コレクション展は楽しい #05 DIC川村記念美術館 2024年9月
2024年8月末に飛び込んできた美術館運営に関するニュースには驚きました。
https://pdf.irpocket.com/C4631/Rhyn/DBJg/TKxD.pdf
この報告書によると、今後の検討案は下記の2つ。
・東京への移転を想定した「ダウンサイズ&リロケーション」
・美術館運営の中止
最終的な運営方針は2024年内に決定するとされていて、2025年1月下旬から美術館を休館することが決まっています。
私がDIC川村記念美術館を初めて訪れたのは2023年8月。
コレクションが素晴らしいことは以前から耳にしていましたが、交通アクセスが不便というイメージで訪れる機会を逃していました。
初めて訪れてた時、アメリカ現代美術コレクションの規模に驚き、もっと早く来ていればよかったと後悔したのを覚えています。
今年は3月に企画展「カール・アンドレ 彫刻と詩、その間」(2024年3月9日~6月30日)とコレクション展示を観ています。
これからは新しい企画展や展示替えのタイミングを狙って観に行き、コレクションを制覇したいと思っていた矢先に休館のニュース、閉館の可能性も排除できないという事態にショックを受けました。
リロケーションで都内に来てくれればアクセスが便利になると思う反面、美術館の建物が素晴らしいので足を踏み入れることができなくなるのは悲しい。そして何よりコレクションのサイズダウンが痛いです。今後どのような決定がなされるのか、注目していきたいです。
今回は夏休みを避けて9月の平日に訪れることにしました。
JR佐倉駅の無料送迎バス乗り場は20人ほどの行列ができていました。先に京成佐倉駅を回ってきたバスはすでにたくさんの人が乗っていて、補助席を出してギリギリ全員座れるという状態。
3月の平日に来たときはバスを待っていたのが2~3人だったことを思うと相当な人数が押し寄せていることが分かります。
ちなみに帰りのバスはJR佐倉行きと京成佐倉行きの2台体制になっていました。
DIC川村記念美術館
千葉県佐倉市坂戸631
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
入館料:一般 1,800円 学生・65歳以上 1,600円 高校生以下 無料
コレクションの一部はHPで観ることができます。
今観られるコレクションのリストはこちら。
展示期間 : 2024年7月6日(土) ~ 2025年1月26日(日)
https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/collection-current/
1階の展示室ではマン・レイのレディメイドとペインティングを組み合わせた作品《だまし卵》を観ることができました。
ジョセフ・コーネルの箱作品はいつ見ても面白いです。今回展示されていたのは《鳩小屋》と《海のホテル》。
サム・フランシス《無題》とアド・ラインハート《抽象絵画》は何も考えずにじっとみてしまう作品。
企画展関連の特集展示「自然と陰影 ドイツ出身のコレクション作家たち」ではクルト・シュヴィッタースの抽象的な彫刻作品が面白かったです。
レンブラントのための展示スペース、102展示室で《広つば帽を被った男》の見納めをしました。
マーク・ロスコの《シーグラム絵画》のために作られた106展示室(ロスコ・ルーム)。この展示室と作品の行く末が気になります。
2階の201展示室で開催されていたのは2つの特集展示。
追悼 桑山忠明 1932–2023 コレクションViewpoint
2023年に亡くなった桑山忠明の追悼特集展示。
金属ストリップで囲ったモノクロームのパネルを接合した作品が4点展示されていました。
言葉で伝わりにくいので参考までに独立行政法人国立美術館の所蔵作品検索で見つけた作品のリンクを貼っておきます。
矩形のパネルを並べることは共通していますが、展示作品の《無題(TK21101-72)》は全体のフォルムが縦長の楕円形、《無題(TK1792-72)》は円形になっていました。
徹底的に作家の手を廃した制作スタイルが伝わってきますが、矩形のパネルを並べた作品ではサイズの違いや色でビル街のイメージが浮かんだり、縦長の楕円形の作品では窓をイメージしました。
工業的なデザインであるが故にかえって日常生活で目にする景色と親和性があるのかもしれません。
追悼 フランク・ステラ 1936–2024 コレクションViewpoint
こちらは今年(2024年)亡くなったフランク・ステラの追悼特集展示。
今回は絵画、レリーフ絵画、彫刻、版画およそ45点の所蔵作品の中からカンヴァス作品6点を全て展示。デビューから平面に一区切りを付ける1960年代終わり頃までのステラの制作をたどる内容になっています。
ステラは画面を三次元的に捉えることや背景に意味を見出すことを手放してあるがままに見ることを提案し、単純な模様であるストライプを画面上に配することで絵画の平面性を追求しました。
〈ブラック・シリーズ〉の《トムソン・コート・パーク(第二ヴァージョン)》は黒い矩形のストライプを同心上に連ねた作品。
〈アルミニウム・シリーズ〉の《ポルダゴ侯爵(第2ヴァージョン)》では、ストライプを直角に連続して曲げるパターンでできる半端な部分を切り捨てるという発想から、カンヴァスが凹凸に変形しています。
〈ダートマス・シリーズ〉の《タンパ》も変形カンヴァスで、矩形のカンヴァスの4辺の中央部分がV字型に切り取られています。
〈同心正方形・斜接迷路〉シリーズの《同心正方形》は正方形のカンヴァスにカラフルな正方形のストライプが同心上に連なっています。
〈サスカチュワン〉シリーズの《フリン・フロンⅡ》では曲線がメインになり、正方形と曲線の重なりが複雑になっています。色はとてもカラフル。
そして最後の〈分度器〉シリーズ《ヒラクラⅢ》は円と正方形が融合した変形カンヴァス。円の放射線と放射線の反転、正方形の直線で分割された色の帯はカラフルな色にグレートーンのバランスが効いています。
※《トムソン・コート・パーク(第二ヴァージョン)》と《ヒラクラⅢ》はHPで観ることができます。
2023年に初めて訪れた時に衝撃を受けたステラの飛び出す絵画(レリーフ絵画)をもう一度観たいと思っていましたがそれは叶いませんでした。
休館のニュースは残念ですが、どのような形であれ、またこの素晴らしいコレクションを観る機会が訪れることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
※企画展についてはこちらの記事をご覧ください。