2024年前半(〜7月)のビオトープの様子
今年に入っての活動について投稿できてなかったので、3年目に入ったビオトープの様子を、これまでの7月までの整備や調査の様子を投稿します。
除草+湿地内の島づくり
今年は、春に部分的に除草をして開放水面を増やす工夫をしました。全体の割合からしたら大したことはありませんが、除草した草をビオトープ内に積み上げておくことで、湿地内に島ができるようになり、そこがカエルなどの逃げ場になっているようです。
今年のビオトープの変化
3年目の今年は、これまでと比べて大きな変化がありました。
目に見えて変わってきたのは、まずシャジクモの群落が増えたことです。初夏のときにはまるで、水の中で森のようでした。昨年、水深を確保するために一部を掘り上げましたが、そこに水が安定して溜まってシャジクモが増えたようです。
また、栽培用として導入しているマコモやクワイも増えました。これまでオフシーズンに収穫していないので、今年は秋に収穫する予定です。
また、今年はサカマキガイなどの水生巻き貝が増えました。その結果でしょうか、ガムシの幼虫もものすごく増えました。卵嚢自体も沢山見かけましたが、ガムシの幼虫は巻き貝を主食とするため、育つ幼虫の数も明らかに増えていました。至るところにガムシの幼虫が泳いでいた時期もあります。
また、今年はクロゲンゴロウの幼虫も多数みかけました。ビオトープで共食いしている様子が観察できるくらいですから、個体数は相当多いです。このクロゲンゴロウの幼虫の主食は、おそらく常に発生しているオタマジャクシでしょう。
オタマジャクシだけでなく、アカハライモリの幼生も沢山います。これらがお互いに食べたり食べられたりで、お互いの生命を満たし合っているのですね。
ガムシもクロゲンゴロウも成虫をちらほらみかけますが、今いる個体は越冬成虫なので、秋にはより多くの新成虫が確認できると思います。
愛媛県では、ガムシもクロゲンゴロウも「いるところにはいるが、いないところにはまったくいない」局所的な分布の生き物です。3年目に突入し、このビオトープは、これらの水生昆虫が「ここにくれば、必ず会える」という場所になりつつあります。(ちなみに、現在面河山学博物館で展示してあるクロゲンゴロウとガムシは、本ビオトープで採集したものです。面河山岳博物館に行ったら見てみてください。)
ミズカマキリが減った謎
逆に、昨年との変化で「大きく減った」のがミズカマキリです。昨年までには、大量にいたミズカマキリを殆ど見かけないのです。昨年は、「見渡すとあたりはミズカマキリばかり」というイメージでしたが、今年は、調査をしてやっと一匹みつかるかどうかでした。ミズカマキリがここまで減った理由がよくわかりません。
このビオトープには、ミズカマキリを捕食する大型の水生昆虫や脊椎動物はいないはずなので、原因がよくわかりません。周囲の環境が変わったせいでしょうか?
