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【政策参与のおはなし(その17)】これからの行政サービス・役場のあり方 〜デジタルの視点から〜(2024年1月31日第3回吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会)

これは何?

※以下、テンプレ的に吉野町審議会の場合は同じ記載です
2023年11月から設置された奈良県吉野町の審議会「吉野町行政サービスの変革・新庁舎整備検討審議会」の委員になりました。

参与としての肩書で、他自治体の審議会に参画することになったので「政策参与のおはなし」という括りの中で審議会で活動を記録するものです。

審議会では議事概要なども公開されていますので、基本的にはそこの私パートの抜粋を中心にしつつ、補足があれば追記する(今回は小見出しをつけました)スタイルでと思います。

話題提供しました

2月19日に会議録の速報が掲載されました。第3回審議会は、「行政サービスの変革について」をテーマとした回で、事務局から①町民の役場の利用状況、②役場行政サービスの現状と課題、③行政サービス変革による理想像について説明があった上で、私から話題提供をしました。

はじめに

これからの行政サービス・役場のあり方をデジタルの視点で考えるということについてお話をして、また皆さんと意見交換したいと思います。先程事務局から資料(①吉野町における行政サービスの変革について②職員の働き方に関するアンケート結果③職員の働き方に関するアンケート結果から見た役場の課題)のご説明を頂きましたが、私の話をする前に、こうした資料をきちんと提供いただいて、かつ職員の皆さんも短い年末年始の慌ただしい時期にアンケートにご回答いただいたことに感謝申し上げます。

またどこの役場でも、と私は思っていますが、こういう資料をきちんと公開して、こういう場で議論の材料にする、これは最終的には公開されますし、今後の議論においてもベースとなる非常に有意義な資料をご準備できるという役場が、いかに皆さまの生活を陰日なたで支えているかということを、改めて私は思った次第です。

お話のポイント

私のお話は、初回に自己紹介がてらお話しした私のコメントの2点に集約されているつもりで、1回目の時にお話をしました。

行政サービスのあり方と職員・組織のあり方の両面から取り組む視点

それはすなわち、行政サービスの変革を考えていく際の視点は2つあって、1 つは行政サービスのあり方です。どのようなサービスにしようかというところで、その裏表の関係にある、職員や役場のあり方、その双方に目線を持って考えないと、いいバランスにはならないということです。極端な話ですが、サービスをどんどん良くして、そのために職員の仕事がハードになると持続可能ではないですし、職員の仕事のやり方に合わせて何かをやると、町民あるいは事業者にとって、一体何だろうということが、これまでもあったと思います。

前向きに考えれば、今のバランスをもう一回組み直すということが行政サービスの変革そのものですが、それは何か新しいことをするだけではなく、あくまでもその視点を持って考え直すことが重要であるということです。従って、その中には新しいものも入ってくると思いますが、これまでの良かったところをきちんと生かすこともまた重要な考え方になろうと思います。

実現までの時間を有効に活用する視点

2点目が、実現までの時間を有効に活用しようということです。先程の事務局のお話の中にも、例えばセキュリティーやデータ連携の仕組みについては、検討が進められているが、今すぐには実現しないという話がありました。結局は、この審議会でどういう提言を出していくかということもですが、それが今すぐ実現するとはならないことは、皆さんもお気付きのとおりです。

では、いつになったら実現するのか?と考えるのではなく、その間にいろいろやれることがあるということです。

例えば、何かよく分からないけれども良さそうだというものが仮にあったとして、それをきちんと理解して、自分達でも使ってみて、フィードバックする。

例えば、「こういう所はいいと思うけれども、こういう所はどうにかならないものか」ということです。

これまでも、役場と町民の間で、そのようなやりとりはいろいろとしていると思いますが、こうした新しいものをつくっていく時においても、その時間を有効に活用して、知らぬ間に勝手にできているということではなく、これに関わる人達がその時間をお互い上手く使い、実現まで共にやっていくという視点を持ちたいと思います。

ですので、ある種夢見事のようなことを言いつつも、一方できちんとそのために地道に何をやっていくかという考え方も重要ですし、その視点は1点目のことと兼ね合いがあるという話をしていたつもりです。

