見出し画像

Vol.31「街角の石には地球の歴史の記録が刻まれている」街角地質学者西本昌司さんのワークショップレポート

暦の上では立春をすぎましたが、全国で厳しい寒さが続いた2月上旬。キヅキランドでは、街角地質学者で愛知大学教授の西本昌司さんをキヅキセンパイに迎えて、オンラインワークショップを開催しました。
今回のワークショップは、ずばり“石”が主役。街中の石材をみんなで観察して、さまざまなキヅキを見つけます。子どもたちの着眼点や発想は、街中の石を観察する大ベテランである西本さんを驚かせ、そして子どもたちもいろいろな発見を楽しみました!

西本昌司さんのインタビューはこちら

まず、みんなで観察したのは、ある街角の風景。「私はこんな場所に行ったら、一日中楽しめちゃう」と西本さん。西本さんが見ているのは一体何か……ということは置いておいて、みんなは、「工事中」「写真を撮っている人がいる」「(看板に書いてある)〇〇銀行」など、それぞれの自由なキヅキを発信して、ウォーミングアップしました。

同じ石でも、見る人によって違った模様が見えてくる!

次に、同じ動画を「街は何でできているか」という視点で観察することに。「強化ガラス」「コンクリート」「金属かな?」「車道はアスファルトで歩道は石」「鉄筋」「石でできているビルが多い」など、みんなのキヅキで街を構成する材料が次々に明らかになりました。

ほしすたーさん「強化ガラス」

「みんなのキヅキはいろいろありましたが、私はやっぱりこういうところに行くと、石材を見ちゃう。デパートやビルにはいろんな石が使われていて、ぶらぶら歩いていても見るところだらけで、全然飽きないんですよ」(西本さん)
「こうやってみると、街中石だらけですね。それが分かってくると、見える風景も変わってきそうです」(本田さん)

そこで、今度は街の建物の石材部分を集めた動画を見てみました。あんな模様も、こんな模様も、みんな石。「どんな模様がある?」「何に見える?」と、動画を通じて石の壁や柱を観察してみました。
「いや〜、いいですねえ! かっこいい!」と動画を見ながら、西本さんもわくわく……。

はやとさん「くもみたい」
れいなさん「海の波みたい!」

「いろいろな見え方があっていいですねえ!」(西本さん)
「どれも言われてみればなるほど! そう見えます」(本田さん)
「人によってね、同じものを見てるのに見えるものが違うんですよ。それが面白い」(西本さん)
「よく見ると、タイルみたいに四角い石が貼ってありますね」(本田さん)
「そうなんです。これらは、石を薄くスライスして壁や柱に貼っているんです。その貼り方によって、模様の出方が変わってくる。自然が作った石の模様を、人間がうまいこと利用して壁に大きな模様を描いているわけです」(西本さん)

あんずさん「ちょうちょみたい」
はなさん「手」

「これは! アジの開きならぬ『石の開き』ですね」(西本さん)
「なるほど! 石を切って開いて貼ったらこういう模様が出るわけですね」(本田さん)
「そうそう。私も街でこういう石の開きを見ると、テンションが上がってしまいます」(西本さん)
「そもそも、石の模様というのは何なんですか?」(本田さん)
多くの場合、異物が模様となっているんです。石ができる時に違うものが混ざってそのまま固まってしまうとか、固まった後にぱきっと割れてしまって、その隙間に違うものが入り込んだりして模様になる。さっきの『雲みたい』『波みたい』というキヅキのあった白い筋は、割れた後に違う性質のものが流れ込んで固まったもの。この『ちょうちょ』や『手』に見えた部分は化石ですね」(西本さん)

西本さんのお話を聞きながら観察していると、次第に「きれいな模様の壁」「面白い模様の壁」という視点から、「じゃあ、この濃い茶色の部分はなんだろう?」「これは化石?」と石の模様そのものが気になり始めました。

「そう、そうやって観察をして気がつき、これはなんだろう? と思うことが、研究の始まりなんです」(西本さん)

石の模様から読み解く、地球の歩みやそこにいた生き物の生き様

街の風景から、壁の模様、そして石の模様へとワークショップが進むにつれ、子どもたちの観察の目が研ぎ澄まされてきました。そこで、次の動画はもっと石材に近づいて、石の中に閉じ込められたものを観察します。すっかり目が慣れたみんなは、どんどん見つけます。

