日経新聞に「リーダーの本棚」というコラムがあって、各界のリーダーが自分の推し本を毎週紹介している。
通常あまりこういったビジネス関連の推し本は余程のことが無い限り参考にしないのだが、群馬県知事である山本一太が次のように述べていたので興味を持った。
この山本氏という政治家自身に特にシンパシーがある訳では無いが、二つの相対する意見を比べるという姿勢は好感が持てた。
ということでまずは「人新生の「資本論」」を読んでみることにした。
本書は2020年9月22日に第一版が発行されているので既に3年以上が経過しており、50万部発行されているベストセラーだ。
内容をかいつまむと、次の通りとなる。
このように本書の著者は気候変動の問題を解決するには脱成長型コミュニズムしか選択肢は無く、それはカール・マルクスが晩年指摘したものであり、その萌芽は地方自治体レベルでエッセンシャル・ワーカーがワーカーズ・コープの枠組みを使うことで世界各地で見られる、という。
カール・マルクスの誤解を解こうという研究者としての筆者の意向は理解できるが、本質的にはむしろマルクスにこだわる必要はないのかもしれない。
私は過去のブックレビューで、ワーカーズコープ(「ネクスト・シェア ポスト資本主義を生み出す「協働」プラットフォーム」)によるエッセンシャル・ワーカーによる身銭を切った雇用の創出と楽観的な気候ケインズ主義(「ビル・ゲイツ 地球の未来のため僕が決断したこと」)については一人一人の行動の大切さを指摘したことがある。
本書により改めて気候ケインズ主義に対する不信感を認識した。その上で、資本主義にどっぷりと浸っている我々の生活の中で、脱成長型コミュニズムを主張することは荒唐無稽のように思われるだろうが、一人一人が資本主義と気候変動の問題に本気で関心をもち、まずは何等かの相互扶助のアクション(ワーカーズ・コープ、有機農業、署名活動等)を起こすことで社会が変わるのだと信じることが必要なのではないかと感じる。
最後にSDGsについては過去から日本以外の国では見られない特殊な日本だけの活動という指摘があったが、もし未だあのバッジを胸につけているとしたら、「大衆のアヘン」と言われる前に静かに外すことをお薦めする。