これまでの議論+1

最初の行政サービスのあり方と職員・組織のあり方についても両面です。これまでの議論を私なりにプラスワンしたいと思います。

問いかけが「庁舎のあり方」になっている面もあり、防災でもそうでしたが、ハードとしての建物にどういう要素が必要か、どのような機能が欲しいのかと、どうしても必要・不要 のような議論になってしまいますが、それだけだと皆さんが思い描くものが実は実現しにくいということです。

皆さんの日常でもあると思います。例えば家電を買って使おうと思ったら、「何か少し違うな」という感覚に囚われることがあると思いますが、行政サービス・ 役場も同じです。それをハードの面あるいは機能面だけで考えたら、それは少し足りない面があります。下の段にあるとおり、「行政サービスが良くなって欲しい」というのは皆さんの共通事項だと思います。

具体的に何なのかということを、より具体的に議論することが、今後の議論の指針になるといいますか、何のために行政サービスを向上させるのか、それは町民が幸せになるためではなくて、そ の幸せとは何だろうということを、青臭い議論になる面もあると思いますが、それを具体的に議論することが大切です。

なおその時に庁舎というとハード要素という言葉に引きずられると申し上げ ましたが、ここで申し上げている行政サービスも、やや注意が必要です。

サービスの受け手からすると、「サービス=してもらうもの」のように言葉のニュアンスとして受け取りがちですが、それを裏返すと、役場にこういうことをして欲しい、こうするべきだ、というような話にだけになると、良くありません。

それは先程のあり方と職員・役場のあり方が、裏表で結び付いているということになるので、過剰な要求になるような議論をする場ではないと思いますし、皆様方も、そういうつもりではないのに、いつしかそのようになってしまうのが、「サービス」という言葉のニュアンスから、どうしても考えの枠組みがそこに引きずられてしまうことには注意が必要です。

私の今までの話もそうですし、これからご紹介する議論も、そういう枠組みを外して考えてみましょう、ということを強調して申し上げます。

デジタルの視点?

前置きのようになりましたが、次に「デジタルの視点から」考えることはどういうことかということです。

デジタルに関する学識経験者として呼ばれていますが、私が申し上げたいのは、便利でデジタルなツールをご紹介する立場の人間ではなく、日本でこれからデジタルを進めていこうという意味の「デジタル」とは意味合いが少し違うことをまず共通理解として持っておきたいと思います。

私も今日京都から近鉄に乗って来たわけですが、この絵のように、多くの場合、 車内ではこうした風景が見られます。スマートフォンが生活に浸透して、様々な便利なサービスが世の中で使われるようになり、新しい行政サービスもこういう手のものではないのかと思うかもしれませんが、デジタルの視点というのは、これに近いものもあるのですが、違うということです。

デジタルの視点とは、「便利なツール」そのものではない


「便利なツール」として考えると、使える・使えないを分ける議論になりやすい

なぜなら、デジタルの視点というものは、便利なツールそのもの、例えばスマートフォンや何か新しいデバイス、サービス等、そのものではないということをご理解いただきたいと思います。

これまでの議論にもありましたが、デジタルをそういうものとして捉えると、それを使いこなせる人、使おうと思う人とそうではない方を分ける議論になってしまいます。

こうした分ける議論をするとどっち付かずになりますので、考えたいのは、そういう人をデジタルというもので分けない考え方を取りたいということです。

「俯瞰的にサービスを考える視点」として捉える

2 点目は、ツールやスマホのように形があるものに着目しがちですが、ここでは、「そういう意味なのか」と思われるかも知れませんが、デジタルで考えようという時に重要な視点は、使う局面だけではなく、もう少し目線を広げて俯瞰(ふかん)的にサービスを考える視点、そして物事を考えようということを、デジタルの視点とよく言われます。

これは言葉のニュアンスもありますが、どうしても我々は、いろいろなデジタルツールの恩恵なり、そういうものがあるということを先に見聞きしますので、そちらに引きずられてしまいます。

しかし、肝になり、かつそれが便利だとなる視点は、いろいろな所に目配せが利いて、それにより全体的に便利な体験を提供できているかどうかをデジタルという時には考慮しますので、そうしたものとして今回の問題も捉えたいと思います。

「デジタルでものを考える」はアナログ的なアプローチもある

ですので、サービスの内容と職員組織を裏表で見るという話は、その表れの一つです。そうした考え方や視点、そういう議論をしないようにすることを扱うのがデジタルで、表れ方として、いわゆるデジタル・アナログと言われるアナログ的なアプローチの方が実はいいのだということも、そういうことなのだろうかと一見思われるかも知れませんが、デジタルでものを考えるというのは、そういうことも含むものとしてご理解いただき、今回この場で議論するようなことは、そ うしたものとして議論する必要があります。

