見出し画像

徒然:水曜ドラマ『それパク』第1話~そのとき弁理士はこう考える~

おはこんにちこんばんは!かねぽんです。

水曜ドラマ『それってパクリじゃないですか?』
いよいよスタートしましたね!!

弁護士ドラマは数多くあれど、弁理士を、しかも企業知財を主テーマに扱ったドラマが春からスタートしたとあって、元企業知財部の弁理士かねぽんのテンションはぶち上げ状態です。

イヤッホゥ!!フゥゥゥ!!!
ワーッショイ!ワーッショイ!

いかんいかん、落ち着け落ち着け、落ち着いて素数を・・・

さて、第1話の感想とともに、今話のテーマのひとつである「自社が開発した技術が先に他社に特許権利化されていた場合、どうする?」問題を少しだけ掘り下げてみようと思います。

※以下、一部に第1話のネタバレを含むおそれがございます。
 TVerにて本編が配信されておりますのでこちらも是非チェックしてみてください!


1.全体の感想

まず注目すべきはドラマのテンポ感の良さです。

本ドラマは、知財という一般にはあまり馴染みのないテーマを扱います。

このため、何がどうなっているのか視聴者に伝えるべく「説明」パートを増やすとドラマのテンポが悪くなるのでは?と、放送開始前に一抹の不安を抱くなどしたのですが、見事にその不安を吹き飛ばしてくれました。

説明がなされる部分では主人公の「字が小さい」キュートな面を出して笑いを誘い、情報漏洩時点の特定という細かい作業を「キラキラ」と「きゅるんきゅるん」というワードでさらっと解決する、その脚本に恐れ入りました。

・・・きゅるんきゅるん(しばらく使います)

アバンの「それって・・・」からOP主題歌に入る演出は、何度見ても痺れますね。

そしてパクリだらけのOP。

※天からの声:パクリではない。オマ~~ジュですよぉ。

・・・ちがうちがう。

オープニング、ゴーストバスターズゴッド・ファーザーはわかったのですが、今後もじっくり見てTwitterの皆で元ネタを特定していきたいですね。

何よりも欠かせないのがキャストのみなさんの素敵すぎる演技!
芳根京子さんが終始かわいすぎる。
重岡大毅さん、眉間!シワ!!ずっとシワよってる!!

ドラマ前は恐縮ながらあまり存じ上げない御二方でしたが、第1話で一気にファンになりました。まだまだドラマ内のお二人の関係は硬いですが、今後どんなバディになっていくか楽しみでなりません。御二方が出演されている他の作品も観ていこうと思います。

2.実際にあったら、どうする?

さて、第1話は、主人公の藤崎が発案した飲料ボトルの新技術を製品に採用しようとした矢先に、その新技術と同じ内容の特許を他社が先に権利化したという展開から始まります。

実はこのような展開、日常の開発業務では珍しくありません。

技術のトレンド・レベル、顧客のニーズ、その他の環境も含め、同じような土台で企業同士が互いに開発活動を行うわけですから、新技術の内容も自ずと似たりよったりになることがあります。

このため、現場としては、実際にこのような事態に陥ったら「パクられた!」ではなく、まず「先を越された!」と思うことになるでしょう(今回は非常にレアケースで、本当にパクられたわけですが・・・)

そして、このような事態、すなわち自社が開発した技術が先に他社に特許権利化されていた事態に直面しますと、弁理士(少なくとも、私個人)は、まず、できるか否か、採用するか否かはさておき、対応としてどのようなカードがあるのかを頭の中に並べます。

具体的には、以下のような対応カードを主に考えます。

①確認する
②避ける
③潰す
④貰う
⑤借りる
⑥知らないフリをする

まず、「①確認する」作業は欠かせません。特許が有効に生きているか、自社の技術が本当に他社の特許の範囲に入っているか、等を確認します。

確認の結果、自社技術が他社の特許の範囲に入っていないことがわかれば、まずはひと安心です。実務では、他社から何か言われた際にすぐに対応できるように、どういう理屈で自社技術がその範囲に入っていないかの根拠を資料にまとめて保管しておく場合もあります。

「①確認する」を経て、どうやら自社技術が他社の特許の範囲に入っているようだという場合、②~⑥までのいずれかの対応を迫られることになります。

ひとつひとつの説明は割愛しますが、実務として比較的多く採用されるのは「②避ける」すなわち設計変更をして他社特許の範囲外の技術を採用する、です。

また、意外かもしれませんが「⑥知らないフリをする」もよく採用される対応です。もしかしたら一番多い対応かもしれません。特に「③潰す」との合せ技として「いつでも潰せる状態を維持しつつ、知らないフリをする」こともあります。

製品の販売行為が他社の特許を侵害していても、その他社が自社に「止めてください!」と言ってこなければ、問題なく製品販売を続けることができます。

つまり、よっぽど特殊なケースを除いて、一般に特許権侵害は「民事」の事件なので、例えば殴る蹴るのような刑事事件と異なり、その他社が文句を言わない限り、(リスクはあれど)侵害行為を継続することができます。

このため、他社の特許侵害のおそれが発覚した場合、どのような特許か、ということの他に「誰の」特許か、という点も、対応を考える上で重要なファクターになります。

そして、非常に乱暴な言い方ですが、「あ、A社さんの特許か。あそこは競合じゃないから侵害していても何か言ってくるリスクは低いし、とりあえず放っておくか」みたいな対応も、現場では無きにしもあらずです。
(※誤解なきように付言いたしますと、漫然と放置する、というわけではなく、何かあった場合の備えを行った上で、こちら側から積極的に動かない、という意味での「放っておく」です。)

このように、教科書的には「②避ける」又は「③潰す」の対応が正解であるときでも、ビジネス的に⑥等の他の対応をとるなど、知財の戦略は非常に奥が深いものになっています。

今回のドラマで、今まで知財弁理士を知らない、初めて聞いた、という方にとって、その興味の端緒になればいいなと思います。

また、第2話以降、どのような知財事件が生じるのか、そしてどのような対応カードを切っていくのか、来週以降が今から楽しみです!

それでは~~~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?