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Tableauを知った自治体のNext Stepを考える(2020-11-14 COG2019ファイナリストフォローアップアゴラ・アフターイベント)

これは何?

2020年11月14日に開催された「COG2019ファイナリストフォローアップアゴラ」のアフターイベントで「地域データ活用体験ーTableau×RESASで地域を見てみよう!」と題して、リンクデータの下山さん、Tableau Japanの尾崎さんと登壇したときのお話です。毎度おなじみUDトークを使って文字起こしした上で、文意を分かりやすくするために、会話調は残していますが、適宜追記しています。

本編

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60人近くの方が残っていただいてるので、ちょっとマニアックな話を用意していて、皆様にどれぐらい響くのかがちょっと自信がないんですが、元々用意していたお話を進めたいと思います。

今、Tableauの尾崎さんにご説明いただいて、Tableauってこういうことができるんだっていうふうに、お分かりいただいたと思います。そうしたときにですね、次にこれを使って何をしようみたいなことが出てくると思います。また、自治体でやってる政策立案がどういうふうに変わったらいいのかなということも合わせてお話したいと思います。

自治体でTableauを広めた(たぶん)

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私、この4月からCode for Japanに入りましたけれども、3月までは京都府の職員をやってました。おそらくですけど、自治体職員でTableauを使い始めた人間としてはすごい早い方だと思うんです。スライド右側は、当時私が担当していた京都府のオープンデータのポータルサイトの中に、Tableauって先ほど作っていただいたダッシュボードをそのまま埋め込むことができるんですね、そこで、いくつかオープンデータを使って可視化をしたものを、皆さんにも見ていただくようにしていました。これは2017年のことです。

で、それを見た人がTableauのほか、可視化のツールっていろいろあるので、本を書いてみようとお誘いをいただいて、「伝わるデータ・ビジュアル術」という本を2019年に出版しました。そこでTableauの章を担当しています。

やってくる未来は、「できたらいいな」の終了でもある

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今日は、政府CIO補佐官でもある下山さんが司会をしてるので、そうだこれお話した方がいいとご紹介するんですけれども、今、政府でデジタル庁の検討を進めている中で、必要な戦略はすべからく立ててしまおうというふうに、すごい勢いで検討を進めていますよね。

その中で下山さんも構成員の「データ戦略タスクフォース」というのがあって、先日第1次取りまとめっていうのが出ていまして、今まではですね、自治体の皆さんも、あるいは地域の皆さんもデータ使って「こういうことできたらいいな」みたいなこと言ってますよね。そこで政府は、ここに書かれたことは実現すると、つまりは、日本は意思を持ってデジタル化を進める、それはやらなきゃいけないということになりました。ですので、今後やってくる未来が、下山さんも御尽力されてまとめつつあるデータ戦略の中に書かれています

その中に何が書いているか。

今日のお話に関わってくることで大きなところは二つありまして、一つはいわゆる「オープンデータ・バイ・デザイン」です。データを持っている行政は、それをオープンデータにできるように設計し、整理したりとか公開していくっていうことを前提に一貫してやりましょうっていうことが書かれています。そのことは、すでに策定されているオープンデータ基本指針には普通に書かれてあったんですけれども、やや中途半端だったのを、改定するということも位置付けられています。

もう一つは、なんかみんな言ってるけどなかなか進まないEBPMですが、これも「実現」と書いているので何かしらからですね、進めることになる。そこで書かれているのは「高度な政策検討」をするということで、皆さんもお感じの通り、例えばTableauのようなですね、簡易に解析できる環境が必要だということ、それができる人材を育成しよう、ということが謳われています。