デジタルを活用する未来に向けて

デジタル庁ホームページ
https://www.digital.go.jp/news/e840c89b-67f8-4199-8250-06c55d344101

そうした議論の仕方は、実は国でデジタル庁ができて、今いろいろな改革と国全体としても進める時に、彼らもそうした考え方を取っています。理解しづらい面がありますが、それを端的に示している分かりやすい資料があるのでご紹介します。

28プラス1の言葉

「デジタルを活用する未来に向けて」という冊子が出ています。その中では、 28 プラス 1 の言葉で説明をしようとしています。どうしても行政の文章は堅苦しい文章でできていて、小難しいことを書いている部分ももちろん必要ですが、それだけではうまく捉えきれない事象・イメージを皆さんと共有するために、キーワードや具体的なイメージが湧くような文章で整理されている文章になります。

この後、私も出しますが、キーワード的なもので考えましょうと申し上げているのは、こうした考え方と似たところがある訳です。今日は 29 の言葉の説明はできませんが、気になるキーワードがあれば、ぜひまた教えていただきたいと思います。

デジタルを使って何ができるかではなく、みんなのありたい姿を実現する。

その中で一番大切だと思うのがこのページです。デジタルを活用する未来に向けて、どういう向き合い方をするか。「デジタルを使って何ができるかではなく、みんなのありたい姿を実現しましょう」、と。

要するにツール的なものとしてのデジタルは、そのための手段であるということです。囲みで書いているとおり、そういう時そのように「ありたい姿」を実現しようという時は、そのサービスを使っていくことになる人達の考えを聞きまし ょう、と。そして、その人達のありたい姿を共に描き、その実現のためにデジタルを使っていくようにします、とふんわりした言い方かも知れませんが、哲学を感じる言葉遣いかと思います。

サービスを使っていくことになる人たちの「ありたい姿」

ありたい姿は、総合計画にある

私なりの理解ですが、サービスを使うことになる人達のありたい姿、例えば吉野町においては初回の時にお配りいただいた総合計画の概要版の表にこうした絵があり、拡大すると、いろいろな人達が写っています。

総合計画とデジタルで何が関係するのかと一見思われがちですが、「ありたい姿」を描くというものを吉野町において一番謳っているのは総合計画かと思いますので、そこで謳われているものを実現していくために、こうしたデジタルを使おうということです。

また、そのサービスを使っていくことになる人達が、それぞれ現在抱えている課題を同時に解決する、職員とサービスのあり方そのものの観点を俯瞰的に見た時に、誰かのためだけのサービスを提供するのではなく、それが関わりを持つ人達の課題も同時に解決するようなもの。

鳥の目、虫の目、魚の目

それは例えば、町民の課題解決が役場職員の課題解決になることが一番多いと思いますが、そのような視点を持つことを 「鳥の目、虫の目、魚の目」と言います。 たまたまこのイラストの中にも、魚と鳥はいます。虫はいないなと思いましたが、よく見るとカエルはいました。カエルは虫ではないですが、いろいろな視点で捉えることができるし、既に吉野町の中にもこうしたものが描かれていること が最も重要なポイントではないかと思います。

ですので、今回の取り組みも、必ずこういう総合計画の実現に資する、今後も累次改訂されると思いますし、第5次の時にそういう議論があったと思いますが、今後も将来に渡って議論する時に、今回の話あるいはそれに伴って出てくる庁舎や新しい行政サービスのあり方が資するような観点が必要です。すなわち、 将来に向かってこうした今、私達が取り組んでいるものが関係して活き続けるという視点かと思います。

審議会で何に取り組むか?

