古川市さんの際に申し上げた通り高校生のケースのように、あのなんていうんですかね、大人がお行儀よくコメントするんじゃなくてですね、やっぱり自分の表現したいことをストレートにちゃんと書ける世代がその場のノリを作るみたいなことがあります。

若い人はこう思っている、そういう子どもたちがもっとイキイキととこのまちで暮らすためには何が必要なんだろう、みたいなことを大人が考えるようになるという形で、若い世代発でその場がノリが作られるようなものもありますし、当然こういったコメントに対して、「中の人」である担当の職員がどう対応するかということも大きいファクターとしてはあるんじゃないかなと思います。

日本のDecidimは第2フェーズに

そして、第1フェーズのDecidimは現在は第2フェーズに入ってると考えています。大きな特徴は先ほどの都市部とか規模指向ではない小規模の自治体が参加型のまちづくり、まさにフィールドがあるという意味で、自分たちのまちにある特定の領域とかサービスとかをどうしていこうということに取り組む特徴があると思います。

長野県小諸市、神奈川県真鶴町

こちらでご紹介するのは長野県の小諸市とか、神奈川県の真鶴町さん、小規模自治体っていうのは、レンジとしては人口5万人未満だと思ってください。

それぞれまちにある公園だったり、広場を、そこを使っている方々と一緒に新しい使い方を考えましょうといったようなことをオンラインでやりとりするようになっています。

ちょうどコロナ禍でなかなかリアルに集まれないということもありますし、みんなの顔が結構分かっている人たち同士、日頃から会える人たちなんだけど、直に会いにくいときもあるのでオンラインで繋がっておく。これも地域版SNSでもよく見られたことでありますが、それがもう一度起こってるようなことであります。

福島県西会津町

続いて、西会津町は人口6000人弱の面積が広い町で、いわゆる過疎の町です。中学生がこのDecidimを使っているということがまず特徴として挙げられます。

もともと授業でアントレプレナーシップ授業をやっていて、自分たちが思うまちづくりのアイディアを大人たちと実現するため、これまでからも取り組んでいらっしゃって、ここはちょっとテストで使ってちょうど来週授業をするんですが、生徒さんが考えてるアイデアをDecidim上に公開をして、町の人あるいは関係人口の人たちとどうやったら実現できるんだろうということを一緒に考えていくことを予定しています。

生徒さんたちからするとどうしたら自分たちのアイデアが伝わるのか、であるとか、誰と一緒にやったらできるんだろうとか、そのプロセスそのものを学ぶのが、アントレプレナーシップ教育には重要だと思うんですが、その場としてDecidimを使おうということであります。

京都府与謝野町

そうした中で、京都府与謝野町さんも入ってるということかなと思います。昨年12月からサイトを立ち上げて、今年度は実証的にいろんな取り組みをまずやってみようというようなフェーズです。

それが1月から連続で続けているワークショップですし、ちょうど今年度末まで、町の花・木、椿とひまわりですかね、の普及啓発のアイデアを町民さんに募ることもされています。

ワークショップの内容を簡単にご説明しますと、関係人口の方々と開催したワークショップは完全にオンラインで実施し、与謝野町の好きなところをみんなで書いてもらって、スライド右側にグラレコにしてますが、書いたものをみんなで見ながらディスカッションするということをやるとですね、皆さんそれぞれいろんなバックグラウンドを持った方が、東京とかですね、最近与謝野に移住された方であるとかが参加されていましたけれども、それぞれ自分たちが持ってる与謝野町の良いところをシェアする形になりました。

二つ目が、ちょうど先週実施しましたが、宮津高校加悦谷学舎の3年生76人の授業、これも結局は残念ながら現地には行けず、ちょっとシュールな絵なっていますが、各クラスに分かれて生徒は自分のスマホで後輩たちに向けてこの学校で学んだこと、あるいは学んでおけばよかったことをメッセージとしてまとめようということをしました。もう間もなく彼らは卒業する、もう学校に行くのもあと一、二回って言ってましたかね、集めた上で生徒みんなで見て、共感できるもの、これはイチオシだというものに投票することににしました。

