元充電中の勇者 岩宮樹己君⑤
第八章 ピースボートとゼロ高等学院との出合い
気になって樹己君が覗くとそれは「ピースボート」のパンフレットだった。
その中に行きたいと思っていた「イースター島のモアイ像」と「リオデジャネイロのコルコバードのキリスト像」の写真が載っていて、両方に行けると知って一気に期待が膨らんだ。すぐに説明会に申し込み、12月からのクルーズに参加することを決めた。
「3か月間船での生活になって帰ってきたら3月になってるから、先に次に行く高校を決めておこうね」とお母さんから提案があり、通信制高校について調べるようになった。
ネットで検索したりしている中で心惹かれたのがホリエモンのゼロ高等学院だった。
説明会に参加すると「0期生」の先輩たちが楽しそうに説明する姿が印象的で樹己君も「まだやりたいことがはっきりと決まっては無かったけど、ここでなら自分の好きなことを好きなだけやれそう」と感じ、入学を決めた。
第九章 世界一周の船旅へ
12月から世界一周の船旅へ出発した。
知った顔がいない、話せる人が居ない。極度のホームシックにかかり、一日目はお風呂でバレないようにシャワーを浴びながら一人で泣き続けたという樹己君。復活は早く、次の日には
「とにかく暇そうな人を見つけたら自分から話かけていました」
その中で日本一周を中断して乗り込んだ20代後半の男性と出会う。
三線を弾けるということで意気投合。練習を何度も重ね、船上フェスという音楽祭で共演。「海の声」をコラボで乗船者たちに披露した。そのとき、観客からの声援や拍手に「めちゃくちゃ自信をもらいました」
三線のルーツはインドのシタールという楽器。三線が東北地方に伝わり三味線へと変遷していく。インドで三味線と出合い、船上で三線に出合う素敵なご縁を樹己君は持ったことになる。
その後、1,000人規模の人が参加する船上運動会の司会に立候補。
「どうせなら目立つことがやりたいと思ったので」
無事大役を果たし、「更に自分に自信が付きました」
乗船して一番の収穫は
「乗船者さんの人生の苦労話や成功話をたくさん聞けたことですかね。
それを聞いている中で今、自分が悩んでいることがめっちゃちっぽけに感じたんですよね。」
その話を聞いてお母さんは
「私の思っていたことが起こってたんだな~嬉しいな~」と喜んでいた。
大失敗はタヒチで起こった。iPhoneの水没。端末は手元に救出できたが、イースター島やリオデジャネイロを含めて撮り貯めていた5,000枚以上の写真データが吹っ飛んだ。悲しみに暮れ、泣き続ける日々。バーカウンターでは見かねた外国人のクルーがジュースをおごってくれた。
「大丈夫、大丈夫ってずっと隣で声を掛け続けてくれた乗船者さんの言葉に救われました。しかも、それを聞きつけたみんながiPhoneが復活したら一緒に写っているデータを送ったるから心配すんなって言ってくれて。持つべきは仲間ですね!」
「ここから帰港までの3週間を思いっきり楽しんだろってiPhone水没のおかげで思えたんですよね」
具体的には睡眠時間を大幅に削り、とにかく暇そうな人が居たら手当たり次第声を掛けた。船内で働くクルーにもどんどん話し掛けたようだ。その当時の話をする樹己君の笑顔がその日一番眩しかったことを覚えている。
下船してからも乗船者たちとは交流が続いているようで、一生の仲間としてこれからも絆を深めていくんだろうなと思う。
⑥へ続く