ナイチンゲール『看護覚え書き』を聴く#097
フローレンス・ナイチンゲールが著した『看護覚え書き』のオーディオ・ブックを配信します。HNS(=防府看護専門学校)の学生・生徒だけなく、卒業生や看護師を志す、すべての人に向けた配信です。ご自由にお聴きください。
#097 :階上の人々
もう1点、現代の家は、ほとんど薄っぺらな作りになっているので、階段の上り下りや床を歩く足音が家中に響く。回数が多くなるほど、音も大きくなる。頭上に人がいると、病人がどれほど悩まされるかは計り知れない。
堅牢な作りの家では、幸いなことにほとんどの病院はそうだが、騒音も家の揺れも比較的少ない。しかし、安普請の家だと、病気によっては特有な過敏な人にとって、これは深刻な悩みの種である。
病室の上の部屋を空けておくことができない場合は、階段を上り下りすることで、疲労が増すとしても、このような患者を家の最上階に置いた方が良い。さもないとアヘンでも抑えられない位不安な状態になる。頭上の足音の一歩一歩が心臓にのしかかると患者が警報を出したらこれを無視してはいけない。
覚えておいてもらいたい事は、患者から見えないところから来るものとは、患者にとっては何かが突然降りかかるようなものだと言うことだ。特に神経が過敏な患者は、頭上に人がいる場合よりも、同室に人がいて、薄い仕切りで隔てられているだけの方が、明らかに被害が少ないと私は信じている。
このような患者のために、静寂を保つためにどんな犠牲でも払う価値がある。なぜならば、この人たちは、どんなに空気が良くても、介護が行き届いたものであっても、静かでなければ無意味だからである。
(2023年9月日8配信)
フローレス・ナイチンゲール(Florence Nightingale):1820年-1910年:近代医療統計学および看護統計学の始祖。近代看護教育の母。