最大は24票集まったみたいですが、例えばオープンキャンパスに行こうというアドバイスがありました。オープンキャンパスに行くことで大学選びの決め手になったそうで、それまで考えていたところと違う学校に進学する決め手になるので、そういった機会をぜひ積極的に使ってほしいということを書かれてました。

この他にも、資料集めた方がいいよ云々もそうですし、面接は緊張するとせっかく練習したところが出せないよ、といった多分ご自身の体験を通じて感じられたことを書かれていて、投票によって、それらに対して自分もそうだったというふうに共感してることがここで可視化されてるわけですね。

そうした感覚を持ったことを如実に示していたなと思ったのは、ワークショップ終了後の生徒さんのコメントに現れていると思います。

スライド上にいくつか書きましたけど、そもそもスマホを使う授業ってのがなかなか学校では新鮮だったみたいですし、自分が思ってることを共有するっていうことそのものが楽しかったみたいです。すでに彼らの生活にはSNSがいろいろ入ってるということだと思いますけれども、それがこうした授業の場でもできる。あるいは個人的にはしんみりしたんですが、3年生全員が気軽に話すことがなかった、という感想がありました。やはり集まりにくかった時期もありますし、卒業するとそれぞれみんなの進路も違うので、なかなかゆっくり話せないので、授業の場だったので短い時間でありましたが、話す機会ができて、皆の意見が見れて楽しいっていうふうに率直に書かれていたのはすごく印象的でした。

また、アイデア募集をしているものも、オンラインで提案できることがDecidimの特徴ではなくて、オフラインの融合が特徴と申し上げてきましたが、与謝野町さんはそこをすごく意識されて実施されています。

それが、提案方法の多様化です。真ん中の②直接投稿されてる方もいらっしゃいますが、高校に直接聞きに行って生徒さんと交流しながらアイデアをもらうということもしています。これも重要ですし、オンラインに書けない方は、紙で役場まで持ってくるあるいはメールで送ってくれたら、役場の方で、Decidim上にもいただいたアイデアを共有することと組み合わせています。

そうすることで、多様な人たちのアクセスを保障しつつ、「役場まで提出しろ」だけでなくて、役場がアイデアを聞きに行くという姿勢も同時に出ているのではないかなと思います。

これは、本当にちょっとしたことなんですが、「オンラインのページを作りました。どうですか。」だけじゃない仕掛けが重要なんじゃないかなと思います。

日本のDecidimはこれからどのような方向に進むのか?

駆け足になりましたが最後少し時間を使って、これからのDecidimがどのような方向になるのか、ポイントをいくつかお話をします。

まちの幸福を考える

Make our Cityで説明しましたとおり、「まちの幸福って何だろう」ことをよく考えていく必要があると思います。スライドでは京都大学の内田先生という方が書かれている「これからの幸福について」という著作で、モデル化されているものであります。確か京丹後市さんの方で調査とかもされてると伺ってますが、まちの幸福は「地域への貢献」と、「地域内の社会関係資本」自治会みたいなこともあるでしょうし、昔ながらいろんな繋がりもあると思いますが、そうしたものが影響してますと整理されてます。

その背景には何があるかというと、「地域の一体感」これは社会関係資本と影響してるのはもちろんそうですが、地域の一体感があるかどうか、それはどういった形であるかっていうこともそうですし、あるいは「地域外の信頼」とも関係している。すなわち、町の外からの人たちをどういうふうに受け入れるかという多様性が重要であるということと、それが組み合わさって、地域にどのような貢献を行動として行うかということが出てくる。

