映画『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』の魅力
女性の友情にフォーカスした、大胆で最高な映画をご紹介します。
あらすじ
ざっくりと説明しますと、ガリ勉主人公の二人が、遊んでばかりいると馬鹿にしていた同級生らが難関大学や大手の会社に就職したと知り、卒業前夜に遊んでいなかった分を取り戻しに行くストーリーです。
これらを主軸にしながら、自己肯定感の低さに対する考え方や、多様なジェンダーや人種問題、フェミニズムなどの要素が入ります。
ただ「イケてない女の子が大変身★」という映画違って、こうしたアメリカを中心とした社会の動きを取り入れているだけでなく、人間の多面性について、あくまでポップに触れた映画だからこその良さがあると感じました。
監督について
好きな映画を選ぶときに監督はあまり重視しない派である私ですが、この映画があまりにも良かったのでどんな人が作ったのかを調べました。
監督を務めたのはオリヴィア・ワイルドさん。
若手俳優からキャリアをスタートさせながらも、復興支援活動やフェミニストとしてジェンダーやフェミニズムに関わる活動をされているオリヴィア・ワイルドさんが映画を監督した初作品がこの『ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー』です。
彼女はYouTubeのインタビューでこの映画についてこう語ります。
女性の友情を描いた映画が見たかった。女性が男性を追いかけたり、外見を変えたりしない映画をね。本作は冴えない女の子がおしゃれをして、人気者になろうとする映画じゃない。これは友情の物語なの。
引用:https://youtu.be/QCEueJRDY5w
監督である彼女が大切にしているものが活き活きと映し出されたこの映画からは、従来の青春ストーリーをコメディ仕立てでぶち破るような、明るい気迫を感じます。
好きな男性を廻る女性の友情は描かれることの多かった男性中心の映画ではなく、女性の友情を描くというのは新しさを感じました。
私はまさにこんな映画を待っていました。
では次に、どんなところが良かったのかご紹介していきます。
見所①価値観が崩壊していくシーン
青春を犠牲に勉強だけを頑張り続けた主人公二人は、遊び呆けている同級生らを「未来では私が勝ち組みよ」と見下して過ごしていました。
それが、あることがきっかけで同級生の進路先が第一志望ではないにも関わらずハーバード大学やGoogleに就職だということを知って愕然とします。
同級生に「遊んでいたじゃない?!」と詰め寄る主人公に対して、「私は勉強もしながら、それ以外も頑張ったのよ」(正確なセリフ忘れました)みたいなことを言い放ちます。
信じて積み上げてきたものが崩れていくシーンでは、スローモーションの中で主人公の顔がアップのまま世界が変わっていくのを表現しています。迫真に迫る演技と描写であるこのシーンが凄く好きです。
描いていたビジョンが崩れ去り、視野が拡がる瞬間を映像にした素晴らしいシーンです。
見所②新しいシンデレラストーリー
パーティーに参加しようと奮闘するのですが、大体ありがちなのがシンデレラ形式。
イケていない主人公が変身して、周りをあっと驚かせるという描写。これもまた好きなのですがこの映画では先ほど触れた通り、主人公が冴えないまま青春を取り戻しにいきます。
もちろん主人公は冴えない自分に対して自覚しています。こんな自分だから人気者の彼を好きだと思うことすら駄目なことだと、自分自身の恋心を抑圧しています。
従来のシンデレラストーリーであれば、見た目を大変身させて彼を振り向かせるのでしょうが今回は違います。
「自分を卑下するな!あなたはもう完璧よ!その彼はあなたの(人生という)物語に出て来れただけでも幸せものよ!」みたいなことを言って喝を入れます。
このシーンはまさに時代の変化共に価値観の変化を大きく象徴したような、そんな自己肯定感を高めるメッセージを強く感じました。
アナと雪の女王『Let it go』や、ボディポジティブ発信していたアーティスト『LIZZO』などに続く、素敵なメッセージあるシーンです。
見所③芸術級!恋の描写が美しい
勉強ばかりしていた主人公二人は、自己肯定感を高めることで好きな人に近づきます。そして、恋をします。
そのときのシーンがとっても綺麗です。
主人公のうちの一人は好きな人に誘われて、意を決してプールに飛び込む訳ですが、まさに彼女は知らない世界に飛び込みます。
水中から見えるいろんなカップルの絡み合う足を見ながら、新たな世界を知っていく訳です。
ワクワクを表しながらも、神秘的で透明感溢れる描写です。
今までのポップさとは違い、プールのシーンはまるで別の映画のように繊細で透明感がある、アンニュイな映像とサウンドに変わります。
私は劇場でこのシーンを観たときに、自分の若かったころの恋愛を思い出しました。
つい悪い結末ばかりが印象に残り、辛かったとラベリングしていた恋愛にもこんな楽しさはあったな〜と鮮明に思い出させてくれました。
恋をし始めたときのあの独特な気持ちや、見える景色など、かげがえのないあの瞬間を切り取って凝縮した素敵なシーンです。
見所③人の多面性を描く
この映画で終始、描かれているのは人間の多面性について。
遊び呆けて馬鹿騒ぎしていた同級生が、実はかなり勉強していたように、みんなが認識しているものと違った一面が人にはあり、その色んな面を持っていいということを考えさせられるシーンがいくつも出てきます。
人間の恐ろしい面を描く映画は沢山ありますし、多くの人が仕事や私生活でそういった面を嫌ほど見ると思います。
だからこそ、人間の多面性を描くときにその中にあるポジティブなギャップを語る映画は珍しいな、と感じました。
この映画を通して、自分以外の他人がどんな事を考えているか分からないというのは、怖くもあり、面白いことでもあるのではないかと考えるきっかけになりました。
見所④選曲が好き
ラップやポップスなどアップテンポを始めとした様々な洋楽が映画を彩ります。
個人的に私が好きなLIZZOが流れた時は「この映画、間違いなく最高だ」と確信しました。
勉強一辺倒だった主人公二人ですがウジウジと悩むというよりはかなり大胆なタイプですので、LIZZOを含めてちょっと悪い感じの、イケてるような音楽のチョイスはかなり良いと思いました。
結論「最高だったからまた観たい!」
アメリカで起きているムーブメントを始め、国内外で様々な価値観が変わり始めています。
だからこそこの映画はそれらを再認識したり、知らない人はその世界を感じることが出来るものかもしれません。
主人公のように価値観が崩れて視野が拡がる瞬間や、不器用だけど真っ直ぐに人生を楽しむパワーを大切にしながら、今後も過ごしていきたいなと思いました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!