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Forkwellさんのイベント登壇時に回答できなかった質疑への回答の公開

https://goworkship.com/event/155143/

ちょっと前になりますが、2/14にForkwellさん主催のイベント企画である「エンジニアの処方箋#5」に著者の懸田と福島が登壇しました。

『「アジャイル式」健康カイゼンガイド』をテーマに、して心と身体のつながりについてお話しました。

この時の様子は、こちらで動画および動画や、動画解説がすでに公開されています。Forkwellさんの公式レポートも本日公開されました。内容については以下のリンクをぜひごらんください。

本記事は、このセッショの最後の質疑応答で、答えられなかった質疑についての回答を以下に掲載しておきます。

質問:睡眠と結果

質問

「睡眠が大事だと思う反面、自分のような凡人だとどうしても時間をかけないと結果が出せないと感じています。何かアドバイスがあればお願いします。」

回答A

「時間をかけないと結果がだせない」と思ってらっしゃるのですね。睡眠時間を削ることで、仕事の質は間違いなく落ちます。たとえ短期的には問題がな異様に見えても、長期的にみると確実に質は低下していきます。質の下がった状態で時間をかけるのと、質の高い状態で時間を区切ってやるので、どちらが成果がでそうだと思いますか?

それどころか、睡眠時間を削るということは、命を削っているのに等しいとも言えます。「眠らなくても大丈夫」と言ってる人は、身体の睡眠を欲する機能が麻痺してしまっていると考えてください。とても怖いですよ。

そうならないために、当日ご紹介したHRV(心拍変動)のスマホの計測アプリや、スマートウォッチの計測機能を使って、ご自身が今の状態でどれだけストレスがかかっているかを見てみるのをおすすめします。(ボディバッテリーなどの別名の指標の場合もあります)

もし、数値が下がってストレスが高い状態であるなら、質の高い状態をキープして、仕事に取り組むようにしてみてはいかがでしょうか。

回答B

睡眠時間を削ってでも頑張りたいときありますよね。わかります。私もやってしまうことがあります。。

ちなみに、質問者さんはご自身に必要な睡眠時間ってご存じですか?人によって必要な睡眠時間は違うといわれており、各自の指標の見つけ方をご紹介しますね。


  1. 4日以上連続(最低5日、できれば2週間)で、眠れるだけ眠れる日を確保する。

  2. 眠れるだけ眠り、毎日何時間寝たか記録しておく。

  3. 4日目以降の数字が指標になる。
    (*同じ人でも、たくさん活動した日とそうでない日では必要な睡眠時間が変動しますので、あくまで指標です。)


2週間眠りたいだけ眠ってみたとき、なにかご自身の中で違いを感じるかどうか試してみられるのはいかがでしょうか。睡眠時間をしっかりとることで、作業効率や洞察力、創造性、記憶力などさまざまな仕事で結果を出すために必要な力が発揮できるといわれています。もしよかったら一度試してみてください^^

質問:フルリモート開発の人間関係

質問

「半年前くらいに転職してフルリモートでの開発をしています。これまでもリモートでの開発経験はありましたが、フルリモートは初めてで、人間関係に悩んでいます。リーダーやチームメンバーから詰められるような言い方をされることが多く、困っているのですが、対処法などあれば教えてください。」

回答A

リモートワークは、必要な要件しか話すことになりがちで、雑談がどうしても減ってしまいます。質問でも話題になりましたが、雑談も「いきなり何を話していいかわからない」となりがちです。お互いを知るために「テーマを決めた」雑談をチームでしてみることをおすすめします。ランダムにテーマを変える、など。

といっても「雑談が、そもそも苦手なんだ〜」という人もいますよね。みんなに対して話すのに抵抗がある場合もあります。その場合、1対1で互いの話を聞きあう、というワークをやってみることをおすすめします。ポイントは互いに「相手の話を一方に聞き、聞き手の解釈や評価判断をしない。相手の話を聞きながら相手の立場をイメージして共感する。」ことです。なにを話しても否定されずに、ひたすら聞いてもらえる安心できる時間は、きっと心地良いはずです。この組み合わせをペアを入れ替えながらやってみてはいかがでしょうか。

また「詰められるような言い方をされる」と認知されているのですね。その時、どんな気持ちになりますか?その気持を感じてみると、何が満たされていないと感じますか?「他者に詰められる」という認知・解釈は、ご自身がそのように他者の発言を受け止めてしまうものが、あなたの心の内側に何かがあるのかもしれません。このあたりは『ザ・メンタルモデル・ワークブック』などのワークをやってみることをおすすめします。

「そのような言い方だと、詰められていると感じます。〜〜〜という言い方にしてくれますか?」というように気持ちを伝えるのもおすすめします。

回答B

転職に、フルリモートワークに、大きな環境の変化のある中、同僚の方とのコミュニケーションにお悩みで、ご負担の多いことと思います。

一概にフルリモートといっても、コミュニケーションの頻度や取り方、顔が見えるかどうかなど、職場によってそれぞれかと思いますが、質問者さんの職場ではどんな工夫を取り入れておられますか?