そうした前提を置いた時に、審議会でデジタルに関して言うのであれば、あるいは行政サービスのありたい姿を描く観点でいえば、何に取り組むかが重要ではないかということです。

サービスやツールを選定するのではなく、ありたい姿とそれを示すキーワードを作る

私なりの理解ですが、こういうサービスをこうしたツールでやって欲しいということを決めるのではなく、あくまでその前のありたい姿、私はこうあって欲しい、こういう人達はこうあって欲しいのではないかという、なりたい姿を示すこと。それはなかなか表現しづらいことも含まれると思いますし、かっちり書くの は難しいと思いますので、キーワードを幾つか出すことが、今後考えていく時に指針になるかと思います。

役場の「場所」ではなく「◯◯」の問題

今までの議論を伺い、そのキーワードのヒントになるのではないかと思うものを幾つか紹介します。

1 点目は、役場ですが、これは「場所」ではなく、別の「何か」です。その中に場所という要素も含まれるかもしれませんが、これが何かということを一緒に考えていくこと。私もこれが何かというものがまだ出てこないので、降りてくるのを待と うと思います。

庁舎というと、どうしても目に見えるものになりますが、それだけではない所に着目する必要があるのではないかという意味で、役場の場所についての話、どういう場所にないとこのような機能が充足しないという話が、一方でありますが、その中で実現しようと思っていることが果たして何か。

安心かも知れませんし、堅牢かもしれません。すごくいいものかも知れませ んが、何の問題なのかのキーワードは必要だと思います。その際には、今申し上 げた、どのように活用されることがありたい姿なのかで、何か評価される言葉が必要ではないかということです。

必要な人に必要なサービスを届ける

2 点目は、ありたい姿を一緒に考える人達の観点で、必要な人に必要なサービスを届ける、これは当たり前のことのようでいて、実現が難しいことでもありますが、これはぜひチャレンジしたいことです。

先程、事務局のご説明の中に、現状についての情報やその状況の中に置かれている職員、役場組織の状態もあったわけで、そうしたものを把握した上で、今後どうしたいのかを考える視点だと思います。

これは先程の 29 の言葉のカードの中で、幾つか関係しそうなことを並べてみ ました。これだと言うつもりはないですが、そうした時に、必要な人にはどのような人がいるのかというのは、おそらく我々委員の中でもまだ共通認識がないかもしれません。事務局とのキャッチボールの中でも、まだ何かこぼれているものがあるような気もしますので、今回の議論を通じて、我々の認識を合わせていくこともそうですし、事務局との認識を合わせていくことを考えたいと思います。

そういうことを今後もやっていくために、考え続け、可能にすることを表すよう なキーワードを探していきたいと。その時には、「必要な人に必要なサービスを届ける」的な何かが要るかと思います。

「近い」役場は、「距離」ではなく、「時間」?

3つ目ですが、事務局のご説明の中に、役場と町民の総接触時間を増やそうということもありました。

総接触時間

今回の議論の中でも、役場が近いかどうかの場所という意味ではなく、いわゆる距離的に近いか遠いかという話もあったと思いますが、 これは距離の話ではなくて、時間の話なのではないかと思います。

それが事務局のご説明の仕方であれば、「総接触時間」という概念かと思いますが、それに関わるようなこと。その時に、心理的・距離的に近いことが町民の安心感に繋がり、それが形として表れるのが、役場がどこにあるかということで見えると思いますが、それだけではない要素も含まれていることはお気付きかと思います。

職員のやりがいとの関係

またアンケートにも出てくるように、職員のやりがいとの関係も、距離というよりは何かに時間、それがそうではない状態の時間が長いので、やりがい、ワークライフバランスがどうというような話は時間の概念かと思いますので、そこに着目した考え方も出したいと思います。

業務の効率化と充実したサービスの両立

また行政サービスを効率化・スリム化しようという議論もありましたが、事務局もそういうニュアンスだと思いますが、それは裏返しでサービスを充実させることと一方でスリムにすることと両立させること、すなわち全体の量で見た時に、行政の提供するサービスにメリハリを付けようということだと思いますし、 職員側から見た時には、しっかり時間をかけて取り組みたいことに時間をかけることを実現するというように表現されることではないかと思います。

職場に対する評価、人材確保の観点

またこれを総体で見た時に、そうした役場、業務・サービスが実現している職 場に対する、町民、事業者の評価も高まることはもちろんですが、その役場組織 で働きたいという、いわゆる人材確保の観点もあります。そこで働き、成長し、自分が役に立ちたい、ということを職場においては重視することが職員のアンケート回答にあります。