嬉しい誤算のヘイケボタル
また、サカマキガイが増えたことから、今年はヘイケボタルも見かけるようになりました。ヘイケボタルの幼虫は、サカマキガイなどの巻き貝を捕食するため、ガムシと同じ状況だと思われます。日中の調査のときに初めて見つけて、試しに夜のビオトープを訪れたときに見た、暗闇をヘイケボタルが飛び交う様子はとても幻想的でした。
ビオトープを語るときに、ホタルは非常に人気があり、目玉種となりがちです。わざわざ「ホタルを放して」人を呼ぶイベントなどが行われるほどですが、このビオトープではホタルについて一切考えたことはありませんでした。それでも、こうやって自然に住み着いてくれるホタルを目の当たりにすると、ホタルがいてくれることに素直に感謝の気持が湧いてきます
来年からは、初夏のホタル観察会もやってみたいところです。
また一歩カエル天国に近づいた
ビオトープでは、ヤマアカガエル、ニホンアカガエル、アマガエル、シュレーゲルアオガエル、ツチガエルなどのオタマジャクシが、毎月種が変わり常に発生し続けています。そして、今年の初夏の調査で、はじめてトノサマガエルのオタマジャクシも確認することができました。絶滅危惧種であるトノサマガエルが繁殖してくれたことはとても嬉しい出来事でした。あと可能性があるのは、タゴガエル、ニホンヒキガエルくらいでしょう。
愛媛県に生息するカエル12種類(外来種を除くと11種類)の半分はこの小さなビオトープで繁殖していることになります。カエル好きにもぜひ見に来てもらいたいところです。
小型水生昆虫にも注目
つい目立つ大〜中型水生昆虫に目が向きがちですが、今年は小型の水生昆虫にも注目しています。今年はマダラコガシラミズムシも確認されました。マダラコガシラミズムシは幼虫がシャジクモを主食とするそうで、前述のシャジクモが増えたので訪れてきてくれたのだと思います。
他にも、まだ同定は終わっていませんが、マルケシゲンゴロウ系も見つかっています。(おそらくコマルケシゲンゴロウ?)
他にもコツブゲンゴロウ、トゲバゴマフガムシ、ヒメイトアメンボ、などの普通種もよく見かけます。小型の水生昆虫は、比較的水温が高めを好む種類が多そうですが、このビオトープは沢から直接水を引いている部分は水温が低く、取水口から離れるにつれて水温が高くなるようになっています。そのため、小型種を増やすために高水温のエリアをどう広げるかは、今後のテーマです。
ビオトープの湿地の中でも、低水温、高水温を好む種が、それぞれの好むエリアに住み着いて棲み分けられる多様な環境を目指しています。
トンボはどうか?
湿地といえば、やはりトンボが気になりますよね。ビオトープで最も目立つのは、ハラビロトンボ、キイトトンボです。真っ赤なショウジョウトンボも目立ちます。初夏のタイミングでは、ヤンマ系の成虫は今年はそれほどみかけてませんが、ヤゴをみると、クロスジギンヤンマやマルタンヤンマがいます。こちらも秋が楽しみです。
初夏の調査で、またあらたな新種がみつかりました。それは四国固有種のシコクトゲオトンボです。
元々は四国の標高の高い薄暗い所に住んでいたようですが、昨今の耕作放棄水田の増加で棚田が木々に覆われ日陰が増え、低高度で好みの環境が増えたために、徐々に生息域を広げてきたようです。ビオトープの裏は元棚田で、今では木が生えて鬱蒼としています。流れこむ沢に幼虫が生息し、そこで繁殖しているようでした。
大きさはカワトンボや大型のイトトンボと同じくらいですが、羽を広げてとまるのが特徴で、足が赤く目立ちます。ビオトープの上は飛ばずに、薄暗い沢の茂みのあたりを飛んでいるようです。四国県内には広く分布しているそうですが、固有種なので四国にこないと見れないそうです。
どこまで変わっていくのか?
このように、ビオトープは環境が変化して、それに応じた生物種が発見されていきます。今後どのように変化し続けていくのか、それとも安定して維持していくのか、今は見られない新しい種が流入してくるのか、変化が楽しみです。環境を保全しながら見届けていきたいと思います。
観察会と仲間募集について
今年の10月12日10月14日に、観察会を実施する予定です。こちらについては、別途アナウンスを予定してます。よろしくお願いします。
また一緒に整備や調査をしてくれる仲間も募集しています。観察会に向けて、生物だけでなく人間のための環境も整えていく必要があります。愛媛県での活動になりますので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。
観察会とは別に、ビオトープに来てみたい方がいらっしゃればぜひご連絡ください。場所は公開できませんが、アテンドはできます。
いずれのご連絡も、以下のフォームよりお願いします。
皆様のサポートによって、より新たな知識を得て、知識と知識を結びつけ、実践した結果をアウトプットして還元させて頂きます。