恐竜の小話

1 日記
メキシコ滞在 四日目
夜、外へ食事に出ようとすると、宿屋の親爺に止められる。
「今夜は月が明るくて、恐竜がたくさん出るから外出してはいけない」という。
「第一、恐竜になる人が多いから、こんな夜はほとんどの店が閉まっている」とのことだった。
 
2 京本竜造さんの話
W県H町、京本竜造さんによると、ほんの四五十年前までH町の周辺には恐竜が生息していたという。
恐竜は人間の子どもぐらいの大きさで、人を襲うことも、畑を荒らすこともないので、とりたてて駆除されることもなかった。
子どもらはしばしば、遊びで恐竜を捕まえに山に入った。
もっとも本当に捕まえられる恐竜は村中でも年に二匹か三匹だけだったらしい。
いざ恐竜を目の前にするとほとんどの子どもは怖気づいて、握っている網を振れずに立ちつくしてしまうのだという。
H町がまだH村と呼ばれていた頃の話である。
 
3 間違われた恐竜
タツ子、それゴジラやない、ティラノサウルスや。
 
4 アウグスト・モンテロッソ
地上でもっとも短い小説には恐竜が登場する。
グアテマラの作家、アウグスト・モンテロッソによって書かれた世界一短い小説は次のように始まって終わる。
「彼が目を覚ましたとき、恐竜はまだあそこにいた」
 
5 第四の恐竜時代
恐竜は六六〇〇万年前に絶滅したと言われるが、一説には爬虫類や鳥類に紛れて生き延びた種がわずかに存在するという。ここ一万年前から現代にかけて、恐竜は徐々に個体の数を増やしており、人と同じぐらいの背丈の恐竜の目撃情報は世界各地に寄せられている。
他の哺乳動物に覇権を奪われた恐竜時代。三畳紀、ジュラ紀、白亜紀に続く、新生代の恐竜時代は、スラム紀、と呼ばれる。

いいなと思ったら応援しよう!