その上で、「多世代共創」は、そうした活動を世代間で交流するということもそうですが、ある種の行動がその次の世代にどういうふうに影響するかを考えて、それがすごく意味があると考えるがために現在世代の人がそれを熱心にされる。そうした将来に向けて自分たちのまちづくりを考えるということです。自分たちの今の状態だけじゃなくて、まちの将来に対して何が自分が貢献できるかというようなことをできてる人が多いほど、まちの幸福度は高いというようなことが言えるのではないか、とされています。

であればこそ、このモデルはモデルとしてですね、それぞれの皆さんのまちがどのような特徴を持っているか、それがここで変数としていくつか書かれているものの中で表現されると思いますけれども、それをよく理解して、それを活かさないといけないということかと思います。

であれば、どのエリア、どういったテーマ、どういう人たちと、何をするかということが重要でありますし、今日お話したようなデジタル的なものは、それぞれここで関係づけられている矢印にどのように活かせるのかということが重要です。

つまり、新しく今までなかったものを、このデジタルによって生み出すもそうですし、これまでの特色をさらに強めるもよいと思いますし、もしかしたら従来からあったものなんだけど知らなくて、デジタルによって再発見するということもあろうかと思います。

で、あとは私よく申し上げるのは、そのデジタル田園都市もいいですし、別に「Decidimで〜」と大きく打ち上げるの構わないんですけれども、あくまで着手小局であろうかと思います。

何から手がけるか、それはちょっとしたことでもよくて、大切なことは、それがこのモデルを採用するとすれば、どこからどういう経路で何をするか、それがどうなってほしいかっていうことが明確にした上で、実際にそうなるかどうかをきちんと確かめていくということが重要なんじゃないかなと思います。

方向性のアイデア

参加テーマ・参加ユーザーの多様化と活動の継続性の関係

次に、今まで活動されてるDecidimの話を振り返りつつ、今後の方向性について考えてみたいと思います。

まず、加古川市さんが日本初で始められてから定着に1年かかったということです。それを示したのが右側のグラフでありまして、一番上にある折れ線グラフ、これは30日間のアクティブユーザー数の推移です。

やはり一番左の山、これは2020年10月頃ですが、開始直後はワーッと上がったんですが、やはり沈静化するんですよね。その後、矢印示した右肩上がりの部分は、今度4月に開設する複合施設の愛称をみんなで決めようということがあったんですけど、そのプロセスを通じてたくさんの人が参加するようになったんですね。

その後もう1回数値は下がったところがありますが、その後持ち直して、推移がなだらかになっています。ここが定着のポイントだと思うんですが、盛り上がるテーマが重要ではなくて、いろいろなテーマを用意して、それに参加できる人たちも多様化するということです。つまり、多様な参加者が参加できる多様なテーマを設けることが、活動の継続性、ここで言うと、参加者が継続的に関わっていることにつながるのかと思います。

加古川市さんは多様なテーマで議論をするようになった訳ですが、それはすなわち庁内で担当課に理解してもらって一緒に取り組むようになったということと、それに対するユーザー側の反応も見てですね、こうした活動がずっと続いてる結果ということになっていると思います。

具体的なサービスと結びついたユーザーの声を反映させるメディアに

二つ目は、渋谷をフィールドに企業が始めている取り組みです。ご近所乗り放題のモビリティサービス、月額定額でタクシー乗り放題のサービスでありますとか、コワーキングスペースを区内で自由に使えるサービス、あるいは実際に畑をみんなで活用する要は都市農園みたいなことでありますが、そういった具体的なサービスと、それに具体的に結びついたユーザーの声を活かすことを、このDecidim上でやろうとされてることであります。

つまり、そういった声を集めるメディアが必要だということです。Decidimの活用として、単に意見を集めるということだけなくて、それが具体的なサービスとそのサービスの受け手が具体的に本当にいるか、そういう人たちを結びつけるためのメディアが、こういったDecidimの役割なんじゃないか。

先ほどの小諸市であるとか真鶴町さんのような、具体的な広場だったりまちの使い方を考えるためのスペースと取り組みを通じた利用者の交流、これも一種のメディアと言ってよいでしょう。そうしたものがそれぞれの皆さんがたでもあるんじゃないかと思います。

