カバの話 やさしい日本語ver.
夜おそくに竹田(たけだ)くんが家に来ました
手のひらをすりむいて 泥だらけでした
「カバくんと相撲(すもう)をとってきた」と竹田くんは言いました
「サバンナにいるようなカバくん?」
「そう そのカバくん」
動物園はもうすぐ閉まる時間で人は少ししかいませんでした
さくをこえて 竹田くんはカバくんの家に乗りこみました
目のまえに立ってみて
「カバくんのことを何も知らなかったなあ」と竹田くんは気づきました
大きさは3.5メートル 重さは2トン
信じられないほどの大きさでした
毎日50キロの草や木を食べて
一時間あたり40キロの速さで走ります
カバくんは「何をしに来たんだい?」とでも言うように
竹田くんを見ました
竹田くんはすぐにカバくんの頭に飛びつきました
少しでも立ち止まっていると
そのまま動けなくなると思ったからです
竹田くんはカバくんの首にうでを回しました
かまれても ふまれても おしまいです
頭につかまっていればかみつかれることはありません
竹田くんの体の下でカバくんは大きく口を開けました
体をゆすって 頭を左と右にふりました
つかまりながら「これは相撲なのかなあ」と竹田くんは思いました
カバくんの前足は足です 手ではありません
だから ひざを着かせるか ひっくり返さないと勝てません
カバくんの首はやわらかくて しっとりぬれていました
うなり声を立てて カバくんが頭を左にふりました
竹田くんの体がカバくんからはなれました
宙にまったとき 竹田くんには
小さな白いヘビさんがにゅるにゅる空にのぼっていくのが見えました
「何年もウナギを食べていないなあ」と竹田くんは思いました
カバくんはおしりを向けて水たまりの方へ歩いて行ったということです
おしまい