こうしたことが今後やってくる未来なので、我々はそれに向かってどうやっていかなければいけないか、というふうになってくると思います。

今後やってくる未来はTableauを使ってできることが増えていく

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そこで、Tableauとの関係でいうと、一番重要なのは、私は、この取りまとめを読んだときに思ったのは機械判読性のことです。先ほど尾崎さんが、TableauとRESASのデータを連携させるために、Web Data Connectorを使ってRESASのAPIを取り込むんですよって、さらっとおっしゃってましたが、実はこれが出来てるって結構難しいことなんですけれども、今後はそういうことが当たり前になるようにしていかないといけないというのが言われている訳です。

早い話がそれがないとですね、求められている高度な政策検討ができないということでありまして、簡易に解析できる環境の整備として、データがうまく繋がっていくということが極めて重要です。

つまり、スムーズにデータが読み込めるかっていう話と、もう一つはTableauさんにぜひ期待したいことなんですけれども、1ヶ月単位とかでですね、定期的にソフトのバージョンアップが行われています。その中でどんどんできることが増えてくるので、データを用意する側がきちんと機械判読可能な形でデータを用意していくことで、Tableauさん側がデータを使っていろいろできるようにしてあげるというふうな関係だということです。それがうまく結び付くと、高度な政策検討に向けた「正のループ」ということで、お互いがWin-Winになるような関係がもうすぐ始まるんだろうなということ、が期待されている訳です。

自治体は、データ可視化のプロセスを理解しよう

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とは言ってもですね、これは私のnoteの中に、ちょっと載せていますけれども、

とはいっても、じゃあどうするのみたいな話は、まだなかなか理解が進んでいるというふうには思っていて、それはがんばりましょうということですね。どういうことするのっていうのは、なかなか口で言ってもピンとこないと思うので、実際にやってみましょうということを申し上げています。

RESASを使ったデータの「探索」

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例えばRESASの話で説明しますと、使われたことある方、この中にもいらっしゃると思いますけれども、一番面白いなと思ってるのは、「データの探索」であります。「データの探索」って言い方は難しいですが、実は簡単でありまして、例えばRESASには、農業に関するデータがいろいろ入ってるんですけれども、農業就業人口のデータでは、農業に従事している人の平均年齢だとか、その人数はどのくらいなのか、みたいなことが分かります。

それは、農業をしている人に着目したデータで、その農業をする農地がどういう状況にあるかっていうデータ、耕作放棄地率というデータもありますけれども、そっちはどうなのかな?と気になったら、それがちゃんと出てくるわけですよね。そうやって気になることをデータを渡り歩くように調べていくことで、自分たちの地域の状況はどういうことあるんだろうと考える訳です。また、そういう統計データがあるからなんですが、農地でどういったものを生産してるんだろうということも分かります。

また、RESASはデータを渡り歩いていくことで、自然とですね、データ分析に必要なこともできます。例えば、農業就業人口では、時系列で比較することで、5年経ったらどれぐらい変わったかっていうことが分かります。さらに比較の中でも、全体と部分の比較みたいなことも、データ分析では必要ですけれども、耕作放棄地率では、県単位と個別の市町村の違いがどうかということの比較も、グラフの比較でできるようになっています。では、その個別の市町村で何かどうもデータの出方が県全体とは違うようだとなったら、その原因が何だろうというふうに考えますよね。それを別のデータから確かめましょう。この場合は何を作ってるのかな、ということですけれども、作ってるものが県全体とその市町村で違うっていうことで、スライド一番右のところで、タイルの大きさでその生産額を示していて、県全体のところでは大きな割合を占めていないが、その市町村では多い茶色のところがあると分かります。これ、具体的にはお茶とかそういったものなんですが、そうした特徴が分かる訳です。

データの探索〜周辺情報を探す〜

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でも、そこから先はRESASだけじゃなくて周辺情報を探していかないといけないです。今回は別でまとめた資料でご説明していますが、滋賀県甲賀市の事例で、耕作放棄地率が滋賀県内でワースト1位らしいんですけれども、その情報は甲賀市が作成した資料にその要因とともに出てきます。また、何を作ってるかと言えば、お茶だって申し上げましたけど、耕作放棄地率との関係でお茶の農家さんが置かれてる状況ってどういったことなのかなっていうと、これは近畿農政局のページに、お茶の農家さんがインタビューに書かれています。こうしてデータを渡り歩いていく、ことには、テキストのデータも含まれていてですね、これ探し出していくっていうのはコツがいりますけれども、こうした様々なデータと組み合わせて、よりよく理解しましょうみたいなことが必要な訳です。

