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バン練

2年半ぶりにバンド練習があった。
アレの蔓延の間にギタリストが一人転職して去り、キーボードが東京単身赴任を終えて大阪に戻った。ドラムは妙なクラウドファンディングを始めて収入が不安定、もう一人のギタリストは300万のギターを売って150万のギターを買った。ボーカルは新たなジャンルに目覚め、tb1は親元から自立し、tb2は通訳の資格を取るべく正社員を辞めて契約社員に格下げ、サックスは終活を始めた。みんな少しずつアップデートされてゆく。去っていく人もいれば必要としている人もいる。そう信じて。おれたちのバンドはそんなみんなの受け皿でありたい。今日入った新メンバーにはソロパートという宿題を与えた。

リハを行うのも簡単ではない。全員のスケジュールが絶対合わないのだ。クラウドドライブでデータを共有し、オンラインセッションで下地を作った。リモートで作った音源をメンバーに配布、ITが得意じゃない初老のメンバーにはファイルの開き方をわざわざ教えに行き、アレが落ち着いた段階で全員に召集を掛けた。今日はその1回目。欠席者には録音した音声データを送る予定。デジタル化で便利にはなっているが、やっている作業は至ってアナログだ。回覧板と同じだ。

スタジオリハは面白いほど捗った。譜面やセトリでは表現しきれない細かな確認の数々。エンディングの手順。そういうめんどくさい奴を一つずつ解決して形にしていく面白さがある。曲の仕上がりはまだまだだが、ああこいつらなら大丈夫だな、というメンバー同士の安心感を分かち合った。だから何とかなる。

そしてその後は恒例の反省会。久し振りに酒宴を設けてみんな緩む。会えなかった2年半の出来事。その間に始めた事、やめた事。人と人は言葉で伝え合う事が多いが、こうやって馬鹿話してるおれたちは言葉以外の方法で同じ音楽を共同で表現しようという共通の瞬間がある。そのメンバーだって永遠ではなく、欠けたり足したりして補い合っているのだ。この先のことは分からないが、今日は記念すべき再会の日。当たり前に出来たことを当たり前に再開しよう。ちょっと眠らせていたパッションを揺り起こすのだ。