味は香りよりいづる
花粉の季節…鼻が詰まって料理の味がわからない。そんな人もいらっしゃるかもしれません。
これは科学的な根拠なく、勝手にそう思っていることなのですが、味覚というのは嗅覚が発達して、後から生まれた感覚ではないかと思います。
例えばカレーは味もさるものながら、第一に飛び込んでくるのは香りです。カレーがカレーたる所以は「香り」にあり、カレーはまず香りが美味しいのです。
ほかにもお蕎麦屋さんの前を歩くとだしや醤油の香りに魅了されたり、うなぎ屋さんや焼き鳥屋さんから溢れ出る煙…あのタレの焼ける匂いなど、暴力的と言っていいほどこちらの食欲を支配してきます。
だから料理は味はもちろん香りも大事。香りを受け入れられるかどうかで「うまい・まずい」が判断されてしまうこともよくあります。先ほどとは逆の例ですが、納豆など「匂い」が受け入れられないという人もいるでしょう(私は大好きですが)。
少し話が脱線しますが、匂いというのは「安全か危険か」を判断するときにも重要な役割を果たします。少し雑に言うと、匂いを嗅いで臭い(受け入れられない)ものは危険だということ。納豆の匂いがダメという人はある意味正しく、本能が受け入れていないという見方もできます。
なお、悪臭を放つ「腐敗」は食中毒の原因菌が繁殖することで発生しますが、人間に取って有益な(毒にはならない)菌の繁殖を「発酵」と言います。腐敗と発酵はどちらも同じ「菌の繁殖」なのです。人の都合で良し悪しが決められるのはちょっと勝手ですよね。
閑話休題。
「香りが美味しい」というものはたくさんあって、例えば春の山菜など「味」というのはかすかな苦味くらい? どうということはないのですが、あの香りが合わさることによって抜群においしく感じます。
また香りというのは鼻の穴から吸い込むだけではなく、咀嚼した口内から鼻に抜けていくものもあります。これもまた科学的根拠なしに言うのですが、鼻と口(舌)の奥…その中間くらいに、味覚と嗅覚を足して2で割ったような受容体があるのではないか…と思っています。
とくに魚の刺身。なかでもマグロを味わうときなど「ここ」で味わうと、素材の良し悪しがよーく感じられます。
私が料理の中で一番好きなのがだしを取ることです。鰹節を沸騰したお湯に入れた瞬間に立ち上る香り。それから火を止めてしばし置いておくうちに台所が良い香りに包まれます。なんとも満たされた気持ちになります。
鰹節でだしを取るのと、粉末かつおだしの素では何が違うのかというと一番は香りの有無にあるでしょう。
最近のめん汁やだしの素はどれも本当によくできていて美味しいです。最終的にだしの香りが飛んでしまうような煮物に使う分には本当、何の問題もありません。
ただあの天然の香りだけは「だしの素」では再現できません。もし気持ちとお金に余裕ができたら、一度、鰹節からだしを取るのをやってみて欲しいと思います。
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