日常会話に溢れる商標~弁理士が反応する登録商標3選~:知財がテーマのコンテンツ
おはこんにちこんばんは、かねぽんです。
今回は、ドクガク先生企画の「弁理士の日記念ブログ企画2023」への参加投稿です。「知財がテーマのコンテンツ」をテーマに、私も知財業界を勝手に盛り上げる一員に加われればと存じます。
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1.身近に感じることができる知財:商標
みなさまの身の回りには知的財産が溢れています。その片手におそらくお持ちのスマートフォンには、数多の特許が含まれていますし、ご自身のリビングをぐるりと見回すだけで様々な企業の登録意匠に係る家電等の製品があることでしょう。
しかしながら、日常会話の中で特許や意匠が登場することは稀でしょう。
これに対し、商標は知財実務に関わらない一般の方々にとっても身近に感じることができる知財といえます。
「ねえ、ちょっとそこのセロテープ取ってくれる?」
「また旦那がプラモデル増やしたんだよね」
そんな会話をしたことはありませんか?
「セロテープ」は、ニチバン株式会社さん(以下、社名について敬称略)の登録商標(登録第5645018号等)です。セロハン粘着テープに関しては、原則としてニチバン株式会社が販売するもののみ「セロテープ」と呼ばれます。
もし、あなたのお宅に置かれているセロハン粘着テープがニチバン株式会社の「セロテープ」ではない場合、「そこのセロテープ取ってくれる?」は正確ではなく、「そこのセロハン粘着テープ取ってくれる?」と言うべきです。
また、「プラモデル」は、日本プラモデル工業協同組合の登録商標(登録第555762号)ですので、かかる組合に属する企業以外の製品については、「プラモデル」ではなく「プラスチック製模型おもちゃの組立キット」等と呼ぶべきです。
お家の方が購入なさったおもちゃが株式会社BANDAI SPIRITSの「ガンプラ」であれば、同社は上記の組合の一員ですので、「プラモデル」と呼んで差し支えないでしょう。
ちなみに、おもちゃについて商標「ガンプラ」は株式会社創通(※機動戦士ガンダム等、アニメーション作品の版権管理会社)の登録商標(登録第2403656号)です。
このように、日常会話には商標が溢れています。
そこで、日常会話という身近すぎるコンテンツ?の中から、弁理士が反応しそうな登録商標を3個、選んでみました。
会話の中でピクリと来たら、「それ、◯◯社の登録商標だから、正しくは△△だよ」等と指摘してみましょう!ウザがられること間違いなし!!
それでは、レッツ、ゴー!
※本記事の内容を日常会話に適用した結果、会話の相手方との関係がこじれたとしても、当方は責任を負いません。商標トークは用法・用量を守って正しくお使いください。
2.弁理士が反応する日常の登録商標3選
2.1 マジックテープ
「支払いは任せろー」バリバリ・・・
宇宙飛行士の服にも大活躍している、あのバリバリしたテープ。
「マジックテープ」は株式会社クラレの登録商標(登録第4270217号等)です。一般には「面ファスナー」と呼びます。
フックとループを備える構造は、服やペットに付いた野草の実の形状がヒントとなったことは有名な話ですね。
クラレさんやそのライセンス社以外から提供されている”マジックテープだと思っていたもの”は、明日から「面ファスナー」と呼んでみましょう!
