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コレクション展は楽しい #08 東京オペラシティアートギャラリー

東京オペラシティアートギャラリーは、東京オペラシティ共同事業者でもある寺田小太郎氏(1927-2018)が東京オペラシティの文化事業に賛同し協力するために収集、寄贈されたコレクションを所蔵しています。

戦後の国内作家を中心に約4,000点におよぶコレクションは、油彩、水彩、版画、素描、立体など多岐にわたり、多様な展開をたどった戦後の美術の「現在」の姿が、一つの視点を通して俯瞰的に見渡せるものとなっています。
寺田コレクションには日本を代表する抽象画家・難波田龍起(1905-97)の油彩、水彩、版画など約350点以上が含まれており、コレクション全体の軸となっています。また、その次男・難波田史男(1941-74)の作品も280点以上が収められており、難波田龍起と史男父子の作品を集めたコレクションとしては、最大級のものと言えましょう。

東京オペラシティアートギャラリーHPより

年4回程度開催される企画展と同時に、毎回テーマを定めて収蔵品展を開催しています。

抽象の小径
収蔵品展081 寺田コレクションより
会期:2024年10月3日(木)~12月17日(火)

今回のテーマは「抽象芸術」。

抽象といえば、かつてはわからない、難しい、といった言葉で一括されたり、純粋な造形性の探求であるといささか一面的な整理のされ方をしていた時期もあったが、じつはその内実はさまざまだ。
抽象といいながら実はリアルなもの、たとえば自然の諸相を強く意識させる場合もあるし、あるいは見えないもの、たとえば精神性、神秘性を強く意識させる場合もある。
また物質の表情やテクスチャー、その存在感に意識を集中させ、そこからの語りかけを何より大切にする場合もある。しかもそれらの現れは一義的ではなく、見る側の意識によってもさまざまに変容する。
抽象を見ることは、自らの感覚、意識のあり方と向き合うことと重なっていくだろう。

東京オペラシティアートギャラリーHPより

私が感じている抽象絵画を観る楽しさや醍醐味はまさにここに書かれている通りで、すごく納得できる。


2020年に東京オペラシティアートギャラリーで開催された個展が記憶に新しい、白髪一雄(1924-2008年)の作品にはいつも圧倒されます。

白髪一雄《長義》 1961年

李禹煥(1936年~)の作品は究極にシンプルで、ストロークの最初から最後まで神経が行き渡った感じ。この緊張感が好きだなーと思う。

李禹煥《線より》 1976年

山田正亮(1929-2010年)の、きっちり引かれた2色のストライプで構成された作品は、2つの色が抑え合って生まれる緊張感と均質な感じが面白い。

山田正亮《Work C.374》 1968年

菅井汲(1919-1996年)は、原初的というか、太古の時代をイメージさせる独特な線のフォルムが印象的。

菅井汲《題名不詳》 1957年

オノサト・トシノブ(1912-1986)の作品を観ると、私はいつも曼荼羅のイメージが浮かんできます。他の美術館でも何点か観ているけれど、どれも似ている。どのようにしてこの構成が生まれたのか、回顧展とかでまとめて作品を観たい作家。

オノサト・トシノブ《SILK 14》 1968年

昨年亡くなられた桑山忠明(1932-2023年)は、今年訪れたDIC川村記念美術館で追悼展示を観ました。そこで観た1970年代の作品とは全然違うタイプですが、共通しているのは極限まで絵画性をそぎ落としていく姿勢が感じられるところかなと思う。

桑山忠明《Black》 1960-66年

その他、好きだなと思ったのは内間安瑆(1921-2000年)の木版画。

内間安瑆《夏(Summer)》 1959年

色彩と画面の質感が好きな感じ。抽象の中に具象的なものを感じさせる要素があって、眺めているとイメージが膨らんで楽しい。

内間安瑆《Forest Byobu(Vermilion Blend)》 1981年

今回の展示は抽象の中でもミニマルな表現の作家が多かった気がします。

東京都現代美術館で観た高橋龍太郎コレクションも同様ですが、個人の収集作品は美術館の所蔵作品と違って、その人の美意識がコレクションの特色として現れるのだなと改めて思いました。

最後までお読みいただきありがとうございます。






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