魅力ある職場と言うと、言葉としては平易な言葉になりますが、それが重要であることも盛り込みたいと思いました。

各地の取り組みを見てみよう

そうした問題なり、テーマで考えている自治体は全国に数多くあり、吉野町だけの話ではありません。裏を返せば、吉野町が今回考えていることは全国に対してもフロントランナーですが、どれだけ先に進んでいるかは重要ではなく、皆さんが同時進行的に取り組んでいます。

私は小難しい感じで申し上げましたが、結局どういうイメージかということをご紹介するために、動画を 2 つ連続して見ていただきます。必ずしもこれに引きずられる必要はありませんが、キーワードを探す意味でも、こういう表現をされている何かを吉野町で形になった時に、動画になると一体どうなるのかを皆さんにお伝えするために、ご覧いただきたいと思います。

1 つ目は Google を使った動画ですが、宣伝をしたいわけではありません。 ここで何が実現できているかということをご説明する映像です。 時間も押していますので、駆け足でもう 1 つ。

自治体フロントヤード改革

フロントヤードという難しい言い方をしていますが、 住民と行政の接点である窓口や庁舎という場所をどう変えていくかについて、国を挙げて取り組んでいる話になっています。

書かない窓口

例えば先程の資料の中に「書かせない窓口」がありましたが、今導入しているのは 304 団体/1,741 団体、町村は62 団体。多い少ないかの議論をしたいわけではなく、同じように庁舎の建て替え等を含むかどうかは別にして、居抜きの状態で窓口を変えよう、それをどういう形 に変えていこうということは、いろいろな自治体が取り組んでいるということを 申し上げたいと思います。

庁舎整備を契機にした働き方改革

また庁舎の整備、先程の職員のワークライフバランスや働き方という観点で も、先日役場の職員と意見交換を持たせていただいたのですが、現状の限られたスペース、配置のあり方をベースにして、限定的になりますが、いろいろな創意工夫をされています。

ですが、何かしら庁舎を変えていくということは、それを元々持っている、やりたい・ありたい働き方に、それを現状のできる範囲でやっていることをもっとありたい姿に変えていくチャンスでもあるという時に、これも同様に全国各地の自治体で試行錯誤しつつ、トライが進んでいる事柄でもあります。

実現までの時間を有効に活用する

そのような取り組みを実現までの時間を有効に活用しようという観点で考え た時に、注意が必要です。

創意工夫に多くのバリエーション

自治体フロントヤード改革における創意工夫で、ここにA~D までの「書かせない・待たせない・迷わせない・行かせない」と、入口が 5 つあります。

これを組み合わせる場合もあるのですが、その後のやり方には多くのバリエーションがあります。それは、レストランで「これとこれをトッピ ングしよう」というようなことを言っているわけではなく、やり方はたくさんあるわけです。

アプローチは唯一ではない

正解は一つという議論ではなく、町として何を選び取っていくかが重要になります。ツールで考えると「これ、どれ、あれ、それ」の話になりますが、そうではないということです。ですので、これから事例を調査しようという 話になった時も、国も事例をたくさん出していますが、どれを選ぶかという観点は違うのではないかと思います。

アプローチをどう決めるか?

デジタルの活用は、改善が進むことを織り込んで取り組む

デジタルをいろいろ活用していく視点を持って何かを選び取っていく時には、取り組むと状況は改善していきますし、それは将来に渡り、効果を生んでいきます。

費用ではなく未来への投資

見た目、イニシャル、最初の導入の費用がかかるという話も場合によってはあるかもしれません。庁舎の整備となれば、それなりの予算を長期に渡り、地方債を含めてやっていくということは、これはすなわち投資です。

未来への投資として何ができるかを考える。そのためには誰のための投資かを考える必要があるということです。

「独自」を狙うのではなくスタンダードなものを作っていく

それから、よくありがちですが、「独自の」とか、「吉野町が初の」ということを言いたくなるかも知れませんが、2 段目にあるとおり、たくさんの人や他の自治体でも使うやり方が今後は正解になりやすいです。

費用面もそうですし、それを業界として、これをどんどん使いやすくしていきましょうと。それは 5,000 人 ないしは今後人口が減ってしまうかもしれない地域で考えるのではなく、日本国全体というと大袈裟かもしれませんが、こうした問題に取り組むことがこれから始まる中で、吉野町自身も何ができるかという観点。