将来世代の参加、デジタルシチズンシップの涵養

最後が、与謝野町、西会津町でもあった将来世代の参加が重要だということであろうかと思います。それは今日的な意味、教育側からの議論でいうと、デジタルシチズンシップそのものであろうかと思いますし、あるいは主権者教育に近い話だと思います。

それは、選挙への参加という狭い意味ではなくて、まちづくりに参加して自分たちのまちを自分たちで考える、あるいはそうなったらいいなと考えるだけでも、その参加の一つだと思います。

それを何でやるか、Decidimがやりやすいよ、ということだとしても、これもやはりそういった仕掛けが必要であります。スライドは与謝野町さんが実施された授業で先生方が生徒に見せていたものでありますが、すごくわかりやすく説明されてると思います。自分たちが悩んだことは、後輩も悩むであろうと、それをこうしたプラットフォームで共有することで、後輩に伝えることもできるし、自分で考えてるだけでなく友達がどう考えてるを知ることが、自分にもすごく役に立ったというコメントが授業のときにもありましたが、後輩のためだけじゃなくてですね、そのようなプロセスが自分たちにも役に立つわけであります。

高校3年生の今時分、将来に向かって不安もある。そうした意見をみんなで集める経験をし、それを自分なりに咀嚼をして、これから新しい社会に旅立っていくタイミングで、こうした機会を設けることができるかどうか。そのためにデジタルが重要なわけじゃなくて、こうした仕掛けを関係者の皆さんでどうやってつくることができるか、いろんなテーマや参加してもらいたい人たちに対して仕掛けることができるかが、今回のお話でいうところのデジタル田園都市と呼ばれているものの成功の要因の一つになるんじゃないかなと思う次第です。

質疑応答

最後駆け足になりましたが、私からのお話は以上でありまして、ご質問もいくつかいただいてるので、お答えできればと思います。

オフラインとオンラインについてスライドの絵があったと思いますけれども、そういう意味があったのでしょうかか?

お答えとしては二つありまして、一つはDecidimでオンラインで集まってる意見をその場の皆さんにもシェアするということです。要は、オンラインで参加することはできるのですが、オフラインでその場に行かないとその議論を直接聞けないわけですね。

ですので、その議論をきちんとオンラインにも載せてみましょうということも含んでますし、オンラインで出てきた意見を、リアルに集まった人にもインプットしないといけないということでもあります。

二つ目は、その逆にリアルの場が終わった後に、そこに参加はできなかったんだけど、後で見たいという人のために、オフラインで行ったこともきちんとオンラインでも共有していくということです。

この絵は、その双方が必要だということを示していると思います。

加古川の事例で、複合施設の名前を決めるということで盛り上がって定着にという話があったのですが、テーマについては、住民から出したのか、ある程度仕切ってる方々が提示したテーマに対して議論が始まっていくのか、こうした設定についてはどういう感じなんでしょうか。

このケースでは、加古川市さんが提供したものでして、今のところ加古川市発となっています。そこはご質問者の意図もそうであると思いますが、本来は住民・行政両方から出てくるべきですし、加古川市でも、そうした形を準備しようっていう感じになっています。

また、与謝野町の場合、町の花・木のアイデア募集については、そこに出てきたアイデアを元にして、役場が啓発・活用方法について考えたいということですけど、これは実際にその中から何かをしようというテーマはあくまで町民さんの提案起点で始めたい、つまり行政が実施するのではなくて地域にも展開して、実際にその関わりたい人たちを集めてっていうことをやろうとされています。

Decidimでは、もともとそういったことができるような仕組みになってますし、手がけられている自治体・企業それぞれ、最初はこちらからテーマ設定するんだけども、みんなが慣れてきたら、みんなでやりたいことをテーマを出してもらうっていうことが当然予定されてると思っています。