Tableauを使って仮説を考える

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そういったところで、Tableauを使って仮説を導き出すプロセスをちょっと実演をしてみようと思います。

自転車盗の発生状況(京都府、2018年)

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元のデータは、全国の警察本部が提供しているオープンデータで、自転車を盗られたみたいな、7つの犯罪手口、1年分のデータで、どこでいつ、誰が盗られたかが載っているデータです。これを、Tableauを使って可視化しています。今日は一番件数が多い自転車盗難のダッシュボードを見ていただきます。

データの中身を見ると、被害者の年齢、10代とかですね、あとは日時があるのでそれを月別でまとめたりとか、発生日がありますから、その曜日が計算できるわけですから曜日を当ててですね、それを時間帯別に見る。あと、施錠した自転車が盗られたとか施錠していなかったというデータも入っているので、それを一覧できるようダッシュボードの形で可視化します。

データを探索する

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Tableauの便利なところはですね、気になったところをクリックして、ソート分析みたいなことができる訳です。例えば「10歳未満」で盗られているのはどういうことかな?、と思ったらそこをクリックすると、施錠してたけど盗られた・施錠してなくて盗られた割合はこれぐらいです、とか月別や時間帯で見るとどうなのか、ということが絞り込まれて出てきます。
同様に、「小学生」という属性でもデータがあるので、どうなんだろうみたいなことが見えてくる。どんどんクリックしていくと、いろいろなことに気がつくわけです。

属性ごとに「施錠した・していない」の割合が違うのか?

で、施錠した・施錠していない割合が、小学生・中学生といった属性でどう変化するかっていうのをちょっと見てください。

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施錠した割合がちょっとずつ増えてますね。

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時間帯の違い?

また、時間帯も少し違うなっていうか、数が違うので、印象は違うかもしれませんが、高校生の場合ですと、朝の時間が多いんだなと分かります。大学生は、夜ですね。

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じゃあ、小学生どうなんだっけというように、気になったところを押して、確認してみることができるわけです。

気がついたことを可視化していく

逆に言うとですね、ただグラフにするだけなくて、まず、こういったものを作るときに大切なのは、自分が気がついたところを他の人にも共有するために、自分なりに気づいたことを可視化する。そして、皆さんがこれをご覧になってですね、「じゃあ、こういうのはどうなのか」と気になることあると思うので、「じゃあ、それをちょっと見てみましょう」みたいな格好でやりとりができる訳ですね。

私がダッシュボードを作るときに気づかなかったことを、皆さんからいただくことで同じデータを見ることで、議論が深まるということが一番重要です。BIツールは、そのために生まれてきたのだと思いますけれども、こういったことを繰り返すことが、私なりに考える政策立案の最初のプロセスじゃないかなと思っています。

仮説を作ることは政策立案をすること

可視化によって多くの人がデータを見る、政策立案に参加する

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話をまとめますと、「なんだろうな」と思うことが、政策立案をする第一歩であります。その際、このようにダッシュボードでデータを可視化するっていうことが一番大事でありまして、その意味は、多くの人が政策立案に参加するそのものであります。今までであれば専門の担当さんだけがやるとかですね、そういったことがあると思いますけれども、今回の「チャレンジ!オープンガバナンス」コンテスト(COG)も、いろんな人がデータを見て、みんなで議論するということが当然の前提になっていると思います。

それはこうしたTableauのようなツールがあることで、いろいろな人たちが協力できるようになるんじゃないかと思いますし、先ほどのデータ戦略で、日本が今後進むべき中にも、そういったことは当然のように前提とされているんじゃないかなと思います。

