ウォーターダメージは心にもダメージを与える

普段あまり顧みない場所を久しぶりに覗くと、ゾッとすることが結構ある。永年探していた物が埃まみれで見つかったり、Gに代表される虫の死骸に遭遇したり。

見なければ良かった、できればそっとしておきたかった。せめて引っ越しまではと思っても、そうはいかないわけで、この日も仕舞われていた加湿器が動くか試運転させて欲しいという妻からの依頼で、その部屋を覗く。

すんなり加湿器は見つかったのだが、床を見ると濡れている。その周辺を見渡すと、床に置かれたダンボールが濡れて変色していて、思わず声が出る。「この水、どこから出てきたのだ?」と雨漏りや水漏れを疑うもその痕跡がない。

とりあえずそこに置かれた物を急いで退避させながら床をじっくり観察すると、水らしき物質がヌルヌルしていて余計気持ちが悪い。しかも軽く泡立っていて恐いのだが、荷物を運ぶ過程で、ほぼ空になった石けん液の大きなボトルが出てくる。

嫌な予感がしたので、ボトルの蓋を開け匂いを嗅ぎ、その記憶のまま床の液体の匂いも嗅ぐ。ああ、同じ匂いだ。しかもいい匂いなのが余計腹が立つ。どうやってこの液が漏れたのか正直よく分からない。倒れて緩んだ蓋から漏れたか、ボトルの不具合から漏れたか。

最悪だが原因がなんとなく分かったので、後は黙々と作業をする。荷物がはけた床を掃除し、石けん液に浸食されたダンボールから荷物を取り出し、一つ一つ拭いていく。これが水だったら、水を拭うなり乾かすなりすればいいが、石けん液となると非常に厄介で、そのまま乾かすわけにもいかないので、ぞうきんで念入りに拭っていく。もちろん濡れたダンボールは全て廃棄だ。

以前、野外フェスによく行っていたときに、アウトドア好きの友人が「アウトドアで一番心が折れるのは靴下がぐっしょり濡れたとき」と言っていたが、紙物が濡れる姿を見るのは、それが例えダンボールだとしても心が折れる

ウォーターダメージは心にもダメージを与えるのだ。これが大切な本だったら、レコードジャケットだったらいたたまれない。レコード屋で「ウォーターダメージ有」と書かれたレコードをたまに見かける。そのたびに「なんで濡れたんだろう?」と思うと同時に、元の持ち主の気分になって哀しい気持ちになるのである。 


 

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