おいでませ地獄
ビッグイベントよ早く来てと願う気持ちは老弱男女共通の心理状態ではないだろうか。大きなリュックを広げて遠足の準備をしたり、¥300円を超えるおやつを買いながら指折り数えるセンチメンタルさは大人になっても変わらないものだ。ただ、そのイベントが出張とか人間ドッグとか査察とか手術とか地獄行き列車の発車ベルであるという違いだけなのだ。
マナ板の上に固定されてターヘルアナトミアを待つ鯉はどんな気持ちだろう。ワイヤーの無いバンジージャンプで、打面に落ちるまでの時間はエントロピーの増大によって永遠に近いのではないか。何らかの防御本能によってポンコツ脳味噌がフル回転すると時間が崩壊して時計が進まなくなる。かと思えば駅まで歩いている時や電車に揺られる時の飛ぶような時間の速さよ。
地獄は予定通りやって来る。まだかなまだかな。快楽も苦痛も、クソ退屈なルーティンを邪魔する異物。いつもと違うから準備しなきゃいけないし、想像力を膨らませて備えるのだ。
準備を済ませ、新しいパンツを履いてカウントアップを済ませたら出掛けよう。環状線を抜けたら自由の国。ルールも秩序も無いバトルロワイヤルの中で、如何に面白くない事を面白がるかだ。
先日たまたま、オジサンは輪廻転生の象徴であるという事実をここで公表してしまった。そこからまた世界が一巡して、様々な怖い目にも遭ったのだがそろそろ年貢の納め時のようだ。
来る地獄は既に露呈して、何月何日何時何分何秒に来る旨を宣言している。恐らく約束は守られるであろう。守れないのはこちらの方。律儀なクソ日本人は土下座して赦しを乞うのだろうが屍の山。何の得にもなりはしない。むしろこの乱痴気な沙汰をどれだけ自分だけの為に利用し、受け入れ、熨斗付けてお返し出来るかがオジサンの腕の見せどころに違いない。この期に及んで学びはある。どれだけ道を踏み外してきたかが案外役に立つ。地獄ウェルカム。受けて立つよ。