元充電中の勇者 岩宮樹己⑥
第十章 ゼロ高生
3ヶ月間かけて巡った地球一周の船旅を終え、4月から晴れてゼロ高生となった。残り2年で3年分の単位を取る必要があるため、「今はレポートレポートの毎日です。毎日大変ですよ〜。でも、コロナでアルバイトが休みになったりで、今は家で大好きなお寿司を握って食べてリフレッシュしてます」
お母さんも「月に何回もお寿司が出るから最高よ。今日も私誕生日だから、握ってくれる予定なんだけどね〜まだ起きてこないみたい笑」
夕方まで寝れるのは夜遅くまでレポートに取り組んでいる証だと思う。レポートに取り組みながら気付いたら寝ていたという感じだろうか。誕生日というとても大切な日に取材を受けてくれたお母さん。取材スタートと同時に画面に映ったお母さんは泣いていた。僕も泣きそうだった。この取材はある種劇薬にもなりうる。僕の責任は重い。でも伝えずにはいられなかった。こんなにも素敵な親子が何故苦しむ必要があったのか。少しでも癒やせたら。そんな思いだった。この前あんなにも凛々しい姿で充電期間を話してくれた樹己君だったが、まだまだ僕の知らないことがある。この2人の間には苦しみや辛さが想像できないぐらいずっとあったんだなと。それを感じたとき何とも言えない感情が芽生えた。最近読んださとうみつろうさんの本。不幸以外から幸せが生まれたことはない。幸せを望んだとき、幸せを感じるために不幸が必要になる。この世は相対性になっているからだ。たくさんの苦しみや辛さを感じてきた人はそれだけ幸せや楽しさを感じることができる。ブランコのように高い位置まで行ったら反対の高い位置にも行けるからだ。
「自分の中で大きく変わったことはやりたいことがあれば朝早くても起きられるということですね!これに気付けたことは財産です。今は勉強も自分の行きたい大学ややりたい起業に繋がっていると感じれているので苦痛ではないですね」
ゼロ高にはサポーター制度というものがあるそうで、樹己君のサポーターがたまたま自宅からほど近いところに住んでいた。実際に会ったりコミュニケーションも取っているとのこと。そのことで助けられている部分も多いようだ。日本文化に興味を持ったこととやったことのないことに挑戦することが好きだということが分かったので、ゼロ高に入ってから水墨画を始めたようだ。お母さんに作品を見せてもらったが、味のある素敵な作品を描いていた。今後が楽しみだ。
最後に
充電中を経験したことは今後必ず市場価値(レア)となる。AI時代が到来する中で社会は大きな変化が起こっている。そこにうまく対応できていない教育システムに違和感を感じ、「NO」を言えたまさに勇者たち。
自分のやりたいことを追及し、それに向かって全力で進める子。
僕は充電を経験した子はその権利を有すると感じている。
それぞれの役割が違うだけでそこには優劣もない。
みんなちがってみんないいんだ。
集団が苦手と見るか1人が得意と見るか。見方が変われば人生も変わる。
たくさんの気付きをくれた樹己君とお母さんに感謝です。本当にありがとうございました。