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錯誤による遺産分割協議の取消しって認められるの?

Q.父デギンさんが亡くなりました。その子であるギレンさん、キシリアさん、ドズルさん、ガルマさんの4きょうだいで遺産分割協議を行いました。きょうだいは、デギンさんの預金が3,000万円しかないと思って遺産分割協議を成立させたのですが、後から別の銀行の通帳が見つかり、実際は全部で4,000万円あることが判明しました。この場合、錯誤による遺産分割協議の取消が認められるでしょうか?(但し、相続欠格などは考慮しないものとします)

A.認められる場合があります。
錯誤取消が認められるためには、当該錯誤が「要素の錯誤」であること及び表意者に「重大な過失」が無いことが必要です。

「要素の錯誤」があると認められるためには、

①表意者が、当該錯誤がなければ法律行為をしなかったと認められ、かつ

②一般的に見ても当該錯誤が無ければ法律行為をしなかっただろうと認められる状況

が必要です。

例えば、今回の遺産分割協議が

「3,000万円の預金をキシリアさん・ドズルさん・ガルマさんが500万円ずつ相続し、1,500万円をギレンさんが相続する」といった内容であれば、遺産分割協議後に新たに遺産が見つかった場合と同様に考えれば足ります。


残りの1,000万円について新たに分割協議を行えば良いので、上記①が認められず、要素の錯誤には該当しないと考えられます。

一方、今回の遺産分割協議が
「預金はキシリアさん・ドズルさん・ガルマさんが500万円ずつ相続し、ギレンさんが残り全部を相続する」といった内容の場合は事情が異なります。

預金が4,000万円であることにより、ギレンさんが相続する預金は1,500万円ではなく2,500万円となってしまいます。ギレンさん以外の3人は預金4,000万円であると分かっていればこの内容の分割協議を行なっていない、と考えられます。

この場合、要素の錯誤が認められ、錯誤による遺産分割協議の取り消しが認められる可能性が高くなります。

★世戸弁護士のコメントです
この度の民法改正(2020(令和2)年4月1日施行)により,錯誤の規定(民法95条)も変わりました。

主な改正点は,

①表示上の錯誤(決定された意思と表示されたものとの間に齟齬があること)と動機の錯誤(決定された意思と表示されたものと間に齟齬はないが,その意思を決定するに至るまでの原因・動機・目的の段階で誤解があること)の要件を分けて記載したこと,

②表意者が重過失の場合は,原則として表意者は錯誤を原因とする取消しの主張はできないが,当該錯誤に基づく意思表示の相手方が表意者に錯誤があることを知り又は重大な過失によって知らなかった場合や,その相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたときには,表意者は錯誤を原因とする取消しの主張ができるとしたこと,

③錯誤の効果を無効から取り消すことができるとしたこと,です。

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