一緒に働く人との相互理解・関係性構築が十分に進んでいない状態でのコミュニケーションは時に意図しない伝わり方をしてしまうこともあるかと思います。(例えば、よく知っている人であれば、すごくドライな表現でもそう感じなかったり)

そのため、フルリモートの場合、関係性を築くための工夫を意図的に取り入れていくことがおすすめです。また、質問者さんのことをしっていただくことも大切ですので、詰められているように感じるときは、その気持ちを伝えてみるのはいかがでしょうか?複数人の場で言いづらいようでしたら、まずはチームの中で相談しやすい方にそのように感じている気持ちを相談してみてもいいかもしれませんね。

伝え方としてDESC法も参考になるかもしれません。ぜひ検索してみてください。あまりため込まずに、対話しながらお仕事ができるよう応援しております!

質問:本人が大丈夫っていうんだけど。。。

質問

「本人が「大丈夫です」というとそれ以上聞き出せません。よい聞き出し方はありますか?」

回答A

相手が本当に「大丈夫」なのか、そうでないかは、相手がどう感じているか次第ですよね。そこは一旦手放したほうがいいですね。あなたにできることは、相手にあなたの気持ちを素直に伝えることではないでしょうか。それを受けて相手がどのような反応をするかは、相手の問題なので分けて考えてください。

たとえば、
「私は、あなたの状態をとても心配しているし、元気な状態で仕事をしてほしいと思っている。少しでも体調を崩していたり、困っていることがあれば、些細なことでも話してほしい。私は、あなたの力になりたいです。」
など。

回答B

タイミングや心の準備など、段階を踏み、時間を要することもあるかと思います。

まずは心配している気持ちと、質問者さんからみてその方がどう見えるか(心配な点)、いつでも相談に乗るということをお伝えしてみましょう。

そのあと様子が変わらない&悪化しているようであれば、もう一度声をかけ、今の状態や困りごとの確認、どんな対応ができるとよいかを一緒に考えてみるなど、ステップを踏んでみるのはいかがでしょうか?

また、質問者さんおひとりで難しい場合は、まずは質問者さんから人事や産業医に相談してみるのもよいかと思います。

まずは「あなたを気にかけているよ、いつでも相談に乗るよ」という気持ちをお伝えできるとよいですね!

質問:順調っていうんだけど大丈夫?

質問

「開発仕事も順調で一見問題が無いように見えるけど、実は要注意!みたいな隠れた危険ポイントってありますか?」

回答A


「開発仕事が順調」と見えても、ひとりひとりの内側が順調・平穏かはまた別問題ではないでしょうか。なにかの犠牲を払って開発を順調にしているかもしれません。

「ラストワンマイル問題」ってありますよね。最後のあと一歩の詰めが練れてない、見落としているなど。メンタル的な話しとは別ですが「楽観主義でいるときにこそ、悲観主義で考えてみる」のをおすすめします。ずっと悲観主義でいる時に、逆に楽観主義になるのもまた然りです。

人によっては「楽観的に考える人」と「悲観的に考える人」っていますよね。自分の反対の個性の方に聞いてみるのもいいですね。

質問:バグが終わらないと仕事が終わらない

質問

「バグがその日のうちに解消できないと仕事が終わってからもずっとバグのことを考えてしまって気持ちが休まらないのですが、考えないようにする方法ってありますか?」

回答A

頭から離れないってありますよね。別の何かに集中してしまう(ゲームする、本を読む)や、考えられないくらいハードな何かをする(筋トレ、短距離ダッシュ)などで一旦考えないことは出来ますね。瞑想をして「考えることから離れられない自分」を俯瞰してみるのもいいですね。

バグってシャワー浴びてるときとか、歩いてる時とかに「あっ!」って解決のヒントが得られることが多いので、一旦ボーっとしてみるといいです。(脳がデフォルトモードネットワークの状態です)

回答B

どうしても同じことをずっとぐるぐると考えてしまうことは「自動思考」と呼ばれています。ふと気づけば考えてしまうものなので、完全になくすことは難しいですが、自動思考に気づき、上手に付き合っていけるといいですね!