なぜなのか?を考えることは、そのシチュエーションへの理解が大事

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先ほど、施錠した・施錠してないっていうのが、年代によってちょっと違うみたいなことが、なんとなく分かりました。

そうすると「何で違ってくるのかな?」っていうことに皆さん当然思いが及ぶ訳ですね。その場合に、Tableauのダッシュボードの中で盗難箇所を示した地図の情報もありました。これは、実際に盗られている現実があるわけなので、例えばですが、駅の近くであれば、そこで残念ながら自分の自転車を盗られた人がいるんだなと、イメージを持って、その盗られるシチュエーションをしっかり理解する、これもCOGで言われてるところだと思いますが、それを実際のデータで確認する。

時間帯とか場所について、小学生であればですね、私はこれは塾の帰りとかですね、小学生も最近塾忙しいみたいなので、塾が終わって帰ろうって時に盗られていることに気が付く、とかなのかなとかって思って、実際の場所を確認するみたいなことを繰り返すことで、これがそうなんだなとかですね、あるいはそう思ってみたものの、実際ちょっと違うんじゃないかな、といったことが分かるようになる訳です。

これまでの施策はどうだったのか?も考える

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またですね、そういうことを考えていくと、今の政策はどうやってんだろうとか、それが本当に効果があるのかっていうことも同時に考えられるんじゃないかなと思います。

よくある「鍵してないと盗られちゃうから気をつけましょう」って啓発しますよね。それは当然なんでしょうけれども、さっき見てたようにですね、大学生って半分ぐらいはですね施錠してても盗られている訳です。小学生はほとんど施錠してないで盗られている訳ですね。

であれば、大学生と小学生で「鍵してないと盗られるよ」っていうことに対して、小学生は「確かに忘れないようにしよう」っていうふうに思うかもしれませんが、大学生からすると、その半分はですね、「俺、鍵してても盗られてんねん」みたいな話で、その啓発が意味をあんまりなさない訳です。

であれば、年代ごとに啓発内容を変えるような話が必要ではないか、みたいなことが出てきますよね。その時に、既存の政策と比べてですね、それがどれぐらい意味があるのかなということを考える。政策は啓発の他にもあると思います。スライドには今回準備していて思ったことを書いてみました。

おそらく皆さんお感じになることが他にもあると思います。あるいは、これは京都のデータですが、他の地域では別の事情もあって、他にも考えられることがあるとか、同じデータをみんなで見て気がつくことをどんどん出していってですね、それを比べて行って議論するっていうことが、今後はもっとやっていく必要があるんじゃないかなと思います。

政策立案は日常業務

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私がずっと思ってるのは、役所って予算要求の時ですね、そこだけ何か議論するんですけれども、先ほど実演したようなことは、日常業務だと思ってます。逆に言えば、日頃からできるようになってないから、予算を作るっていうときだけに集中してるんですね。

ですので、それは日頃からやって欲しいと思います。Tableauの場合は、先ほど尾崎さんのご説明の中で「Tableauは、考えながら操作できるんですよ」っていうことをおっしゃっていましたが、まさにその通りで、実演こそが、 Tableauの価値を出す最大のものなのです。

もう毎日触りましょう。

私は毎日触っていますが、それはいきなりそこまでするかはありますから、皆さんできるところから、一人一人ができることをまずやるということがまず大事なんじゃないかなと思います。

例えばsunabarがあるじゃないか

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そういった中で、Code for Japanではですね、TableauさんだけじゃないですけどいろいろICTツールで便利なものがありますので、そういったものの体験型のセミナーをやっています。尾崎さんにも登壇いただいてですね、ちょうどお題として今日お話いただいたマイナンバーカードの普及率だったんです。そのダッシュボードを作る手順を実際に実践していただいてます。

YouTubeで動画を見れますし、ファイルデータもダウンロードできますので、まず触ってみていただければと思います。


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