20210704 横浜

 15時半ごろの桜木町駅。生憎の、と簡単に言ってしまうことも憚られるようなこの週末の天候だったけれど、幸い今日は電車も遅れることなく、雨は霧雨だった。そのせいか、思っていた以上に人出があった。桜木町駅周辺に来たのは本当に久しぶりだったけれど、いっそう栄えているように見えた。

 目的地はぴあアリーナMM。ちょうど一年前に開業した新しい会場で、今日はTokyo 7th シスターズ、ナナシスのライブがあった。会場に入って、前後左右に等間隔に空いている席に座る。客入りのBGMは洋楽(と思ったのだけれどDragon Ashだと同行者に指摘されてちょっと恥ずかしかった。ただ洋楽も流れていたはず)で、ナナシスのライブに来たんだなと実感する。ただ、これまでと違ったのは、広告が絶え間なく流れていたことで、ライブアプリの宣伝CMなんて以前は流すことは無かっただろうから、この辺はやっぱり以前と変わってきているんだなと思った。

 17時頃、空色のペンライトで会場が染まる。何度も聴いたイントロ。777☆SISTERSの『H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!』でライブは始まった。そして、その時点で、ああやっぱり来て良かったなと思えた。

 昨年、ナナシスはそのアプリゲームの中で、大きな物語にピリオドを打った。そして今年劇場版が公開され、それらの中心を担っていたプロデューサーが去った。自分の中でも、ナナシスに対してはひと区切りがついていた。だから、今回も同行者が誘ってくれなかったらきっと参加していなかった。

 特定の演者さんのファンというわけでもなく、またライブのパフォーマンスをきちんと観られるような目も持っていない自分にとって、これまで、二次元アイドル作品のライブに行くということは、作品の持つ物語、文脈をステージに見出すことでもあった。だから、今回のナナシスは初めてそういうものが自分の中に無い状態で観たライブだったということになる。つまり作品の「オタク」ではなくなったということで、楽しめるかどうかの不安が無かったかといえば嘘になる。実際、以前のような感情の高ぶりみたいなものは無かった。

 ただ、それがかえって良かったんじゃないかと思う。最初の『H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!』で見たステージの、アリーナの、スタンドの光は、それ自身がありのままで綺麗だった。歌の歌詞も以前聞いていたときとは少し意味を変えて今の自分に届いた。比較的まっさらな状態でも、ライブを楽しむことができたことが嬉しかった。

 ナナシスに限らず、コロナ禍でイベントから足が遠のいたことによって、コンテンツのライブに対して、以前と同じようなモチベーションは無くなってしまったと感じていて、そのことに後ろめたさみたいなものを感じていたのだけれど、そう思わなくても良いんじゃ無いかと思えた。結局のところ、僕は二次元コンテンツには「綺麗ごと」を見ていたくて、そしてそれは過剰に見出さなくてもそこにあって、感動することができる。それだけで、きっと十分なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?