1995年から2002年までの間ぐらいに、まず、メールサーバーが使えるようになったんで地域のメーリングリストを作りました。で、荒らす人が出てきたので畳んで、プロバイダーさんによる地域おこしのメーリングリストに転換して、それをしばらくやってました。
そのときに強く感じたことはね、それを使うことによって地域の人だけじゃなく地域の外の人が地域のことに関心を持って参加してくることができるように、ということがありました。
そういったものをから2000年、2001年だったと思うんですけど、県庁と県民電子会議室っていうのを運営していたことも今日のご紹介されてた嬉しいんですよね。同じようなことを狙っていたものの違うのは、条例制定を狙うワークショップまではやったんですが、ちょっと行政依存度が高かったことと、おそらくツールがパソコンだったことの問題で、浸透するような形で定着できなかったのかなというふうに考えてます。
この新しいというか、新しくないかよくわからないんですけど、やはりスマホというデバイスを使うことがあの一つは、幅の広さを生み出しているのかなというふうに感じました。

一点、これは非常に技術的な側面からのコメントというか質問になるんですけれども、そのスマホ、本当によって得られたメリットって、何があったのかなっていうのが、我々はもう自然にそこを変えてきているというか変わってきていてあまり気がつかないんですけれども、入り口からスマホだっていう世代これは若い方もそうだと思うんですけど、私よりも上の世代も実はそうではないかなというところもちょっと気になっていて、そういうことがもたらしたことって、もし何かご経験から、感じられてるところがあれば、少しお話を聞きたいなと思います。

もう一点思うことがあって、Code for のCodeの意味です。コードはソースコードのコードなんですけれども、今のお話にも全然ソースコードの話はなく、学生がゴミの収集日のアプリ、あれ作るのはコードですごく苦しんでましたけど、本質は多分そうじゃなくて、もう少し幅の広い意味だと思うんで、その辺りの点についてお話いただけたらなというふうに思います。

2点目の方からご説明するといいかなと思います。

Code forのCodeはおっしゃる通りソースコードです。Decidimもそうですが、いわゆるオープンソースのもので、これは誰でも使えるっていう例のやつです。時間の都合で省略しましたが、Decidimというオープンソースで説明したかったのは、Make our CityもそうでありますしCode forの概念もそうでありますが、それぞれの地域で独自のシステムだけを作るのは、やめようということであります。

これは、いわゆる技術の民主化の流れの中で、それに参加することでみんながメリットを得ることができるということです。よく考えると役所という仕組みそのものもそうかもしれません。その地域の住民のためにいろんなガバナンスとか制度を用意して提供する仕組みと言えますが、税金を払っている人たちに対して提供されることが本質で、こうしたものは引き続き維持されるべきことかもしれませんが、オープンソースの活動で提供されたことは、そうしたものとは少し違っていて、それはみんな回り回って自分たちにも返ってくるというものです。そのためにはオープンに活動しなければいけない。

だからいろんな人とオープンにつながって、自分たちが変えたいこと、こうなってほしいことに積極的にコミットしようということでありまして、その行動様式なりが如実に出ているのがこのCodeの言葉の中に埋め込んでいるオープンソースの活動の精神であります。

ですので、コードがないとCode forなのかどうかは、それがどちらが先かっていう話はあまり重要ではないんですが、そういった世界観が一番表れているものが、オープンソースの考え方であり、行政なり従来型の仕組みがやや脆弱になっているところがそうした面じゃないかなと思います。

その上で、1点目の質問は、そうした世界に触れる経験は、スマホによってもあると思います。あるいは、手がけられた事例をご紹介いただきましたが、そうした経験そのものの前なのか後なのかですね、そういった体験をしてる人が増えてきたということも、そのものだと思っています。