2.2 ウォシュレット
「ウチんち、リフォームしてウォシュレット付けたんだよね」
友人宅にお邪魔して、トイレをお借りするときの一幕。
トイレに入ると、そこには株式会社LIXILの「シャワートイレ」が…
この場合は、「ウォシュレットじゃないじゃん!」とツッコみたい気持ちを抑え、「うん、トイレ、キレイだったよ。業者はどこに頼んだの?うちもリフォームしようかな」等の対応をオススメいたします。
洗浄機能付き便座について、商標「ウォシュレット」はTOTO株式会社の登録商標(登録第1665963号等)です。
TOTO株式会社以外の洗浄機能付き便座については、例えば株式会社LIXILの製品は「シャワートイレ」(登録第2242329号 ※「INAXシャワートイレ」として登録、シャワートイレ単独の登録は発見できず)、パナソニックホールディングス株式会社の製品は「ビューティートワレ」(登録第1969046号)等、企業ごとの商標で呼ぶか、一律に「洗浄機能付き便座」や「温水洗浄便座」といった一般的な名称で呼ぶのが正確でしょう。
2.3 オレオ
「オレオ買ってきて」
この注文は、「ぽん酢買ってきて」並みに解釈の難しい注文です。
ちなみに「ぽん酢買ってきて」と言われたら、「黒い方と白い方どっち?」と確認するのが安全です。
なぜならば、”広義のぽん酢”の中に、”味ぽん(黒い方)”と”狭義のぽん酢(白い方)”とが含まれているからです。言っている私自身も何を言っているかよく分からなくなりますが、詳しくは以下のリンクをご参照ください。みなさま、お気をつけて。
さて、話をオレオに戻しましょう。
菓子について、商標「オレオ」は米国のインターコンチネンタル・グレート ブランズ・LLCという商標管理会社の登録商標(登録第2208539号)です。
ここで、「オレオ買ってきて」の注文がなされた場合、その人が食べたいのが「今まで食べてきたオレオ」なのか、「今売っているオレオ」なのか、意図を汲む必要があります。
なぜならば、その人が「今まで食べてきたオレオ」の商品名は、「ノアール」(登録第6042742号等 ※YBCのロゴとノアールの結合商標)に変わっているからです。
この名称変更には、商標等を含むライセンス契約の終了が絡んでいます。2016年、ヤマザキ・ナビスコ株式会社とモンテリーズ・インターナショナル・インクとのナビスコ製品におけるライセンス契約が終了しました。
これに伴い、今まで「オレオ」や「リッツ」などの販売をしていたヤマザキビスケット株式会社(旧:ヤマザキ・ナビスコ株式会社)は、これらのブランドを「ノアール」、「ルヴァン」に改めて販売しています。
そして、「オレオ」等の登録商標の元締めであるモンテリーズ・インターナショナル・インクは、同年から「オレオ」、「リッツ」の販売を開始しました。
以上をまとめますと、
◆ 2016年8月以前
「オレオ買ってきて」 → ヤマザキ・ナビスコ株式会社のオレオを買う
◆ 2016年9月以降
「オレオ買ってきて」 → 注文者の真意に応じた製品を買う
真意1:今まで食べてきたあの味のお菓子を食べたい
→ ヤマザキビスケット株式会社のノアールを買う
真意2:今、オレオとして売られているお菓子を食べたい
→ ナビスコブランドのOREOを買う
そして「オレオ」を注文されてドヤ顔で「ノアール」を買ってきた暁には、上記の経緯をお菓子タイムにウンチクしてあげましょう。うんざりされることうけあいです。
3.まとめ
以上、日常会話に登場する登録商標「マジックテープ」「ウォシュレット」「オレオ」等を取り上げてみました。
その他にも、日常会話には様々な登録商標が潜んでいます。
スーパーで商品を選ぶとき、会話の中で商品の名前を言うとき、日常の中の色々な場面で、登録商標に思いを馳せてみてはいかがでしょうか??
なお、大事なことですが、商標権侵害は、例えば、ご自身の作ったビスケットに勝手に「オレオ」と商品ラベルを貼って販売する等、商標的な使用をしてはじめて生じえます。
このため、日常会話の中で「オレオ買ってきて」等と登録商標を単に口にしても、商標権の侵害にはなりませんのでご安心ください。
P.S. ポテトチップスは「オー・ザック」派(登録第6525198号等)。
ちなみに菓子について「ポテチ」は株式会社湖池屋の登録商標です(登録第2474349号)。
ではでは!!