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表の顔と裏の顔
人の思惑(おもわく)は、わからない。
思惑とは、あらかじめ考えられたある意図に、もとづいた気持ちが含まれている。
人は何かを話す時、こうしたある意図を含むことがある。
こうした時、にじみ出ると言えば良いのか… 何かいつもと違う感覚を感じてしまうことがある。
言葉だけでなく、その言葉の中に含まれた何か。
前回お伝えした話し合いは、秘密の会議のような、そして気持ち悪い雰囲気を感じながら進んでいった。
(残った会社を利用する)
「まー、Sのことは、ここまでとして…」
「今日は、まず食事をしながら、話していこうよ」
「ここの食事の支払いは、全部、Sが持つから」
食事をしながら、始まった会議。
僕は、あまり食べる気になれなかった…
Nさんが、話し始めた。
「会社の株主のWさんの意向があるので、お伝えしますね」
今日の本題は、この会社のことだ。
Nさん「この会社を残して、別会社を作ろうと思っている」
「この残った会社の箱を使うんだよ」
「株主のWさんも、それを望んでいる」
「ただ、今、この会社で、何の仕事をするのか?」
「これは、まだ決まっていない」
「それで、Kさん、Hさんに、このまましばらく役員のままでいてもら いたい。どうかな?」
「新しい会社では、たぶん、私が社長になるから」
「それまで、今のままで、会社を存続してもらいたい」
・この会社を使うことの了承。
・このままの状態をしばらく続けてもらうことの了承。
これが、株主Wさんの意向であり、今日の会議の本題だった。
僕は、あることを思い出していた。
以前、この話にも出てきた、若い女性弁護士にお願いして、会社を解体しようとしていた時のことだ。
以前、彼女はこう言っていた…
※以下がその時言っていた言葉
会社を解体することを とても嫌がっていたのは、このことがあったからだと思った。
僕個人としては、この組織に入っていること自体、気持ちが悪いので、すぐにでも抜け出したかった。
しかし、法律上、それはすぐには、叶わない事も以前、弁護士と話しをしていて、よくわかっていた。
僕「とりあえず、Hさんも今ここにいないので、これをHさんに伝えます」
「それで、また連絡します」
Nさん「Hさんによく言っておいてね。彼女は、手ごわいからね(笑)」
Oさん「私もその方が良いと思うな。せっかく会社があるんだからね」
Nさん「あと、ちょうど、S農研のO理事長にも来てもらったのは、農業関連
で仕事になりそうなことがあってね]
「時間が合ったから来てもらったんだよ」
Oさん「Nさん、私で出来ることがあれば、力になるよ」
もうすでに、ストーリーは出来上がっていた。
この日、指定された時間に、僕が来る前に、すでに会って会議をしていた。
すべて、手はずが整っていた。
そんな話し合いの隣で、S氏はバクバク食べている…
S氏 「なんか、どうも最近、お腹すいちゃって…」
「この前のことが、ずいぶん昔の事のように思えるんですよね…」
こう言っているS氏を見ながら、
僕は、思考が停止していた…
異常な空間だ
それぞれの思惑があり、それぞれ、その時、お互いにメリットがある話があれば、首を突っ込む。
それは、そこら辺にある、ごくごくあたり前のことかもしれない。
しかし、そこには、表の顔と裏の顔がある。
どんな裏の顔があるかわからない。
それらが、この場にいると、よくわかった。
お互いを利用すれば良いのだ。
僕が今まで、関わってきた事業の根幹には、そんな人たちの思惑が入り混じっていた。
この日それを知った。
つづく…