ナイチンゲール『看護覚え書き』を聴く#031
フローレンス・ナイチンゲールが著した『看護覚え書き』のオーディオ・ブックを配信します。HNS(=防府看護専門学校)の学生・生徒だけなく、卒業生や看護師を志す、すべての人に向けた配信です。ご自由にお聴きください。
#031 :病室を下水道にしてはならない
この必要不可欠な蓋がついているからといって、室内便器を24時間に一回、すなわち、ベッドメイキングの時だけ空にするだけで、汚物を中につめたまま、患者の部屋に置いておくという、忌まわしい習慣をつけてはならない。
とてもよく気がつく看護師でも、この件に関しては落第する人がいる。また、ある患者は10日間ものあいだ、ひどい下痢に悩まされていたのに、その看護師は非常に優秀なのだが、その下痢のことを知らなかった。
こうした仕事は、私の仕事ではないと断る看護師がいたら、その人の天職は看護師ではないと言いたい。
私が見かけた外科の看護師長は、週休2~3ギニーを稼ぐ腕を持ちながら、跪(ひざまつ)いて、小屋の床を洗い流していた。そうしないと、患者を入れるには適さないと思ったからである。
私は決して看護師に床洗いしてほしいと言うのではない。私が言いたいのは、この人たちこそ、心に看護師としての使命を備えている、患者を優先させ、その次に自分の立場を考えると言うことだ。
便器の素材は、陶器や木製のものはよく見かける。旧式の室内便器の蓋こそ悪疫の温床となっている。
(2023年6月1日配信)
フローレス・ナイチンゲール(Florence Nightingale):1820年-1910年:近代医療統計学および看護統計学の始祖。近代看護教育の母。