流しの国語辞典「犬」編
耳を立てた犬の象形からできた漢字。
「寝ぬ(イヌ)」や「家で寝る」の「いぬる」
すぐに立ち去ることから「往ぬ」
「唸る」の古語「イナル」の「イナ」からなど
様々ある。
神社にいる犬といえば狛犬。
神社に奉納、設置された空想上の守護獣像のこと
で、向かって右側が口を開いた角なしの「阿像」
で獅子、左側が口を閉じた角ありの「吽像」で
狛犬。
阿吽の形になっているのは日本特有の形式で、
中国では両方とも口を開いているものも多く、
必ずしも「阿吽」にはなっていない。
現在ではこの左右別の形状という形式を残した
もののほうが少なく、形としては阿吽共に獅子に
近いものが多い。
スフィンクスは狛犬の遠い祖先といわれ、
国王が強大な力を得るために、地上最強の動物
獅子の力を王に宿らせることは古くから存在し、
玉座(王の椅子)の肘掛けに獅子頭を刻んだり
するようになった。
中国人は、龍や麒麟など、様々な霊獣を生み出す
のが得意で、獅子にも羽をつけたり角を生やすこ
とで空想上の生き物に変質させた。
「唐獅子」と呼ばれる派手な獅子像も中国独自の
もの。
日本の狛犬は、天皇の玉座を守る守護獣像として
誕生し、「神殿狛犬」あるいは「陣内狛犬」と
呼ぶ。
「左近の桜 右近の橘」のように、左右非対称を
好む日本文化特有の気風が関係したとされ、
獅子を左右に置くのではなく、片方には別のもの
を配すという日本人の美的感覚の賜物ではないか。
今では獅子・獅子という構図の「狛犬」が主流
で、狩野派の絵師も獅子を屏風絵の題材として
好んだことが江戸時代以降の狛犬が獅子に似てき
たことに関連すると考えられる。
この獅子が中国から伝わったときに方言によって
「シーサー」と呼ばれたのが沖縄。
同じ起源のものだとは面白い。
石垣島のある八重山地方では「シーシー」とも
呼ばれる。
宮獅子、村落獅子、家獅子の3タイプがある。
獅子だったものがいつの間にか身近な犬に変わっ
ていたのも面白い。