かつ、スマホのようなデバイス、もっと言えば、そうしたものを可能ならしめたクラウドであったりいわゆる「第3のプラットフォーム」と言われているものですが、これが各地域に展開できるようになったのがこの20年だと思っています。ですので、特定の技術がどうかというよりも、そうした社会に変わってきたということと、そういった経験をみんながしてきたということにその答えが求められるのかなと思います。

ですので、端的には、スマホを持ってない人でもDecidimは参加できますよね。それは先ほど与謝野町さんの話であったように、今までと同じように紙でアイデアを出してもらってもいいわけです。それはスマホがないとダメなので、それを渡そうというのではなくて、紙に書いて役所に持っていこうというその役所との近さであるとか、自分も何か意見を出そうと思うような、これは先ほどのまちの幸福モデルのとこに申し上げたような、地域に貢献するマインドセットがどう活かされるかといったようなことが、実は重要じゃないかなと思っていて、スマホあくまでそのツールの一つなのかなって思う次第です。

もう一点、作業を中心とした社会コミュニティなかったら成立しなかった側面があると思っていて、そういった中で何がコミュニティの核になるのかっていうあたりが希薄なところに対して、ネットワークを通したその形が作られていくっていうことに何か意味があるのかなっていうことを感じています。

また、そういうことは多分すぐに何かがどうこうなるってことではなく、やりながら考えていくということなんだろうと、さきほどの質問で言えばネットを使ったことで地域外の人と繋がるわけです。

昔の言い方は、「よそ者と若者と馬鹿者」って言ってたんですけど、違う視点を持った人、若い人、議論をひっかけませる人。今は、関係人口という言葉で言うと思うんですけど、そういう関係人口の人たちもこのDecidimの中で可視化されてる例があったらそういったものを見せていただけるとありがたいなと思いました。

可視化されてる例ということですと、直接的な言い方ではないのですが、一つは、私のご説明の仕方で言えば、まだ日本では役所がまだDecidimを使うケースが多いんですね。

それが前提としていることは、やはり役所がそういう地域のガバナンスを運営する重要な主体だと、役所自身も地域の人たちも思っていて、何か課題に対してアクションができるだろう、あるいは住民の人たちも役所にそれを期待してるっていう自覚があるんだと思います。

すると、Decidimを使うとそれとは違う何が起こるのではないか?という期待があるのかもしれませんが、その認識はやや誤りだったということに皆さん気がつくわけです。つまり、Decidimを使ったからといって、そんなに影響を与えるほどみんなこっち向いてくれないとかですね、そもそもいろんな課題があるんだけど縦割りになっていて、Decidimを使うけど、その解決に向けて横断的に推進するといったことを期待するけど、うまくドライブできないとか、そこに皆さん悩むわけなんです。

なので、まわり道した言い方になりましたが、可視化されるのはまずそこだと思います。中には、全然リアクションがないサイトが生まれたりします。先ほど見せた事例でも何かこういうことやってんだとお示ししたように見えていて、あの中には失敗している事例もあります。この活動に参加して欲しい人たちが集まってこなくて、結果としてコメントが集まらなくてっていうことが可視化されています。

で、そうなった役所の方と話してると、「何がまずかったかよく分かった」とおっしゃっていて、この気づきが重要なんだと思います。

ともすれば何か失敗したからどうのこうの、という形ではなくて、これはどうしていくんだろうということから、きっと始まるものであって、日本においてはまだそういった状態だというのが正直なところだと思います。

それは、地域SNSが起こってきた2000年代初頭以降を検証した研究でもそういったことを言われていますので、我々は別に全く新しいことをしてるわけじゃなくて、皆さんと一緒にそれをおさらい、追体験をしながら、とはいえそうした検証を踏まえた部分もあるので、うまくこれまでの蓄積を活かしていこうというふうに思っています。

定着に1年かかったという事例がある通り、まだまだ本当は、最初やろうと思ってる自治体の皆さんがそうである通り、地域のガバナンスを変えていくことが、1年で変わるわけがないっていう、そういうことが徐々に分かっていくのではないかなと思っています。

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