付き合い方の参考に3つのSTEPをご紹介します。


  1. 気づく

  2. 距離をとる

  3. 現実思考に戻る


  1. 自分が今何について考えているか、無限ループになっていないか問いかけてみる

  2. 「今自分は~と考えている」と言葉や文字、数値で表現してみる

  3. 考え続けることでいいことある?と問いかけてみる
     友人にアドバイスするつもりで、見えていない観点を探してみたり、人と話してみることで視野を広げてみる

そのほか、本書P204-208を参考に対処行動を複数試してみることもおすすめです。

勤務時間がまちまちな場合は?

質問

「夜勤と日勤があり勤務時間がまちまちです。健康な生活を続けるために気を付けるべきことがあればアドバイスよろしくお願いします。」

回答A

交代勤務の方は、生活リズムの乱れやすさや睡眠の問題などから、日勤帯のみの方に比べると様々な健康リスクを負っているといわれています。

あまり数日でシフト時間を変えず、1週間は同じ勤務時間で働くなど、ゆったりシフトを交代するほうが疲労感が少ないといわれていますので、可能であればおススメです。

交代勤務の方にぜひ気を付けていただきたい睡眠と食事のポイントは以下の通りです。

  1. 朝と夕は固定してたべ、日勤のときはランチをたべ、夜勤のときは夜食を食べるようにする

  2. 寝る前には太陽の光をなるべく避ける(帰宅時のサングラスも有効)

  3. 胃にもたれる食事、カフェイン、アルコールは避ける

  4. 音、光を遮断する

  5. 目覚めたら太陽の光を浴びる

  6. 就業前に仮眠する

丁寧に仕事をしたい人はアジャイル開発が向いてない?

質問

「アジャイルソフトウェア開発宣言の変化への対応や不確実性って計画的に仕事を進めたい、丁寧に仕事をしたい私の性格上あまり好きではないのですが、アジャイル開発は向いてないのでしょうか?」

回答A

計画的に物事を進めることを好む方がアジャイルに向いていないか、というと一概にそうは言えないと考えます。

アジャイルな仕事のやり方の中でも、計画的な作業や丁寧な仕事を好むスキルは重要です。計画的に進めたいということは、物事の事前の予測・分析が得意ということですし、丁寧な仕事はエンジニアとして非常に大切なスキルです。

しかし「計画 vs 変化への対応」のような対立軸で考えてしまうと、「向いてる・向いていない」と二元的に捉えがちです。でも、すべては0か1かではなく度合いです。あなたの「計画的、丁寧な仕事」という個性を、「変化の激しい世界という前提の中でどう活かせるか」という観点で考えてみてはいかがでしょうか?

アジャイル開発をしているからといって、まったく先のことを考えずに無計画で仕事をするということはありえません。常に「今はどのような状況か?そのために今なにをすべきか?」という順番でやることは決まっていきます。とはいえ、アジャイル開発宣言の、「計画に従うことよりも変化への対応を」とは「事前に全ての物事を知ることはできないので、その時々の変化に対応する」という前提に立つことを意味します。

質問への回答としては、一言で言うと「アジャイルに向くか向かないか」ではなく「あなたの強みをアジャイル開発や、今の環境でどう活かせるだろうか」という視点に変えてみてはいかがでしょうか?となります。

「好きではない」おっしゃるように、自分がやっていて楽しい・楽しくないという観点もあると思います。本質的ではないですが、自分の仕事の裁量の範囲で、自分好みに仕事のやり方を変えるという工夫もできそうです。自律的・自主的に行動するアジリティの高いチームならそのような工夫は歓迎されるはずです。

また、あなたの「計画的に仕事を進めたい、丁寧に仕事をしたい」という性格は、常に「安定や秩序を求める」傾向があるのではないかと推測します。変化が激しければ激しいほど、安定した状況は保持できずに、バランスを取りながら前に進むしかありません。揺れる波の上の船上で、片足で立ち続けるにはバランスを取り続けるしかありませんね。しかし、そういう不安定な中でも秩序・安定を希求する人こそ、安定を生み出すためのアイデアを思いついたり、努力を欠かさないのではないでしょうか。あなたのような一見アジャイルと真逆の傾向を持つ人がいるからこそ、チームは極端な方向によらずに、常に最適なバランスを保つことができると思います。チームの多様性という意味で、あなたの存在はチームにとっての価値なのです。

もし、自分だけで思いつかないなら、チームのメンバーに、あなたの性格の活かし方を相談してみてもいいですね。あなただけでなく、チームメンバーの個性を生かした仕事のやり方ができることが、真のアジャイルチームの働き方であり、あなただけでなく、チームひとりひとりの個性を生かしたアジャイルな仕事の仕方を、チームの皆さんと考えて見てはどうでしょうか。




皆様のサポートによって、より新たな知識を得て、知識と知識を結びつけ、実践した結果をアウトプットして還元させて頂きます。