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元充電中の勇者 岩宮樹己君④

第七章 通信制高校 2度目の充電
お母さんが何気なくリビングで見ていたという通信制高校のパンフレット。
「私、女優だからねっ」と笑いながら話すお母さん。
その中でインドで通っていた日本人学校の雰囲気に似ていたという理由で惹かれた高校が1つあった。トライ式高等学院だった。
「本人は大学受験の夢をまだ捨てていなかったから大学受験に強いところということも後押ししたと思う」とお母さん。
そこが彼のストッパーとして働いたのだろう。
「卒業式にも参加する」と樹己君はお母さんに言ったよう。
お母さんは「何で?どんな顔で行けばいいの?」と不安だったようであるが、
体育館であった式自体には参加せず、各教室へと戻ったところから参加。
卒業の思いを話す番が回ってきてもインドの思い出をたっぷり交えながら笑いもきちんと取る息子の姿を見て
「さすがうちの息子!って誇らしかったわ」
とお母さん。
晴れて通信制の高校に通うことになった樹己君。
しかし、通学時の満員電車に苦戦した。長時間座れないし、つり革を持って立ち続けると立ちくらみが襲ってきた。そのストレスに耐えられなくなり、2度目の充電中へ。家庭教師として先生が自宅へ来てくれるシステムがあったのでそれに申し込んだが、先生とのウマが合わず、早々に続かなくなった。
一度、先生が来ているのに樹己君の姿が無かった日があったようだ。
何度か同じようなことがあったことでお母さんは察知して帰りを待っていた。
帰ってきた息子に
「いい運動になったんじゃない?とだけ言ってお咎めは無しよ」
どこまでもたくましい母である。
「ただ、このままだと先生にもご迷惑がかかるからやるかやらないかだけはきちんと決めようと話して家庭教師は止めることにしたの」
高1の10月頃、またリビングで母は何かのパンフレットを読んでいた。

⑤へ続く

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