こーすけさん「あんもないと? なに?」

「アンモナイト! 正解です。渦巻きでお馴染みですね。でももう一つの“うにょうにょ”したものはなんでしょうねえ」
西本さんにはわかっているようです。一方、本田さんが笑いながら「見てください、これはすごい!」と取り上げたのはこちら。

fishmanさん「イタリア」

「石の中にイタリアが!」(本田さん)「確かに! ブーツの形」(西本さん)
これをきっかけに、「東京都」「四国」など、石の中の模様を地図に見立てたキヅキが続々と発表されました。
「これらの地図模様も、異物なんですよね」(本田さん)
「そうなんです。これらもさっきの“うにょうにょ”も、ある化石です」(西本さん)
化石といえば、先程のアンモナイトのように生きていた時の形がそのままに残っているように思いがちですが、そうとも限らないのだそう。
「これは、海綿という生き物の破片です。海綿というのは英語ではsponge(スポンジ)と言います。台所やお風呂で使っているスポンジみたいに柔らかい、とても原始的な生き物なんです。石の中あちこちにあるのは、柔らかいから千切れてしまって、散らばったものなんでしょう」(西本さん)

まきさん「かい」

「よく気がつきました! そう、これは巻貝です。巻貝を縦に切った断面が石材の表面に見えているわけです」(西本さん)
石材として切り出す時に、埋まっている化石が横に切られるか、縦に切られるか、あるいは端っこなのか真ん中なのか、それはわからないですもんね。たまたまこれは縦に切られてこういう模様が表面に現れたわけですね」(本田さん)

アンパンマン160才さん「ダンクルオスザウルス*の歯」 (*正しくはダンクルオステウスだと思われます)

「いいですね〜! ギザギザの部分に着目したわけですね。でも、残念ながらこれは歯ではないんです。これも貝です。これは二枚貝。一番膨らんだ真ん中のあたりを縦に切った感じですね」(西本さん)
「あ、なるほど、上の凹んだ部分がちょうつがいの部分で、この貝は閉じているということですね!」(本田さん)
「そうなんです。二枚貝は死ぬと開くのですが、この貝は生き埋めになってしまったということが考えられます」(西本さん)
「石からそこまで読み取れるんですね。いわば、石はそこに生きていた生き物の生き様を記録しているということになりますね」(本田さん)
「まさに。先程の石の模様は、いわば地球の傷跡です。人間が怪我をした時にかさぶたができて傷が治るのと一緒で、何かが起きて割れてそこにかさぶたができたのが模様なわけです。だから模様から地球に何が起きたかがわかる。そして化石からは、石ができた時に地球上でどんな生き物が生きていたかがわかる。地球の歴史が記録されているのが、石なんです」(西本さん)

そんなふうに石の模様にあるたくさんの意味、そして石のなりたちに思いを馳せれば、冒頭に西本さんがおっしゃっていたように、たくさんの石材を使った建築が並ぶ街をぶらぶら散歩するということは、興味深くて見どころたくさん。一日中観察しても飽きないはずです。
今回のワークショップで街の石の見方を体得した参加者のみなさんにも、きっとこれからは街の風景が違って見えるはずです。

最後に、こちらの模様、何に見えますか?

ぱおさん「あくび」

たしかに、大きく開けた口みたいな楕円形があって、そこの上には半開き目があるようにも見えますが……。
「あ、くろしばこたさん正解! みなさんわかりましたか?」(西本さん)

くろしばこたさん「カニ?」

身の回りにこんなに面白いものがあるなんて、本当に「!」や「?」、そして発見の連続のワークショップでした。この「石を見る目」を持ち帰っていただいて、日常でもぜひいろんな石材を観察していろんなキヅキを見つけてほしいなと思います。
興味深いワークショップを、西本さん、本田さんありがとうございました! 参加してくれたみなさんも、どうもありがとうございました! またキヅキランドワークショップでお会いしましょう!
イベントやワークショップの情報は、キヅキランドに住民登録すると届きます。ぜひ登録してください!

当日のワークショップの様子はこちら!


いいなと思ったら応援しよう!