エレキギター始めてみたchp5「練習しない」
大きなケヤキの下のベンチに腰を降ろす。
仕事帰り、コンビニでカップ酒2本とおつまみを買い、公園で一服してから帰宅する。
仕事のある日はほとんど毎日。
悪い習慣が身に付いてしまった。
ひとり心休まるひとときなのだ。
隣のベンチで、スーツ姿の若者達が缶ビールを片手に談笑している。
真面目に勉強していたら大学に行けただろうか?いいとこに就職して、給料も今より貰えただろうか?
カップ酒を開ける。煙草に火を付け、大きく吸い込んだ。
音楽教室に通い始めた。
公園から帰宅してからも、冷蔵庫の缶ビールに手が伸びる。酔いに負けて、そのまま寝てしまう。
「俺は何をやってんだ・・・。」
いくら音楽教室に通っても、これじゃあいつまでたっても上達しない。
若者達の笑い声は鋭い矢となって、容赦なく私に突き刺さる。
自分はいつもこうだ。
意志が弱い。
何を始めても、続かない。
我慢強さがまるでない。
「もし本気で練習したら、どれくらい弾けるようになるだろうか?」
自分の能力はいったいどれ程のものなのだろうか?
酒も煙草もやめて、悪い習慣を断つ。
「今度こそ・・・。」
今まで何度口にしただろうか?
今の自分のままで上達する方法はないものか?
どうせ変わらないし、変えれない。
それなら、いっそのこと・・・
練習しない。
続けない。
目指さない。
軽い気持ちでやってみようか
2本目のカップ酒に手を伸ばす。
根本近くまで伸びていた煙草の灰が、
ズボンの上にぽとりと落ちた。