広域で活用できるかどうか、吉野町が置かれた状況が他にもありうる

そして、すごく身近な所では他の行政サービスも、これまでから広域で連携するという取り組みが吉野町では始まっていると伺っています。

今回の取り組みについても、やる順番は吉野町が先かもしれませんが、これに続く近隣自治体も同じようなサービスを使うということが合理的ではないかという観点です。手続き等は吉野町でやるが、他のサービスは隣の町村でやるケースがあったとして、それらのやりとりが違うことは皆さんにとってストレスかと思います。

では、その周辺の人達と行政を一緒にしようという意味ではなく、そこで得られるサービスが同じであれば、その人達はみんな幸せだろうということを、今回の取り組みの中で視点として持っておくことです。

ですので、後に続く自治体にとってはどう なのか、一緒にやれるようなことはないかということを考えることも必要ではないかと思います。

変革には時間がかかる

もう1つ時間のことで、それを変えるために、並大抵のことでは成し遂げられないということです。

「書かない窓口」を日本初で始めた北海道北見市は、2011 年から始めて、10 年ぐらいやっています。最初は手探りのこともあったと思いま すが、形にするのに 5 年、そこから先、スタートするということを今もずっとされています。

それは職員とサービスを受ける住民と一緒になり、ああでもない、 こうでもないというのをひたすら繰り返すが、既に見えていますので、吉野町もそれぐらい時間がかかるかということもありますが、同じように時間がかかると 見ておいた方がいいです。

庁舎整備について紹介した愛媛県西予市の事例でも、ステップを何回かに分 け、途中コロナで中断しながらも、10 年ぐらいやって形になってきたと言われているので、目の前の成果が出ないから「これがどうだ」ということではなく、後の成果を見越して今、頑張ろうという視点が必要ではないかと思います。

そうした時に、災害対策上、整備を急ぐ必要があることは理解しつつ、整備が完了するということは、スタートであると思います。そのためにも、役場と町民、 あるいは事業者といったサービスを使う人達が一緒につくりましょうということです。

整備が完了するのは実現ではなくスタート

今回デジタルあるいは DX という言い方で取り上げられたテーマですが、これまでのやり方を変えないといけないという言葉は、他の言葉でも今後出てくると思います。

今後の変革が求められる時を見据えた取り組みにもなる

そうした時に、今から始まるこの取り組みの経験が、今後別の形で何 かを変えなければいけないという時に役に立ったと。あの時の議論が、今は実現 していない面も出てくるかも知れませんが、あの時やっていた・考えていたことが、別の形でも役に立つというような目線で考えたいと思います。

役場・町民・事業者も参加するプロセスをつくって実現していく

それを実現するためには、役場だけでいろいろ考えるのではなく、実現するための間、町民あるいは事業者も参加するようなプロセスを審議会でぜひ打ち出して、多少なりの 形でもいいと思いますので、何かやってみることが大切だと思います。

変化はすでに生まれている

あと職員と意見交換をさせていただいた時に、そういう変革の兆しのようなものがありました。伺ったところ、コロナ禍を経て、手続きを郵送でやりとりすることを意識していると。職員が封筒に返信用封筒を入れ、「これに書いて送り返してください」ということを必要に迫られてやって繰り返していくと町民もそれに応えて、「ついでに庁舎に来たし、これを出しておくわ」のような話ではなく、 封筒で返信していただくようになってきたということを職員も変化として実感されていました。

町民一人一人の体験としては小さなものですが、それが重なる と、大きな違いを生むような変化が既に生まれていることがあるのではないかということも、きちんと考える必要があると思いますし、そうしたことは今後も起こり得ることとして時間がかかることにきちんと向き合うような視点は重要だ と思います。

まとめ

最後に、時間がかかることばかり申し上げて、一体いつになったら実現するの かとなるかもしれませんが、私はそうは思いません。

時間がかかることにより、どんどん正解に近づけるチャンス、テストとして確かめる機会が増えます。そこにいろいろな人を巻き込んでやっていくようなことが大切です。

正解はこれだから、これに向かって用意するのではなく、その間にいろいろなことを確かめないと、実感を伴って、「いいサービスができたね」とはならないと言われていますので、時間をかけてでもそれをメリットとして確かめられるプロセスをきちんと作り出していければと思います。

お話をまとめますと、キーワード作りと、実現するまでの時間を活用して着手すること。それを可能にするような参加のプロセスを設計すること。これらをトータルで考えることがデジタルの視点であると位置付けたいと思います。

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